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メナヘム・プレスラー

 私の敬愛するピアニスト、メナヘム・プレスラーが5月6日、ロンドンで亡くなった、享年99。何度も演奏会を聴き、インタビューも行い、その音楽性と人間性に魅了されてきた。もう、あの心が温まるような笑顔と深きピアニズム、ゆったりと話す独特の話術に触れることができないと思うと、ことばにできないほど悲しい。

ここでは、以前「公明新聞」に書いた公演評を紹介し、心からご冥福をお祈りしたいと思う。


メナヘム・プレスラー ピアノ・リサイタル


 ドイツ、フランス国家から民間人に与えられる最高位の勲章を授与されたメナヘム・プレスラーは、94歳の現在も世界各地で演奏を行っている現役のピアニストである。その演奏は「同時代に生きていて幸せだ」とつくづく感じさせてくれる滋味豊かな響きを備え、心の奥に温かな感動を残す。

 2017年1016日に東京・サントリーホールで行われたリサイタルのプログラムは、ヘンデルの「シャコンヌ」で幕開け。冒頭の主題がゆったりとした3拍子のリズムで奏でられ、21の変奏がやわらかな弱音で流れる清らかな水のように続く。会場はその弱音を1音でも聴き逃すまいと、静けさに包まれた。

次いで、90歳から始めたというモーツァルトのソナタ全曲録音の第1弾のオープニングを飾る「幻想曲ハ短調K・475」、ピアノ・ソナタ第14K・457が演奏され、まさに余分なものが何もない、精緻で純粋無垢な音楽を生み出し、聴き手の魂を浄化させた。

 後半はドビュッシーの「前奏曲集」第1集から5曲、「レントより遅く」「夢」と続き、ショパンのマズルカ3曲とバラード第3番を演奏。いずれもプレスラーの音楽人生を映し出すような真摯で率直で作曲家にすべてを捧げているピアノで、長年弾き続けてきた円熟味あふれる響きがそこには存在していた。

この夜の演奏でとりわけ印象深かったのは、アンコールに登場したドビュッシーの「月の光」。遅めのテンポで淡々と奏でられるドビュッシーは、1946年のドビュッシー国際コンクール優勝時から弾き続けてきた自家薬籠中の曲。あまりにも美しく清らかな「月の光」に、天上の世界でひと筋の光を浴びているような感覚に陥り、頭を垂れて聴き入った。この感動は何日たっても薄れることはない。


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posted by 伊熊よし子 at 22:16 | マイ・フェイバリット・ピアニスト

伊藤恵

 先日、ピアニストの伊藤恵にインタビューした記事が、ヤマハWEB「音遊人」にアップされた。
 ぜひ、読んでくださいね。

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posted by 伊熊よし子 at 22:17 | マイ・フェイバリット・ピアニスト

深沢亮子

 先日、深沢亮子にインタビューするため、ご自宅に伺った。
 近年、彼女は室内楽を好んで演奏しており、5月27日(土)には東京文化会館小ホールで気の合った音楽仲間とともに「デビュー70周年記念」と銘打ってフンメルとシューベルトのピアノ五重奏曲を演奏する。
 そのプログラムに関しての話から話題がどんどん広がり、これらの作品との出会いから子どものころのレッスンの様子、ウィーン留学時代、ヨーロッパでの演奏会、歴史に名を残す偉大な音楽家との交流まで、いくら時間があっても足りないくらい興味深い話を聞くことができた。
 すでに何冊か単行本が出版されているため、深沢亮子に関してはその歩みが紹介され尽くしていると思うが、できることなら私も現在の様子を含めて何か書くことができないかなと考えてしまった。
 それほど、話題は尽きなかったからだ。
 後日、批評記事や資料などが郵便で送られてきて、達筆のお手紙が添えられていた。あまりにも達筆で、半分ほど読めない。今度、姉に読んでもらおう(笑)。
 今日の写真は、レッスン室での様子と子ども時代の表彰状。それからシューベルト時代に造られたというアンティークな家具。ウィーンから船便で送ったのだそうだ。これがすばらしい家具だった。上にはアウガルテンの陶器が飾ってあった。
 このインタビューは、次号の「音楽の友」に掲載される予定である。


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posted by 伊熊よし子 at 18:42 | マイ・フェイバリット・ピアニスト
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