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牛田智大

  9月に入り、ようやくコンサートが少しずつ動き出した。
  もちろん、聴き手も関係者もみなマスク着用、手洗い消毒、ソーシャルディスタンスを厳格に守ってということで、ホールはかなり人数制限が行われている。
  9月9日には銀座のヤマハホールで牛田智大ピアノ・リサイタルが開かれ、久しぶりに聴きに行くことになった。
  プログラムはJ.S.バッハ「イタリア協奏曲」からスタート。ゆったりしたテンポで、ひとつひとつの音をていねいに弾き込んでいく。
  その後はオール・ショパン・プロ。夜想曲第16番、ピアノ・ソナタ第2番「葬送」、ワルツ第5番、ポロネーズ第6番「英雄」が前半。後半は「3つのマズルカ」作品56、「幻想曲」、バラード第1番と続き、「舟歌」で締めくくった。
  牛田智大の演奏はデビュー当初から聴き続けているが、今回は大きな成長を遂げた彼の演奏を耳にすることができた。
  彼は近年、ワルシャワの先生に就いてショパン他をじっくり勉強している。
  今年のショパン国際ピアノ・コンクールは来年に延期となってしまったが、ぜひ来年はワルシャワの地で自信をもってショパンを披露してほしい。
  この公演評は、ヤマハ「ピアノの本」に書く予定になっている。
  今日の写真は、プログラムの裏表紙。

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posted by 伊熊よし子 at 22:20 | クラシックを愛す

三浦文彰&辻井伸行オンライン・サロンコンサート

  いま、辻井伸行のオンライン・サロンコンサートが毎週のように開催されているが、昨日はヴァイオリンの三浦文彰とのデュオ・リサイタルが初めて登場し、その収録に立ち会うことができた(MUSICASA  20:00開演)。
  プログラムはブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」と、フランクのヴァイオリン・ソナタの2曲。この作品はふたりが演奏を始めてから何度もいろんなホールで聴いているが、親密的な小ホールで聴く演奏はまた格別で、両者の息遣いまで聴こえるほどだった。
  こうしたライヴ収録の演奏をオンラインで発信していく方法は、いまや世界各地で行われている。ふだんナマの演奏を聴く機会に恵まれない人や、なかなかホールに足を運べない人も視聴することができ、今後も数が増えそうだ。
  三浦さんも辻井さんも、ライヴ発信ということで、かなり緊張したと話していた。
  アンコールはエルガーの「愛のあいさつ」と「真田丸」。当初よりふたりの息は完璧に合うようになり、曲の入りも、何の合図もせずに自然体でピタリと決まる。
  ヴァイオリンとピアノのデュオは、「ひとつの声にならないと聴き手の心に届く演奏にはならない」といわれる難しいジャンル。彼らはまさに「ひとつの声」になるよう、お互いの音を注意深く聴き、さらに自身の音も明確に主張し、音の融合を図っていった。 
  今日の写真は、コンサートの様子(提供avex)。

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posted by 伊熊よし子 at 17:46 | クラシックを愛す

ベートーヴェン「第九」4

  ベートーヴェンの「第九」というと、最後の合唱の部分だけを思い浮かべる人が圧倒的多数だと思うが、実はここにいたるまでのプロセスがとても大切である。
 「歓喜の歌」は絶望や悲劇との戦いの後に到達した世界。「第九」考察の最終回は、そんな作品の曲目紹介をしながら全楽章の内容を見ていきたい。
  これを通し、交響曲第9番の全体像を理解し、人生の縮図を作品全体から読み取っていただければ幸いである。
  そして、ぜひライヴか録音で全楽章に耳を傾けてほしいと思う。きっと深い感動が胸に押し寄せ、ベートーヴェンの真意が伝わってくると思うから…。

 [第1楽章]
  広大な宇宙を思わせる神秘的な力強い旋律が、壮大な交響曲の開始を告げる。これは人生の苦悩や悲しみ、希望やなぐさめなどあらゆる感情が表現されている楽章である。
  ベートーヴェンは自分の生涯を回顧し、人生を戦いにたとえたのではないだろうか。劇的で強いメッセージをもつ、幕開けにふさわしい音楽となっている。
  [第2楽章]
  弦の鋭角的な響きが全体に躍動感を与えている。また、ティンパニの小気味よいリズムも印象的だ。
  これは初演時に大きな喝采をもって迎えられた楽章。衝撃的なティンパニの独奏は、当時の人々を驚嘆させ、アンコールの拍手が鳴りやまなかった。魂が浄化するような美しさと、諧謔の精神が感じられる。
  [第3楽章]
  美しい緩徐楽章で、神への感謝を表すような深い祈りの気持ちが表現されている。やすらかな主題の変奏にはさまれた中間部が特に美しい。
  終わり近くのホルンの長いソロは、この時代としては画期的な用いられ方だった。歓喜を前にしたやすらぎを感じさせ、きたるべき何物かに心の準備を促すようだ。
 [第4楽章]
  プレスト(きわめて速く)のファンファーレから始まる。苦難の人生を振り返る前楽章の主題の回想からスタートし、有名な主題が静かに現れる。
  そしてバリトンによって「おお、友よ、もっと喜びにあふれた調べをうたおう」と明るく、力強くうたわれる。この部分はベートーヴェン自身による歌詞であり、次いでシラーの詩がおごそかに登場する。
  ベートーヴェンはこの詩のなかで特に「人々はみな兄弟となる」という箇所に共鳴したといわれる。ベートーヴェンはここで人類の理想、平和と喜びをうたい上げたかったに違いない。これは交響曲第5番「運命」にも共通している精神で、苦悩に立ち向かう人間が最終的に見出す本来の喜びを音によって表現している。
posted by 伊熊よし子 at 21:55 | クラシックを愛す
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