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ルーカス・ゲニューシャス

 昨年、オンライン・インタビューしたロシアのピアニスト、ルーカス・ゲニューシャス。
 4月18日(金)には、浜離宮朝日ホールでピアノ・リサイタルを開く。
 今回のプログラムの聴きどころは、ラフマニノフのピアノ・ソナタ第1番のオリジナル版の演奏。これまでは改訂版の演奏が行われていたが、ゲニューシャスはロシア国立音楽博物館でオリジナル版の楽譜と出会い、そのすばらしさに感銘を受けたという。
 改訂版では第1楽章と第3楽章に大きく手が入れられており、かなり短くなっているが、オリジナル版は45分の長さがあるという。
 ゲニューシャスはその版をもとに、ラフマニノフのルツェルンの別荘で、作曲家が使用していたという1933年製スタインウェイを用いて録音を行っている。
 今回は、その演奏が日本初演という形で披露される。
 前半は、シューベルトの即興曲集が演奏される予定。インタビューでは、シューベルトとラフマニノフの共通項に関しても熱く語っていた。
 朝日ホールは響きがとてもいいホールである。久しぶりにゲニューシャスの鍛え抜かれたピアニズムを聴くことができる。とても楽しみである。
posted by 伊熊よし子 at 20:13 | 情報・特急便

名倉誠人


 2024年10月28日に東京文化会館小ホールで開催された「名倉誠人60マリンバ・リサイタルV Aspirations:夢を追い続ける者」に関しては、コンサートレポートを綴ったが、5月25日(日)14時から神戸市立灘区民ホールにおいて「名倉誠人60第四回演奏会 Succession:次世代のマリンバ奏者と共に」と題したコンサートが開かれることになった。
 当日は作曲家・荻久保和明氏を交えて開演前にトークが行われる。
 プログラムは、東京公演でも取り上げられたベンジャミンC.S.ボイル、デイヴィッド・コンティにJ.S.バッハ、ドビュッシーが加わり、荻久保和明の「コラールとトッカータ」(世界初演)が披露される。
 名倉誠人のマリンバは、何度も書いているが、オーケストラのような多種多様な響きと、自然体でヒューマンな音楽性が特徴。聴き込むほどに心が解放され、癒され、いつも楽器の魅力に新たな発見を抱く。
 今回の神戸公演は、還暦記念のコンサートシリーズの最終回。名倉誠人と次世代を担う若きマリンバ奏者が共演し、新たな地平を拓き、未来への夢を音で奏でる。
 名倉誠人は委嘱作品に力を入れ、常に世界初演や日本初演の作品を発信し続けている。神戸でも、また新たな作品が世に送り出される。
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posted by 伊熊よし子 at 21:13 | 親しき友との語らい

キリル・ゲルシュタイン

 昨夜は、「東京・春・音楽祭」のキリル・ゲルシュタインのリサイタルを聴きに東京文化会館小ホールに出かけた。
 ゲルシュタインは4月5日の室内楽にも出演予定である。
 今回のゲルシュタインに関しては、音楽祭の公式プログラムに原稿を寄せた。それゆえ、リサイタルをとても楽しみにしていた。
 プログラムはシューマンの「花の曲」で開幕。ゲルシュタインの得意とするアデスやクルターク、コダーイとともにシューマンの「謝肉祭」、チャイコフスキーの「くるみ割り人形」より「花のワルツ」、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」という舞曲の要素がふんだんに取り入れられた作品が並ぶ。
 実は、オープニングのシューマン「花の曲」は、私が音大の卒演で選曲したもの。これはあまりナマで演奏される機会に恵まれない作品ゆえ、今回は何十年も前の記憶が蘇り、とてもなつかしく感慨深かった。
 ゲルシュタインのピアノは、真のピアノ好きに愛されるもの。テンポ、リズム、フレージング、ハーモニー、打鍵の深さ、ペダリングなど、すべてにおいて鍛え抜かれた美質を発揮するものの、けっして堅苦しくなく、ジャズを得意とする彼らしい即興性と躍動感と創意工夫に富んでいる。
 アンコールがこれまた絶品。ラフマニノフの「幻想的小曲集」より「メロディ」と、ショパンの「ワルツ第5番」が演奏されたが、とりわけショパンのワルツのすばらしさが胸に突き刺さってきた。
 こんなワルツはこれまで聴いたことがない。ゲルシュタインがショパンを弾くと、こんなにも上質で格調高く、精神性に満ちたワルツになるのかと、作品の新たな面を発見する思いに駆られた。
 ホールを出ると雨は止んでいたものの、ものすごく寒かったが、心のなかは充足感に満たされて温かかった。

posted by 伊熊よし子 at 15:02 | マイ・フェイバリット・ピアニスト
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