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アレクサンドル・カントロフ、ホアキン・アチュカロ

 先週は、来日ピアニストのすばらしい演奏を2度聴くことができた。
 6月30日(木)には東京オペラシティコンサートホールで、アレクサンドル・カントロフのピアノ・リサイタルが開かれた。
 昨年のブラームスの公演は、「音楽の友」の年間ベストワンに挙げたほど。さて、今年のプログラムは、リストの「巡礼の年」が中心で、シューマンのピアノ・ソナタ第1番とスクリャービンの詩曲「焔に向かって」が挟まれる趣向。
 作品によるのだろうが、昨年の滋味豊かな心に切々と響いてくる演奏とは一線を画し、エネルギッシュで情熱的で楽器を大きく鳴らす奏法だった。
 この公演評は「モーストリー・クラシック」に掲載される予定である。
 ここしばらく来日アーティストの演奏は、アンコールが盛りだくさん。コロナ禍でなかなか来日できなかったためか、アンコールだけで第3部が構成されるような形である。
 カントロフも、7曲も弾いてくれ、私が聴きたかったブラームスの「4つのバラード」が含まれていた。ああ、大満足…。
 7月3日(日)には王子ホールで、今秋90歳を迎える巨匠、ホアキン・アチュカロのピアノ・リサイタルが行われた。
 前半はブラームスのピアノ・ソナタ第3番、後半はリスト、ラフマニノフから始まり、得意とするグラナドス、アルベニスへと移った。
 アチュカロは、インタビューしたときもそのエネルギッシュで前向きで、音楽にすべてを駆けている姿勢に感服したが、今回の演奏も聴き手を元気にするもの。私も大いなる活力をもらうことができた。
 やはり、こうしたナマの演奏は何物にも代えがたい。感染状況が微妙でちょっと心配だが、なんとかコンサートが続くことを願いたい。

posted by 伊熊よし子 at 23:04 | マイ・フェイバリット・ピアニスト

ネルソン・フレイレ

 私の大好きなピアニスト、ネルソン・フレイレが11月1日にリオデジャネイロの自宅で亡くなった。享年77。
 数年前に転倒して肩や腕を痛め、リハビリをしていたそうだが、ピアノを弾くことはできなくなってしまったようだ。
 最近はうつ状態だったというが、そのニュースを聞いてから、私の心の奥になんともいえない複雑な思いが宿り、元気だったころのフレイレを思い出しては、悲痛な思いを払拭しようと心がけている。
 フレイレに関しては、これまでブログにも何度か登場してもらった。
 2014年10月16日、2017年7月4日、2018年8月5日。
 興味のあるかたは、ぜひ検索してみてくださいね。
 いずれ、ゆっくり追悼文を書きたいと思っている。
posted by 伊熊よし子 at 17:40 | マイ・フェイバリット・ピアニスト

阪田知樹

  2021年のエリザベート王妃国際音楽コンクールで第4位入賞に輝いた阪田知樹は、私が以前から応援しているピアニストである。
  彼は19歳でヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで最年少入賞を果たし、2016年にはフランツ・リスト国際ピアノコンクールにおいて第1位を獲得している。
  エリザベート・コンクールはオンラインで演奏を聴いたが、今回は実力派ぞろい。第4位というのは少し残念な気もしたが、インタビューでは「自分の演奏を極めたかったから、順位は気にしていない」と語っていた。
  阪田知樹のインタビューは、いつも話題が豊富である。彼は古い時代の録音を愛聴し、ロシアのウラディーミル・ソフロニツキーの話になると止まらなくなるほど、ソフロニツキーに対する愛が深い。
  そのほか、古い楽譜を探したり、原譜を見つけたり、演奏される機会に恵まれない作品を見出したりすることに意義を見出している。その話が始まると声のトーンも一気に高くなるから、笑っちゃうほどだ。
  今回のインタビューは、次号の「音楽の友」に掲載される予定である。
  エリザベート・コンクール入賞後のコンサートとして、10月14日にはサントリーホールでリサイタルを開く。ベートーヴェンの「月光」からスタートし、シューマンの「幻想曲」へと移り、後半は得意とするリストのロ短調ソナタと「リゴレット」パラフレーズという彼らしいプログラム構成である。
  今日の写真はインタビュー後の1枚。阪田知樹はいつも個性的なシャツを着て現れる。今回も実にユニーク。コロナ禍でずっと髪を伸ばしていて、なかなか切れなくなったとか。リストを意識しているのかな(笑)。

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posted by 伊熊よし子 at 16:54 | マイ・フェイバリット・ピアニスト
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