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ジュスタン・テイラー

 チェンバロ好きの私が、今夜は真にすばらしい才能に触れたため、いまはあったかい気持ちでいっぱいである。
 フランスの若手チェンバリスト、ジュスタン・テイラーは、2015年に23歳の若さでブルージュ国際古楽コンクール・チェンバロ部門で優勝し、17年にもロワール国際古楽コンクールの覇者となっている。
  ジュスタン・テイラーは、コロナ禍で昨年の公演が延期していたが、ようやく今年の1月に開催の運びとなった。彼は12月21日にフランスを出発して来日し、隔離期間を経て日本デビュー公演にこぎつけた。
  今日は王子ホールでJ.S.バッハ「ゴルトベルク変奏曲」の演奏が行われたわけだが、これがもうすこぶる上質で躍動感に満ちたみずみずしい演奏。これまでチェンバロやピアノで数えきれないほど「ゴルトベルク変奏曲」を聴いてきたが、そのどれとも異なる生き生きとした個性的な演奏で、深い感銘を受けた。
  とりわけ2段チェンバロの上下の鍵盤の使い分け、リュートストップの使用法が考えられており、さらに装飾音の取り入れ方が絶妙。すべてが自然で、流れる水のごとし。
  もっとも心に響いたのは最後のアリア。いつもこのアリアが現れると、「ああ、これで長い旅が終わる」と思い、さらに旅は続くという感覚にとらわれるのだが、テイラーのアリアは、まったく様相が異なっていた。
  彼は繰り返しの部分を上の鍵盤で奏で、まったく装飾音を入れず、素のままの音楽で勝負したのである。
  やがて上下の鍵盤で装飾音が登場したが、そのコントラストの見事さ。あまりにも美しく上質な響きで、終わるまでドキドキしてしまった。
  この公演評は、「公明新聞」に書く予定である。
  今日の写真は、プログラムの表紙。すぐにまた来日してほしいと、強く願わずにはいられない。

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posted by 伊熊よし子 at 22:46 | アーティスト・クローズアップ

樫本大進&キリル・ゲルシュタイン

  2021年の最初のコンサートは、樫本大進とキリル・ゲルシュタインのデュオ・リサイタル。
  今日はサントリーホールに聴きに出かけたが、やはり会場はかなり集客数を絞っており、徹底した感染対策が取られていた。
  プログラムは、プロコフィエフの「5つのメロディー」からスタート。いずれも幻想的でかろやかさと歌心が横溢し、プロコフィエフの新たな面を見せている。
  次いで人気の高いフランクのヴァイオリン・ソナタが登場。樫本大進の演奏は、年々音色が豊かになり、流麗でよくうたう。ベルリン・フィルでの日々の演奏が彼の才能をより豊かに開花させているのだろう。
  後半は、今年没後25周年を迎える武満徹の「妖精の距離」で始まった。詩人・美術評論家の瀧口修造の詩作「妖精の距離」から着想を得た作品で、ヴァイオリンとピアノの美しい対話が聴き手の心に染み込んでくる。
  ここで特筆すべきは、ゲルシュタインの存在感のある凛としたピアニズム。大進の柔和な弦の響きとは異なる硬質さとクリアな響きが印象的だが、ときおりえもいわれぬやわらかな音色が顔をのぞかせ、ハっとさせる。実に刺激的なピアノである。
  最後は、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」が演奏された。昨年のベートーヴェン・イヤーから、何度「クロイツェル」を耳にしてきただろうか。
  それぞれのデュオが自分たちの「クロイツェル」を生み出しているが、大進とゲルシュタインのデュオは、力でぐいぐい押していくスタイルではなく、ベートーヴェンのロマンと叙情性、ときに思索的で精神性の高い演奏だった。
  キリル・ゲルシュタインは、1月16日に紀尾井ホールでリサイタルを予定している。こちらも楽しみである。
  今日の写真は、プログラムの表紙。

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posted by 伊熊よし子 at 22:42 | クラシックを愛す

かごフェチ

  世の中には、かごの好きな人が多いと思う。
  私も無類のかごフェチ。家には各地で購入してきたかごが並ぶ。
  最初にかごに魅せられたのは、ジュネーブ国際ピアノ・コンクールの取材に出かけた際、オフの時間にフランスから飛んできてくれたカメラマンと一緒に、山奥の方に散策にでかけたときに見つけたもの。
  あけびのような堅い素材でていねいに作られたかごを見て、ひとめぼれ。ただし、日本にもって帰るには大きすぎて、たたむこともできず、機内持ち込みの手荷物にしなければならない。
  ずっと眺めながら悩んでいた私に、カメラマンがひとこと。「ここにはもう一生来ないと思うよ。いま買わなかったら、きっと後悔する。買っちゃいな」。
  そのことばを受けて、手に入れたかごはもう何年も大切に使っている。
  それ以来かごが大好きになり、京都、エストニア、松本、タイ、スペインなどのかごが我が家に集結した。
  いろんなところに散らばっていたかごだが、コロナ禍で部屋を片付ける時間があり、一箇所にまとめることになった。
  いまはリビングルームの壁面に並ばせ、食材、保存食などを分類して入れている。
  これらのかごは、見るたびに私を幸せな気分にさせてくれる。最初にジュネーブで買って、本当によかった。
  今日の写真は、リビングに並ぶかごたち。真ん中のこげ茶色のかごがスイス製。

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posted by 伊熊よし子 at 22:36 | 日々つづれ織り
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