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キリル・ゲルシュタイン

 昨夜は、「東京・春・音楽祭」のキリル・ゲルシュタインのリサイタルを聴きに東京文化会館小ホールに出かけた。
 ゲルシュタインは4月5日の室内楽にも出演予定である。
 今回のゲルシュタインに関しては、音楽祭の公式プログラムに原稿を寄せた。それゆえ、リサイタルをとても楽しみにしていた。
 プログラムはシューマンの「花の曲」で開幕。ゲルシュタインの得意とするアデスやクルターク、コダーイとともにシューマンの「謝肉祭」、チャイコフスキーの「くるみ割り人形」より「花のワルツ」、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」という舞曲の要素がふんだんに取り入れられた作品が並ぶ。
 実は、オープニングのシューマン「花の曲」は、私が音大の卒演で選曲したもの。これはあまりナマで演奏される機会に恵まれない作品ゆえ、今回は何十年も前の記憶が蘇り、とてもなつかしく感慨深かった。
 ゲルシュタインのピアノは、真のピアノ好きに愛されるもの。テンポ、リズム、フレージング、ハーモニー、打鍵の深さ、ペダリングなど、すべてにおいて鍛え抜かれた美質を発揮するものの、けっして堅苦しくなく、ジャズを得意とする彼らしい即興性と躍動感と創意工夫に富んでいる。
 アンコールがこれまた絶品。ラフマニノフの「幻想的小曲集」より「メロディ」と、ショパンの「ワルツ第5番」が演奏されたが、とりわけショパンのワルツのすばらしさが胸に突き刺さってきた。
 こんなワルツはこれまで聴いたことがない。ゲルシュタインがショパンを弾くと、こんなにも上質で格調高く、精神性に満ちたワルツになるのかと、作品の新たな面を発見する思いに駆られた。
 ホールを出ると雨は止んでいたものの、ものすごく寒かったが、心のなかは充足感に満たされて温かかった。

posted by 伊熊よし子 at 15:02 | マイ・フェイバリット・ピアニスト

古代エジプト展

 いま、森アーツセンターギャラリーで「ブルックリン博物館所蔵特別展 古代エジプト」が開催されている(4月6日まで)。
 小学生のころから古代エジプト文明に興味を惹かれ、大人になったら考古学者になってヒエログリフ(古代エジプト象形文字)の研究をしたいと夢見ていた私は、この特別展をとても楽しみにしていた。
 これまでさまざまな特別展を見てきたが、いつも新たな発見と驚きを体験し、興味は尽きない。
 もちろん何度もエジプトに旅する計画を練ってきたが、テロがあったり日程が合わなかったり、いまだ一度もかの地を訪れることができない。
 それゆえ、夢はふくらむ一方である。もう、かなり妄想に近い(笑)。
 今回もじっくり時間をかけて特別展を見るとともに、ここで関連した書籍を2冊手に入れ、これからそれをゆっくり読むことを楽しみにしている。
 ただし、エジプトに関することをしていると、いつも時間を忘れるほど没頭してしまうため、仕事がどこかに飛んで行ってしまう(笑)。
 いまは目の前の締め切りをこなさなくてはならないため、エジプトからしばらく離れないといけない、ああ残念。
 特別展は写真撮影OKということで、みんなしきりにスマホで撮影していた。私も少しだけ撮らせてもらった。
 これからは仕事の合間に、少しずつ書籍を読みたいと思う。特にヒエログリフに関することを。ワーッ、至福の時間だ!!

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posted by 伊熊よし子 at 23:30 | 日々つづれ織り

ベルチャ弦楽四重奏団&エベーヌ弦楽四重奏団

 カルテットが大好きな私は、昨日の極寒の雨模様のなか、神奈川県立音楽堂の「世界の第一線を担う2つのカルテットが響き合う!」と題されたベルチャ弦楽四重奏団とエベーヌ弦楽四重奏団の演奏を聴きに出かけた。
 プログラムは、前半がウェーベルン:弦楽四重奏のための緩徐楽章(エベーヌ)、メンデルスゾーン:弦楽八重奏曲変ホ長調作品20、後半がショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第3番より第3楽章(ベルチャ)、エネスク:弦楽八重奏曲作品7。
 弦楽八重奏曲を聴く機会はなかなかないため、この2曲がとても楽しみだった。
 文字通り、世界の第一線で活躍するふたつのカルテットは、それぞれ個性は異なるものの、ストイックに作品に没入していく姿勢、4人の絶妙の呼吸の合わせた方、作品への深い洞察力は同質のものが存在し、4曲ともに精神性の高い演奏だった。
 とりわけ、美しく心の奥深く響いてきたのはメンデルスゾーンで、第1楽章の燃え上がるような情熱、第2楽章の滋味豊かな緩徐楽章の特質、第3楽章の軽妙洒脱でデリケートな響き、第4楽章の8つの楽器が一体化した推進力あふれるフィナーレが印象に残った。
 最後はエベーヌに加入したチェロの岡本侑也が日本語でアンコールのフォーレを紹介し、幕となった。
 この公演評は、「公明新聞」に書く予定になっている。
posted by 伊熊よし子 at 14:00 | クラシックを愛す
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