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広瀬悦子

 パリを拠点に国際舞台で幅広い活動を展開しているピアニストの広瀬悦子が、ベートーヴェン生誕250年を記念し、フリードリヒ・カルクブレンナーが編曲したベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」をレコーディングした。
  リスト編はよく知られているが、カルクブレンナー編はほとんど知られていない。もちろん、世界初録音という快挙である。
  広瀬悦子はシプリアン・カツァリスとよく共演することで知られ、リスト編は演奏しているが、カルクブレンナー編の存在は知らなかったという。

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  この楽譜は、キングレコードのMさんがドイツの古本屋さんから20年前に入手したもので、初版楽譜である。
  その話を聞きに、レコード会社まで出かけた。
  「ベートーヴェン・イヤーに向けて、何か特別な作品はないかなとMさんに相談したところ、このカルクブレンナーの《第9》の楽譜を教えてもらったんです。2019年11月に2020年1月のナントでの《ラ・フォル・ジュルネ》で演奏することが決まり、同時に録音も決まったため、もう死に物狂いでしたね」

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  広瀬悦子は超絶技巧を要する作品を数多く演奏してきたが、これは特に難しかったという。
  これは第4楽章の「合唱」の歌詞がフランス語に訳されている。録音では歌手とエカテリンブルグ・フィルハーモニー合唱団との共演で、大変な思いをした。
  「とにかく《ラ・フォル・ジュルネ》の開催中の録音でしたから、ほとんどリハーサルなしのぶっつけ本番のようなスタイル。すごい合唱の迫力で、私はピアノ1台ですから負けないように頑張り、2回のライヴで収録しました」
  その成果があり、この録音は臨場感たっぷり。リスト編とはまた異なった、より音符の多い、迫力に満ちあふれた演奏に仕上がっている。ちなみに、カルクブレンナーはショパンが熱烈に崇拝していたことで知られる。

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  今回、その貴重な楽譜を見せてもらったが、年代物のどっしりした分厚いもので、カルクブレンナーがベートーヴェンを好んでいたフランス王ルイ・フィリップに献呈していることも記されている。

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  このインタビューは、次号の「intoxicate」に書く予定である。
  ベートーヴェン・イヤーに日本のピアニスト、広瀬悦子が世界に向けて発信する貴重な録音。まさに手に汗握るような臨場感にあふれた、情熱と迫力と緊迫感に満ちた1枚である。



posted by 伊熊よし子 at 22:52 | 情報・特急便

上原彩子

  2021年1月13日、東京オペラシティコンサートホールで上原彩子のピアノ・リサイタルが開かれる。
  題して「ショパン&ラフマニノフの世界」
  プログラムは、ショパンの「24のプレリュード」作品28が前半に置かれ、後半はショパンの「プレリュード」嬰ハ短調作品45から始まり、ラフマニノフの「プレリュード」嬰ヘ短調作品23-1、同「プレリュード」変ホ長調作品23-6へとつなげ、最後にラフマニノフの「ショパンの主題による変奏曲」ハ短調作品22で幕を閉じるというこだわりの選曲だ。
  その話を聞きに、銀座のヤマハに出かけた。
  彼女にはデビュー以来ずっとインタビューを続けているため、その成長と変遷がリアルに伝わってくる。
  この最後のラフマニノフの「ショパンの主題による変奏曲」は、あまり演奏される機会がない珍しい作品。
  上原さんは、ラフマニノフのピアノ・ソロ作品をほとんど演奏してきたが、これに関しては、コロナ禍で練習する時間が十分にあったため、挑戦したのだという。
  実は、この作品は、11月5日にHakujuホールで行われたチェロの伊藤悠貴とのデュオ・リサイタルで聴いているのである。
  かなり壮大な作品で、主題は美しいが、ラフマニノフ特有の変奏は難易度の高さを物語っている。上原さんも、「ようやく挑戦することができました」と話していた。
  このインタビューは、ヤマハWEB「ピアニストラウンジ」と「ピアノの本」に書き分けをすることになっている。
  上原彩子といえば、すぐにロシア作品が頭に浮かぶ人が多いのではないだろうか。
  その彼女がショパンを弾く。このことに関して、いろんな話が飛び出し、興味深かった。記事では、なぜこれまでショパンをあまり演奏しなかったかも、紹介したいと思う。
   今日の写真はピアノの前の上原さん。チャイコフスキー・コンクールのときから見ると、本当に大人っぽくなったよねえ。もう長女が中学生だそうだ。いやあ、こっちは年とるわけだ(笑)。

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posted by 伊熊よし子 at 21:41 | 情報・特急便

舘野泉

  演奏生活60周年を迎えるピアニストの舘野泉が、11月10日(火)に東京オペラシティコンサートホールで「ピアノ・リサイタル〜悦楽の園」と題した演奏会を開く。
  この日は、館野さんの84歳のお誕生日。バッハ(ブラームス編):「シャコンヌ」、スクリャービン:「2つの左手のための小品より 前奏曲、夜想曲」から始まり、光永浩一郎、新実徳英、パブロ・エスカンデの世界初演の作品が演奏される。
  舘野さんは、今年前半はコロナ禍で日本からフィンランドに帰ることができなかったが、ようやく夏になって戻ることができたという。
  そのフライトを控えた前日、2枚のCDを送ってくださった。
  1959年春、東京藝大3年生だった舘野泉と藝大付属高校3年生のヴァイオリニスト浦川宣也が藝大奏楽堂で共演したショーソンの「ヴァイオリンとピアノと弦楽四重奏のための協奏曲ニ長調」で、弦楽四重奏は舘野晶子、林瑤子、白神定典、館野英司が担当している。
  いまや巨匠の域に達したふたりの演奏が、まさに60年のときを経て蘇ったことになる。
  演奏は、若い音楽家たちによる夢に向かってひたすら進んでいくようなみずみずしいエネルギーを感じさせるもので、その奥にえもいわれぬなつかしさと心が締め付けられるようなひたむきさが見え隠れしている(ヒビキミュージック)。
  もう1枚は、1988年1月にフィンランドのシベリウス・ホールで収録された「フィンランド ピアノ名曲コレクション」(2枚組
オクタヴィア。シベリウス、パルムグレン、メリカントらの作品が41曲収録されている。
  これは長年、廃盤になっていたが、ようやく再発売されたものである。
  舘野さんの手にかかると、これらの小品が絵画のように美しい色彩と北欧特有の空気をまとってひとつの世界となって現れ、しばし異国の地へと運ばれていく。まさに「音の絵」である。
  いつも舘野さんと会うと、私のしゃべり方が彼の3倍も5倍も速いため、途中でトーンを落とすことになる。舘野さんはそんな私を見て、ゆったりとにこやかに笑っている。
  11月のリサイタルは、本当に楽しみである。コロナ禍で、みんなの心が疲弊しているなか、きっと舘野さんの音楽はいつしか聴き手の心身を癒し、前向きに歩めるよう、そっと背中を押してくれるに違いない。
  今日の写真は、館野泉の近影( ◎横関一浩)。

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posted by 伊熊よし子 at 22:16 | 情報・特急便
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