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ウラディーミル・アシュケナージ

 アシュケナージには、何度インタビューを行ってきただろうか。
 私が「ショパン」にいた時代にはいろいろ喧嘩もし、いろんな確執もあり、ショパン・コンクールの審査員を務めていた彼にインタビューを申し込んだところ、逃げ腰になられたこともある。
 やがて何度も取材を重ねているうちに、表情がやわらかくなり、いまではいろんなことを率直に話してくれるようになった。
 ただし、アシュケナージは「音楽のことは話さないよ。私はすべてを演奏で表しているから」というのがモットー。それでは記事が書けないため、私はいつもしつこく食い下がることになる。
 先日、ウィーン&グラフェネックから早朝に帰国し、その日の午後にインタビューが組まれていた。成田から大急ぎで自宅に戻り、スーツケースを置いて顔を洗い、軽くランチを食べ、着替えてアシュケナージが滞在しているホテルに駆け付けた。
 アシュケナージは、今秋アイスランド交響楽団とともに来日ツアーを行う(11月3日、8日、16日)。ソリストは辻井伸行である。その話を聞くためのインタビューである(家庭画報)。
 いつもながら音楽の話はせずに、さまざまな方面に話題が広がっていく。夫人も同席し、半分以上は彼女が質問に答えてくれた。
 ただし、辻井伸行に関しては、大いに口がなめらかだった。アシュケナージは、辻井さんの話題になると、表情がとても柔和になる。「NOBUはいいピアニストだよねえ、性格もいいし。あんなに純粋に音楽と向き合っている人は、近ごろ珍しいんじゃないの」といっていた。
 夫人も、「そうそう、そうなのよ。いつも私はその真摯な姿勢に感動してしまうわ」と話していた。
 アイスランド交響楽団との共演で、辻井伸行はショパンのピアノ協奏曲第2番と、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を演奏する。両曲とも、ピアニストとしてのアシュケナージが得意とするコンチェルトである。どんなコラボレーションが生まれるのか、興味は尽きない。
 今日の写真は、インタビュー中のアシュケナージ。おかしかったのは、撮影のときにカメラマンが「笑顔ください」といったら、「私は笑わない。ここで笑ったら変だろう。笑わないよ」と、かたくなに笑顔を見せなかった。やっぱり、難しい人だよね。

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posted by 伊熊よし子 at 23:17 | 情報・特急便

イワシのしょうが煮

 圧力なべというのは、忙しいときにとても便利な代物である。
 私はイタリアのラゴスティーナを愛用しているが、もういくつ目になるだろうか。
 大きなお肉のかたまりも、堅いお魚の骨も、お豆や昆布の煮物も瞬時に柔らかくなり、これひとつで面倒なお料理が短時間で仕上がる。
 新鮮なイワシが手に入ったときは、まとめてしょうが煮を作っておく。これは日持ちするし、主菜が足りない感じのときにも大いに役立つ。
 まず、4人前としてイワシを中15尾ほど用意する。以前は、圧力なべを使用するため、頭と内臓だけを除き、中骨は残して調理していた。その方がカルシウムが丸ごと摂れていいと思ったからだ。
 だが、中骨も尾も取って三枚におろしてから調理すると、食べるときにとてもおだやかな味になることがわかった。以来、その方法で作っている。
 イワシは三枚におろし、薄い塩水でさっと洗い、圧力なべにきれいに並べる。かぶるくらいの湯と酢大さじ1を加え、ふたを閉める。なべを強火にかけ、シューッといったら弱火にして10分煮る。
 小レバーを立てて蒸気を完全に抜き、ふたをあけ、イワシを崩さないように取り出す。
 からにした圧力なべに再びイワシを並べ、酒3分の2カップ、しょうゆ3分の1カップ、砂糖大さじ1弱、みりん4分の1カップ、水2分の1カップとしょうがの千切りひとかけ分と梅干し大2個分をちぎったものを加え、ふたを閉める。強火にかけ、シューッといったら弱火にして10分煮る。
 前の方法と同様に蒸気を抜き、ふたをあけてイワシを取り出す。
 お皿に盛って、本わさびのすりおろしをトッピングすれば出来上がり。
 これは先日、松本の友人Tちゃんからいただいた本わさびを使いたくて試したレシピ。
 写真は出来立てのイワシのしょうが煮。ふつうはしょうがと梅の味で十分イワシの生臭みは消えるが、本わさびを添えると、料亭のような上品な味わいに仕上がる。ぜひ、お試しを。

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posted by 伊熊よし子 at 21:45 | 美味なるダイアリー

ウィーン楽友協会「黄金のホール」

 先日、辻井伸行の取材でウィーンを訪れた際、久しぶりにウィーン楽友協会「黄金のホール」に足を踏み入れた。
 このホールは音響のすばらしさで知られ、佐渡裕指揮ウィーン・トーンキュンストラー管弦楽団のリハーサルを聴いているときも、ステージから放物線を描くように客席に届けられる、まろやかで精緻な響きに魅了されたものだ。
 以前、このホールを取材した際、芸術監督のトーマス・アンギャン氏が「このホールは下は空洞になっており、上も何もないため、コントラバスのように全体が鳴り、すばらしい響きが生まれるのです」と語っていた。
 今回の辻井伸行のラヴェルのピアノ協奏曲も、冒頭からピアノの響きが明晰かつこまやかで、ひとつひとつのリズムが非常にクリアに響いてきた。
 オーケストラとの音の融合も自然で、まさにラヴェルの粋で洒脱でエスプリに富んだ音楽が聴き手の心にまっすぐに届けられる感覚を抱いた。このコンチェルトは多分にジャジーな雰囲気を備えているが、幼いころからジャズが好きだという辻井さんのノリのよさも際立っていた。
 彼自身、インタビューではこのホールの響きを絶賛し、「ここで演奏できて本当に幸せ。夢のようなひとときです」と話していたが、やはりピアニストにとっては至福の時間を過ごすことができるのだろう。
 本当に、このホールは「黄金のホール」と称されるのにふさわしい。私はいつもここにすわっていると、カラヤンのたった一度のウィーン・フィルのニューイヤーコンサートを聴きにきたときのことを思い出す。
 私にとっても、まさにここは夢のようなひとときを過ごした場所である。
 今日の写真は、以前、許可をいただいて撮影した人の入っていない「黄金のホール」。ため息が出そうなくらい、美しい。

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posted by 伊熊よし子 at 22:00 | 麗しき旅の記憶
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