2024年12月04日
アレクサンドル・カントロフ
昨年のリサイタルでも大きな感銘を受け、ブログにも綴ったアレクサンドル・カントロフ。
11月30日には、ついにサントリーホールに登場した。
プログラムは得意とするブラームスで幕開け。「ラプソディ ロ短調 作品79-1」で、作曲家に対する敬愛の念と作品に寄せる熱き想いを存分に披露。しかも細部まで神経の張り巡らされた繊細さを併せ持ち、この時点ですでに巨匠的な演奏だ。
次いでリストの「超絶技巧練習曲」より「雪あらし」、「巡礼の年第1年スイス」から「オーベルマンの谷」と続け、超絶技巧をごく自然に、絵画や詩や風景を描き出すように視覚的なピアニズムを披露した。
前半の最後はバルトークの「ラプソディ 作品1」。これが実に内容の濃い、存在感を放つ演奏で、バルトークのヴィルトゥオーゾ、ハンガリーの舞曲の要素、循環形式などを見事に表現。まさにため息が出るほどの完成度の高さだった。
後半は、ラフマニノフのピアノ・ソナタ第1番からスタート。長大なソナタで、ゲーテの「ファウスト」に触発されて書いたという3つの楽章を、カントロフは戯曲を編み出すようにさまざまな表現を変容させて弾き進めていく。
最後はJ.S.バッハ/ブラームス編の「シャコンヌ」。左手のために編曲された作品だが、カントロフの腕にかかると、あたかも両手で演奏されるような壮大さと深遠さと劇的表現が生まれ、そのテクニックに驚愕する思いだった。
この日の演奏は、ひとことでいうなら、「カントロフの衝撃」。サントリーホールを埋め尽くした聴衆は、スタンディングオベーションで彼の演奏を称えた。
この公演評は「モーストリー・クラシックに書く予定である。
posted by 伊熊よし子 at 22:13
| マイ・フェイバリット・ピアニスト