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アリス=紗良・オット

  世界でもっとも忙しいピアニストといわれ、ソロ、デュオ、コンチェルトと幅広く活躍していたアリス=紗良・オットが、今年2月に自身の公式サイトで「多発性硬化症と診断された」と公表し、世界中のファンを驚かせた。
  彼女はその後、治療に専念しながら、コンサートの予定をできる限りキャンセルすることなく、「意欲をもって臨みます」と発表している。
  そんなアリスが、7月に日本ツアーを行ったエリアフ・インバル指揮ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団のソリストとして来日した。
  私が聴いたのは、7月10日に東京芸術劇場で行われたコンサートで、アリスはモーツァルトのピアノ協奏曲第21番を演奏。前作の第20番とは対照的な明朗性と祝祭的な雰囲気を備えた作品で、全編にシンフォニックで威風堂々たる響きが横溢している。
  アリスはオーケストラとの密度濃い音の対話を楽しむように、終始オーケストラと指揮者の方に顔を向けながらテンポを合わせ、実に楽しそうに演奏。まったくふだんと変わらぬ様子を見せた。
  終演後、楽屋は彼女の体調を心配する人と関係者であふれ、私もその列のうしろについて、アリスとひとことだけ会話を交わした。
  いまは一生懸命治療しながら、体調を整えることに心を砕いているとのこと。「日常生活は大丈夫。ありがとう、頑張ります」と気丈な様子を見せていた。
  アリスにはデビュー当時から取材を続け、さまざまな機会にインタビューを行い、いろんな話を聞いてきた。最初から、彼女は本音で話してくれ、そのストレートな語り口が音楽同様の率直さと相まって、大きな魅力のひとつとなっている。
  今日の写真は、元気な笑顔を見せるアリス=紗良・オット。陰ながらエールを送り続けたい。アリス、頑張ってね!!!

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posted by 伊熊よし子 at 23:12 | マイ・フェイバリット・ピアニスト

ピエール=ロラン・エマール

 ピエール=ロラン・エマールは、来日のたびに新たな面を見せてくれる。
 プログラムの根底にあるのは、古典的な作品と現代作品。その両面でこだわりの選曲を行い、これまで何度も聴き手に大きな感動を与える演奏を披露してきた。
 今回も、大きな期待を胸に秘めて紀尾井ホールへと出向いた(3月21日)。
 プログラムは、2003年にエマールのピアノによって初演されたジョージ・ベンジャミン(英国・1960〜)の「シャドウラインズ」で幕開け。カノンがさまざまな手法で用いられた作品だ。次いで、バッハの美学と密接にかかわりながら創作を行った、新ウィーン楽派のアントン・ウェーベルン(1883〜1945)の「変奏曲 作品27」が演奏された。これに英国のオリヴァー・ナッセン(1952〜2018)の「変奏曲 作品24」が続き、エマールらしいプログラム構成となった。
 後半は、J.S.バッハの「ゴルトベルク変奏曲」。今回のリサイタルは「VARIATIONS!」と題され、すべて変奏曲という手法を取る作品で統一されている。
 エマールのバッハはこれまでも何曲か聴いてきたが、常に適切なテンポに深い感動を覚える。「ゴルトベルク変奏曲」も、静謐なアリアから変奏に移ると、すっ飛ばすような演奏が多いが、エマールはけっして急がない。ゆったりと、1音1音の響きを重視し、バッハの魂に寄り添っていく。
 長い旅路の最後に再びアリアが登場したときは、もうこの演奏が終わってしまうのかと、無性に寂しい思いに駆られた。それほどエマールのバッハの旅は、心の奥に浸透し、どこか別世界にいざなわれたような気分になり、夢を見させてくれたのである。
 この公演評は、次号の「モーストリー・クラシック」に書く予定である。
 今日の写真は、プログラムの表紙。まさに古典から現代の変奏曲を堪能する一夜となった。

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posted by 伊熊よし子 at 15:52 | マイ・フェイバリット・ピアニスト

辻井伸行

 今日はオーチャードホールに辻井伸行のコンサートを聴きにいった。
 角田鋼亮指揮東京フィルとの共演で、ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」とグリーグのピアノ協奏曲というプログラムである。
 コンチェルトの前に、まず、メンデルスゾーンの序曲「フィンガルの洞窟」が演奏され、前半にラフマニノフ、後半にグリーグが演奏された。
 この2曲のコンチェルトは、2月初旬に行われるヴァシリー・ペトレンコ指揮ロイヤル・リヴァプール・フィルとのイギリス・ツアーの曲目で、5月には彼らの来日公演でも共演が組まれている。
 辻井伸行の集中力に満ちた演奏は常に聴き手の心をとらえるが、オーチャードホールのステージには大きなスクリーンが設けられ、彼の指のアップが写されていたため、その動きがよくわかり、一瞬たりとも目を離すことができなかった。
 今年も辻井伸行の取材が続きそうだ。
 来週は「レコード芸術」のインタビューがあり、デビュー10周年に関していろいろ話を聞くことになっている。さらに2月1日から6日までリヴァプールに出張し、現地での演奏を聴き、「家庭画報」の連載記事の取材を行う予定である。
 終演後、辻井さんに楽屋でその旨を話すと、「リヴァプールにきてくれるんですね〜」と喜んでくれた。そして写真を撮ろうとすると、「ブログ用ですよね。父が伊熊さんのブログのファンで、いつも見ているんですよ」とのこと。以前、お父さまからも「いつも読んでいますよ」といわれたことがある。
 うれしいやら、照れくさいやら…。
 今日の写真は、その辻井さんの終演後のワンショット。大曲2曲を弾き終えた晴れやかな笑顔だ。

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posted by 伊熊よし子 at 22:22 | マイ・フェイバリット・ピアニスト
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