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アレクサンドル・カントロフ

 昨年のリサイタルでも大きな感銘を受け、ブログにも綴ったアレクサンドル・カントロフ。
 11月30日には、ついにサントリーホールに登場した。
 プログラムは得意とするブラームスで幕開け。「ラプソディ ロ短調 作品79-1」で、作曲家に対する敬愛の念と作品に寄せる熱き想いを存分に披露。しかも細部まで神経の張り巡らされた繊細さを併せ持ち、この時点ですでに巨匠的な演奏だ。
 次いでリストの「超絶技巧練習曲」より「雪あらし」、「巡礼の年第1年スイス」から「オーベルマンの谷」と続け、超絶技巧をごく自然に、絵画や詩や風景を描き出すように視覚的なピアニズムを披露した。 
 前半の最後はバルトークの「ラプソディ 作品1」。これが実に内容の濃い、存在感を放つ演奏で、バルトークのヴィルトゥオーゾ、ハンガリーの舞曲の要素、循環形式などを見事に表現。まさにため息が出るほどの完成度の高さだった。
 後半は、ラフマニノフのピアノ・ソナタ第1番からスタート。長大なソナタで、ゲーテの「ファウスト」に触発されて書いたという3つの楽章を、カントロフは戯曲を編み出すようにさまざまな表現を変容させて弾き進めていく。
 最後はJ.S.バッハ/ブラームス編の「シャコンヌ」。左手のために編曲された作品だが、カントロフの腕にかかると、あたかも両手で演奏されるような壮大さと深遠さと劇的表現が生まれ、そのテクニックに驚愕する思いだった。
 この日の演奏は、ひとことでいうなら、「カントロフの衝撃」。サントリーホールを埋め尽くした聴衆は、スタンディングオベーションで彼の演奏を称えた。
 この公演評は「モーストリー・クラシックに書く予定である。

posted by 伊熊よし子 at 22:13 | マイ・フェイバリット・ピアニスト

桑原志織

 次号の「音楽の友」の「マリアージュなこの1本」のゲストは、ピアニストの桑原志織である。
 彼女に関してはインタビュー記事やリサイタルのことなどを何度か紹介してきたが、実は私と同じ西荻窪在住である。
 その彼女が選んだお店は、荻窪にあるDa Okapito(ピッツェリア、トラットリア、ダ オカピート)。オーナーシェフの岡田智至さんは2019年ナポリピッツァ世界選手権世界大会スタジョーネ部門3位という実力派である。
 今回はピッツァや前菜などと貴重なイタリアワインを用意していただき、インタビューも話が弾んだ。
「いまはもっと勉強したいと思っている時期で、12月からコモ湖のアカデミーに行くことになっています」
 こう語る桑原志織は、以前はベルリンやフィレンツェなどで研鑽を積み、さらなる勉学慎に燃えている。
 前向きな人との話は、非常に楽しく有意義で、こちらも活力をもらえる感じがする。
 記事では、その思いを伝えたいと思う。
 今日の写真は、オーナーシェフの岡田智至さんとの1枚。シェフのバックにあるのはイタリアから空輸で運んできたというピッツァ窯。

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 そしてもう1枚の写真は、大会で受賞したときにもらったという3キロほどもあるトマトソース。なんでも、トロフィーがわりといってもらったそうだが、もちろんトロフィーは別にある。これはよく見ると、瓶のラヴェルの下に岡田さんの名前が刻印されている。シェフは「もったいないので、トマトソースは使っていません。もう古くなってしまいました(笑)」といっていた。
 トマトソース使って、自分のソースを代わりに入れておけばいいのに、と思うのは私だけだろうか…。

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posted by 伊熊よし子 at 22:23 | 美味なるダイアリー

音楽プロデューサー協会

 今日は、14時から東京文化会館の会議室で行われた「音楽プロデューサー協会」の例会にゲストスピーカーとして招かれ、クラシック界の現状や仕事上の懸案事項、国際コンクールやコンサートに関して、インタビューをする上での自分自身の対応、今後の仕事の方向性などについて講義を行った。
 参加者は会員15名ほど。途中から質疑応答のような形を取り、現在のクラシック界を取り巻く環境やさまざまな事柄についてみんなが意見を出し合い、結局2時間半にわたる長い時間を共有することになった。
 しかし、かなり先輩の方から、私の仕事に対する姿勢にきびしい意見も出され、ひたすら拝聴する形となった。
 以前から知っている人も何人かいて、こちらは久しぶりに会った歓びを分かち合ったり、「また会いたい」「今度、ゆっくり話をしようね」といわれたり、うれしい再会となった。
 こういう講義はぶっつけ本番ゆえ、どういう反応が戻ってくるのか予測がつかなかったが、大先輩たちからは非常にシビアな意見が出され、クラシック界の現状のきびしさを思い知らされた。
 やはり2時間半以上いろんな意見を聞いていると、クラシック界の今後は本当にきびしいものがあると痛感。いまや活字文化は低迷し、雑誌も新聞も読む人が少なく、みんなネットで記事を読み、音楽を聴き、それで済まされてしまう。
 いったい今後の音楽界はどうなるのだろうか。さまざまなことを考えさせられた日となった。
posted by 伊熊よし子 at 22:34 | 日々つづれ織り
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