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ホアキン・アチュカロ

  最近、何をやってもうまくいかず、仕事が暗礁に乗り上げ、気分が落ち込む日が続いた。
  こういうときこそ、いい音楽を聴く必要がある。
  そこで、スペインの偉大なピアニスト、ホアキン・アチュカロのリサイタルを聴きに日経ホールに出かけた。
  プログラムは、前半がモーツァルト「幻想曲 ニ短調」、ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第30番」、ショパン「幻想即興曲」、ショパン「英雄ポロネーズ」。
  後半は得意とするスペイン作品で、グラナドス「ゴイェスカスより嘆き、またはマハとナイチンゲール」、同「愛と死」、アルベニス「イベリアより港」、同「エル・アルバイシン」、同「ナバーラ」。
  1月来日時も感じたことだが、アチュカロの演奏は、魂が浄化されるような感覚を抱く。とりわけ前半のベートーヴェンの109ソナタの緩徐楽章がロマンにあふれ、この上なく響きが美しく、涙がこぼれそうになった。
  後半のスペイン作品は自家薬籠中。リズムが立ち上り、光と影が見え隠れし、情熱と哀愁が交錯する。なんと心に響くピアニズムだろうか。音楽から元気をもらった気がした。
  アチュカロは、87歳とはとても思えぬ矍鑠たる様子で、すべてのプログラムを弾き終えてもなお音楽に対する情熱が有り余っている感じ。アンコールも立て続けに3曲、ドビュッシー「月の光」、アルベニス「ハバネラ」、スクリャービン「2つの左手のための小品よりノクターン」を演奏。会場に照明がついてからも、ショパン「24の前奏曲より第16番」を弾き、さっそうと引き上げていった。
  長く暗いトンネルに迷い込んでいた私だったが、ホアキンさまの演奏ですっかり元気になった。これが「音楽の力」だろうか。
  明日は、午後にインタビューが組まれている。さて、どんな話が聞けるだろうか。心がわくわくする思いだ。
  今日の写真は、プログラムの表紙。

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posted by 伊熊よし子 at 23:11 | マイ・フェイバリット・ピアニスト

ダン・タイ・ソン

  ピアニストのダン・タイ・ソンが、10月にリサイタル・ツアーを行うことになった。
  スケジュールは、10月5日(大分・グランツたけた)、6日(北九州・響ホール)、10日(武蔵野文化会館)、13日(福島市音楽堂)、15日(愛知県芸術劇場)、16日(紀尾井ホール)。
  そのリサイタルに関し、さまざまな媒体に記事を書き分けるため、代表インタビューを行った。
  今回は2種類のプログラムが用意され、Aプロは前半がシューベルトのピアノ・ソナタ第15番「レリーク」、ショパンの3つのワルツ、同マズルカ風ロンド、後半がパデレフスキの4つの小品、ショパンの「舟歌」「ボレロ」「バラード第1番」となっている。Bプロは、前半のシューベルトだけが変わり、ドビュッシーの「前奏曲集より」6曲が組まれている。
  ダン・タイ・ソンには久しぶりに会ったが、とてもリラックスし、余裕があるように見え、けっしてそれを声高にはいわないものの、自信が感じられた。
  インタビューではプログラムの全体の構成、ひとつずつの作品に関して、それぞれの曲に対する思い出など来日公演に関することが中心となったが、いまのダン・タイ・ソンの心身の充実をぜひとも知りたかったため、あらゆる角度から質問を試みた。
  彼は昔からそうだが、いずれの質問にもきちんとことばを尽くして答え、時折ユーモアを交え、あちこちに日本語を織り込みながら、ゆったりと話していく。
  近年、ダン・タイ・ソンは教える仕事が増え、「いまは音楽院で教える以外にも、来年のショパン・コンクールに向けて教えてほしいという若いピアニストがたくさん訪れ、とっても忙しいんですよ」と、いっていた。
  当初、私はこれほど彼のお弟子さんたちが、コンクールで好成績を残すとは想像しなかった。
  よくダン・タイ・ソンの教授法を知っている人によると、その教授法はすべて弾きながら教えるそうで、生徒がもってくる作品がたとえ初めて見る楽譜でも、ちょっと眺めただけですぐに弾けてしまうそうだ。
  それゆえ、生徒と一緒になって演奏しながら曲を深めていけるとか。
 「ショパン・コンクールを受けたいという若手ピアニストは、年々若くなっています。私のところにくるのは、14歳とか15歳とか、本当に若い人ばかり。 あるとき、13歳と聞いたときには、びっくりしましたよ。でも、みんなとても才能豊か。そしてショパンを愛しています。ですからそれぞれの個性を尊重し、才能がいい方向に伸びるよう、最善を尽くします」
  ダン・タイ・ソンの演奏は、いまや強い説得力をもつ、ピアノ好きをうならせるような巨匠性を備えたものとなった。今回のリサイタルも、いまのダン・タイ・ソンの充実を示すものになるに違いない。
  記事は、そんな彼のピアニズムがどこからか聴こえてくるような文章にしたいと思う。
  今日の写真は、インタビュー後の1枚。以前より体重が増え、おだやかな表情にゆったりとした雰囲気が感じられる。

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posted by 伊熊よし子 at 22:54 | マイ・フェイバリット・ピアニスト

藤田真央

  先日、チャイコフスキー国際コンクールのピアノ部門で第2位入賞の快挙を成し遂げた藤田真央。この時期は、ライヴストリーミングでずっと演奏を視聴していたが、彼は大きなコンクールの舞台でもとてもリラックスし、いつものように実に楽しそうに演奏していた。
  その後、取材が殺到し、なかなかインタビューなどには応じられないと聞いていたが、ようやくインタビューか可能になった。
  場所は、藤田真央が通っている東京音楽大学の新しい校舎、中目黒・代官山キャンパス。初めて訪れたが、とてもシンプル且つスタイリッシュな建物で、レッスン室なども非常に美しく、母校の発展をうれしく思った。
  藤田真央は、インタビューでも自分のいいたいことはしっかり語り、しかも自然体で、とてもリラックスした様子。このインタビューは、「音楽の友」に掲載される予定である。
  話は、もちろんチャイコフスキー国際コンクールのことから始まり、各ラウンドの課題曲について、モスクワ音楽院のステージで演奏するという名誉について、演奏順のこと、他の参加者たちのこと、審査発表の瞬間に関して、審査員たちからかけられたことばなど、さまざまなことに広がった。
  私は、以前のクララ・ハスキル・コンクール優勝に関しても話を聞きたかったため、それにも触れ、さらにヴェルビエ音楽祭に招待されたときのことも話題にのぼった。
  今後の方向性や豊富なども聞くことができ、楽しい時間はあっというまに過ぎた。
  藤田真央のピアノは何度も聴いているが、いつも聴き手までも楽しくなり、幸せな気分にさせてくれる。モスクワでも、耳の肥えた聴衆から熱い支持を受けた。さらに審査員からも大いなる賞賛のことばをかけられ、勇気を与えられ、自信につながったという。
  彼の前には大海原が広がっている。前途洋々の若きピアニストは、来年からベルリンに留学し、さらなる研鑽を積む。そのピアニズムがどのように変貌を遂げるのか、心がわくわくする思いだ。
  今日の写真は、インタビュー中のワンショット。いつもおだやかな笑顔を見せている。

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posted by 伊熊よし子 at 22:20 | マイ・フェイバリット・ピアニスト
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