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アレクサンダー・コブリン

 今日は、浜離宮朝日ホールにアレクサンダー・コブリンのピアノ・リサイタルを聴きに行った。
 プログラムはラフマニノフの練習曲集「音の絵」とチャイコフスキーの「四季」。
 以前、公演に先駆けてのオンラインインタビューを行い、その記事をブログにアップしたが、彼は今回ロシアプログラムを組むのに、とても迷ったという。
 というのは、いまヨーロッパやアメリカでは、戦争が行われているためロシア作品を弾くことを敬遠する聴衆が多いからだという。ただし、日本では、作品のすばらしさを評価してくれるため、今回の選曲に踏み切ったと話してくれた。
 コプリンの演奏は、以前から感じていることだが、完全なロシア・ピアニズムの継承者としての奏法と解釈の上に成り立っている。
 ラフマニノフは、情熱的でダイナミックでヴィルトゥオーゾ的。チャイコフスキーは、旋律の美しさを前面に押し出し、情感あふれる歌心に満ちたピアニズム。
 ピアノに向かう姿勢も美しく、上半身は微動だにせず、肩から腕、指先にいたるまで完璧なるコントロールがなされている。ペダリングもごく自然体。深く踏み込むときも、余分な動きや音はいっさいせず、静かでナチュラル。
 こういうピアノを聴くと、ロシア・ピアニズムの伝統が確実に受け継がれていることに感動すら覚える。
 コブリンはヴァン・クライバーン・コンクール優勝後はニューヨークに居を移し、活発な活動を展開している。
 ただし、アメリカ的なエンターテイナーのような演奏とは一線を画し、あくまでもロシア的な奏法を守り抜いている。
 その一途な姿勢がたのもしい。
posted by 伊熊よし子 at 23:09 | クラシックを愛す

宇田川貞夫

 先日、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者の宇田川貞夫のインタビューを行った。
 「音楽の友」の編集者Kさんと一緒に、戸塚にある彼のスタジオまで出向き、11月29日〜12月7日にかけて全国4カ所で開催されるヴィオラ・ダ・ガンバ リサイタルの話を聞いた。
 プログラムはテレマン、グラウン、タルティーニのコンチェルト。ヨーロッパなどから若き奏者が帰国して一堂に会し、弦楽合奏をバックにガンバがソロを披露する。これは、演奏活動60周年記念と名付けられている。
 その作品に関して、作曲家について、作品との出会いから楽器とのつながりまで、幅広い話を聞くことができた。
 音楽の話がひと段落した後、趣味の話に移り、宇田川さんが「そば打ち名人」であることが判明。
 お料理が大好きだそうで、イタリアンから中華、カレーまでなんでもござれ。このコンサートの前3日間は、みんなでスタジオにこもって合宿して演奏を仕上げるという。
「そのときは、事前にカレーをたくさん作っておくんですよ」
 若いアンサンブルのメンバーとの合宿について、実に楽しそうに話していた。
 今日の写真は、スタジオでの1枚。
「マラン・マレはこうやってガンバを弾いていたんだよ」などと冗談をいいながら、ポーズをとってくれた。

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posted by 伊熊よし子 at 22:32 | 日々つづれ織り

名倉誠人

 昨夜、東京文化会館小ホールに「名倉誠人 60マリンバ・リサイタルV」を聴きに行った。
 このリサイタルは「Aspirations:夢を追い続ける者」と題され、バッハの無伴奏作品の編曲版からスタート。フィリップ・ラサー、デイヴィッド・コンティのマリンバとピアノの作品(日本初演)と続き、最後はベンジャミン・C.S.ボイルの「天国への帯 マリンバとバリトンのための歌曲集」(世界初演)という構成である。
  以前、名倉さんにインタビューしたとき、彼は「マリンバはオリジナル作品が少ないため、いろんな作品の編曲版を演奏したり、現代の作曲家への委嘱を積極的に行っている」と語っていた。
 この日はプレトークもあり、名倉さんと作曲家のボイル氏が対談を行い、作品についてさまざまなことを語った。
 いつも演奏を聴いて思うことだが、名倉誠人のマリンバは1台でオーケストラのような多様性と多彩な音色に富み、響きがとても美しく、聴き手の心の内奥にスーッと浸透してくる。
 昨夜の演奏も、バッハから現代作品までそれぞれバチを変え、ピアノやバリトンとの共演にも合う奏法と表現力で一瞬たりとも弛緩しない緊迫感と、また野性的で人間の本能に訴えかける音を披露し、聴き手の心を虜にした。
 アンコールの最後に演奏された、プーランク「アッシジの聖フランチェスコの4つの小さな祈り」の編曲版がすばらしく心に響き、短い曲ながら音色がとても色彩感豊かだったため、私の脳裏には以前訪れたアッシジが蘇ってきた。
 今日の写真は、終演後の名倉誠人。赤のベストがステージに映えていた。

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posted by 伊熊よし子 at 23:57 | 日々つづれ織り
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