ブログ

ホアキン・アチューカロのショパン

 昨夜のホアキン・アチューカロのリサイタルでは、冒頭のショパン「24の前奏曲」に関し、本人がステージでマイクを握り、「演奏に寄せて」というトークを披露した。
 その内容を紹介してみたい。

 ショパンの「24の前奏曲集」を24個の美しい小さな宝石たちと考える方がいらっしゃるかもしれませんが、私はこの作品を、それらが綿密に連関して崇高な価値を創り出している1つの大きな建造物だと思っております。
 ハ長調―イ短調―ト長調―ホ短調…と、平行短調を間に挟みながら5度ずつ上がっていく調構成で作られたこの美しい建造物において、私が、ショパンの唯一無二の天才性を感じるのは、愛、哀しみ、歓び、憤り、夢、恐怖、郷愁…といった、人間が感じ得るすべての感情が、ここに強烈に刻み込まれているという点であり、また、さらに驚くべきことに、各曲に投影された感情がそれぞれ、前後に連なる曲と大きく隔たりつつも連続していくという見事な構成なのです。
 この作品を、単に24曲の小品の連作集と捉えるのではなく、人間の感情のすべてが刻み付けられた、マーラーの交響曲にも匹敵する巨大な建造物として捉え、曲と曲の間にこそ描かれている感情の移ろいや隔たりにまでじっと耳を澄ませながら、日本のみなさまに、この壮大な旅をご一緒していただければと願っております。
 
 このことば通り、彼のショパンは24曲の全体を俯瞰し、それぞれの曲の個性を生かしながらも、ひとつひとつが有機的なつながりをもって演奏された。
 まさに大きな感情の流れが全編を支配し、最後のニ短調の曲が終わったときには、長い旅路が終わりを告げた感覚に陥った。それを味わうために、またCDを聴き直そうと思っている。
 
 
posted by 伊熊よし子 at 20:56 | クラシックを愛す

牛田智大

 牛田智大とはしばらく会っていなかったが、今日は約2年ぶりに会うことができた。このインタビューは、ヤマハのWEB「ピアニスト・ラウンジ」に書くことになっている。
 昨年、彼は浜松国際ピアノコンクールで第2位入賞に輝いたため、その話を中心に聞いた。
 久しぶりに会う牛田くんはとても雄弁で、ひとつひとつの質問に対して非常に長いセンテンスでじっくり話す。コンクールを受けようと思ったきっかけ、実際に参加して感じたこと、課題曲の選び方、ラウンドが進んでいくことに対する思い、各々の予選と本選で弾いた作品について、新曲に関して、入賞したときの感想などから、いま師事している先生のレッスン、今後のピアニストとしての歩みにいたるまで、さまざまなことを聞くことができた。
 牛田くんは、もう19歳。「くん」などと呼んでは悪いと思うが、デビュー当初から取材を続けている私は、急に「牛田さん」と呼ぶと、なんだか変な感じがしてしまう。
 長い時間、音楽の話が続いたあとに、最近飼うことになった猫の話に移り、ここからは表情が一変。チンチラシルバーのりおちゃんという雌で、まだ1歳にならないとか。りおちゃんの話をするときの牛田くんは、とても幸せそうな顔をしていた。
 なんでも、すり寄ってくる猫ではなく、飼い主に対して知らん顔しているタイプとか。その子を追いかけていくのだが、いつも逃げられるそうだ。
「今後はもっと演奏の質を上げたい」と真剣な表情で語っていた彼が、「りおはペットショップで僕の方も見ずに、向こうの方で知らん顔して寝ていた。そこがよかったんですけどね」というときとは、まったく異なる表情になる。猫ちゃんの引力は強いものなのね。
 今日の写真は、シリアスな面持ちでインタビューに答える牛田くん。もう1枚はピアノの前で。

y3288_R.JPG

y3289_R.JPG
 
 
 
posted by 伊熊よし子 at 22:34 | クラシックを愛す

2018年のインタビューは74人

 昨年はインタビューの仕事が多かった。
 これまでもっとも多い年で70人だったが、2018年はそれを超えて74人だった。もちろん複数回に渡って同じアーティストに話を聞くこともあり、弦楽四重奏団も含まれているため、実質的な数はもう少し少なくなる。
 だが、年間を通して、とても多くのアーティストに話を聞いたという思いが残る。
 私は批評を書くことよりも、インタビューや取材などジャーナリスティックな仕事の方が好きなのでこの数は気にならないが、そのなかで内容が充実し、成功したと思える仕事はいくつあるだろうか。
 そう考えると、仕事は量ではなく質だということがよくわかる。
 昨日は2019年の最初のインタビューがあった。「家庭画報」の連載の辻井伸行へのインタビューである。
 彼は2018年12月にパリでリサイタルを行った。その様子を聞き、また今年の抱負も語ってもらった。
 2019年も内外のコンサートの予定がびっしり組まれていて、新たな作品も披露するという。
 さて、年が明けたばかりだが、インタビューの予定が次々に入ってきている。今年もまたいろんなアーティストに話を聞き、それを楽しい記事にして紹介したいと思う。
 今日の写真は、インタビュー中の辻井さん。シックなスーツを着こなしていた。

y3279_R.JPG
 
posted by 伊熊よし子 at 21:08 | クラシックを愛す
CATEGORIES
ARCHIVES
LINKS
PROFILE
検索ボックス