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エリソ・ヴィルサラーゼ

 エリソ・ヴィルサラーゼの演奏は、いつ聴いても、どんな作品を聴いても、深い感動が心に残る。
 11月27日にはすみだトリフォニーホールでリサイタルがあり、前半は彼女が得意とするシューマンの「6つの間奏曲」と「ダヴィッド同盟舞曲集」が演奏された。
 何も引かない、何も足さないということばがピッタリで、あるべき音がそこに存在し、シューマンの作品の神髄がひたひたと胸に押し寄せてくる。
 なんという謙虚で純粋で高潔なピアニズムだろうか。
 ヴィルサラーゼはインタビューでも、音楽と対峙する真摯な姿勢をことばを尽くして話してくれるが、演奏もまた揺るぎなく凛としたもので、姿勢を正したくなる。
 後半はオール・ショパン。バラード、ワルツ、ノクターンなど全11曲を休みなく続けて演奏し、余分なものが何もないシンプルな美を放つショパンの世界へと聴き手をいざなった。
 こういうリサイタルは、本当に心に響くものである。何日たっても感動の泉は枯れず、いまだ美しく透明感あふれる水がこんこんと湧き出てくる感覚にとらわれる。
 もうすぐ、2018年のコンサート・ベストテンの原稿の締め切りがやってくる。今年も、もうそういう時期になったのだ。ヴィルサラーゼは、当然のことながらこのなかに入る。あとはどれを選ぼうかな。
posted by 伊熊よし子 at 23:27 | クラシックを愛す

マルティン・シュタットフェルト

 マルティン・シュタットフェルトに初めてインタビューをしたのは、2005年8月、シュトゥットガルトでのことだった。
 前年、ヨーロッパでリリースされたJ.S.バッハ「ゴルトベルク変奏曲」がセンセーションを巻き起こし、日本でも大きな話題となっていた。
 ドイツでのインタビューは、コンサート会場の近くで行われ、シュタットフェルトは演奏と同様にあるリズム感を伴って颯爽と現れた。
 あれから13年、彼は何度も来日し、そのつど新たな面を示してきた。
 シュタットフェルトはもちろんバッハ以外の作品も演奏しているが、新譜は「バッハへのオマージュ」と題した「シャコンヌ」のピアノ用編曲と、自作の「バッハへのオマージュ〜ピアノのための12の小品」(ソニー)。その話を聞きに、すみだトリフォニーホールに出かけた。
 今回のリサイタルでは(11月25日すみだトリフォニーホール)、バッハと自作とショパンの24の練習曲集(シュタットフェルトによる即興演奏挿む)がプログラムに組まれている。
 インタビューでは、新譜の編曲と自作の話題が中心となり、やはりバッハに始まり、バッハに終わった。
 このインタビューは次号の「intoxicate」に書く予定である。
 シュタットフェルトは、自身の進む道を迷わず、道草もせず、まっすぐに進んでいる。近年は作・編曲にも力を入れ、「自分の本当に弾きたいものを弾く」という姿勢を明快に打ち出している。
 彼はとても思慮深く、静かにおだやかに話す。ここがもっとも変貌した点で、最初に会ったころは、話も「ゴルトベルク変奏曲」の演奏の疾走するイメージと重なり合うようなスピード感にあふれ、エネルギッシュでリズミカルで、ある種のとんがった感じを抱いたものだ。
 しかし、現在はひとつの質問にじっくり考えを巡らし、ゆったりとことばを選びながら話す。
 ひとりのアーティストをデビュー当初から聴き続け、取材し続けると、その人間性と音楽性の変容が理解できて興味深いが、シュタットフェルトの場合もしかり。音楽の熟成と同様、人間性も成熟してきたことがわかる。ただし、バッハに対する一途な思いは変わらぬままだ。
 今日の写真は、静けさあふれる表情のマルティン・シュタットフェルト。

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posted by 伊熊よし子 at 23:59 | アーティスト・クローズアップ

奈良ホテル

 連休の京都は、どこに行ってもものすごい人で、紅葉を愛でる人でごったがえしている。
 今回は、その混雑を逃れて奈良に出向いた。両親が長年愛した奈良ホテルに行き、昼膳をいただいたのである。
 奈良ホテルは、いまも昔も変わらぬ凛とした風情で出迎えてくれる。
 今回は日本料理の「花菊」の1日30食限定という、「もみじ狩り弁当」を予約しておいた。

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 3段のお重にさまざまなお料理がぎっしりと詰まっている。
 これに煮物、汁物、鮭そぼろ御飯、宝石(デザート)が付く。なんと美しいハーモニーほ奏でていることだろうか。食べるのがもったいないほどの色彩感と取り合わせ。ひとつずつていねいに作られ、素材の味が生きている。
 奈良ホテルは高台に位置しているため、レストランからの眺めもすばらしい。旧館の内部は創立当時のままの姿をいまに伝え、新館も趣がある。

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 11月下旬は紅葉がすばらしく、ホテルの中庭も一幅の絵のような色合いが印象的だった。

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posted by 伊熊よし子 at 23:30 | 麗しき旅の記憶
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