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フローリアン・ノアック

 新たな才能に出会えるのは、望外の喜びである。
 先日、1990年ブリュッセル生まれの若きピアニスト、フローリアン・ノアックにインタビューを行った。彼は「ある旅人のアルバム」をリリースしたばかり(キングインターナショナル)。
 このアルバムは、世界各地のさまざまな民俗音楽からインスピレーションを得た作曲家の作品で構成されている。ノアックは編曲家でもあり、いくつかの作品は超絶技巧を生かした編曲が施され、オーケストラ作品のような変貌を遂げたり、原曲のよさを生かしながらも異なる空気を孕む作品に変容したり…。
 ノアックは12歳からエリーザベト王妃音楽大学の天才児養成コースで学んでおり、その後さまざまな師から教えを受けている。
 いまは編曲家としても名が知られ、ベレゾフスキー、バシキーロフ、カツァリスから編曲作品の依頼があるという。
 音源を聴いたときは、ものすごくこだわりの強い「オタク」的な人なのかと思ったが、実際に会ってみると、実にフランクで人なつこく、どんな質問にもことばを尽くしてじっくり話してくれるナイスガイだった。
 このインタビューは「intoxicate」に書く予定になっている。

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 音楽に対する考えがとてもユニークで、話もおもしろく、とても感じがいい。編曲の話を詳しく聞いていたら、「いま書いているのは、これだよ」と楽譜を見せてくれた。
 その楽譜は見事なまでに美しく、整然とした音符が並んでおり、きれいな譜面に驚かされた。

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 今回の来日は1回のリサイタルだけで、なんと1泊の東京滞在。でも、インタビュー後の数時間は自由時間に当てるそうで、「これから福間洸太朗くんと遊びに行く」といっていた。次回はぜひ、ゆっくり滞在してほしいものだ。

 
 
posted by 伊熊よし子 at 22:09 | クラシックを愛す

辻彩奈&小林愛実

 アーティストのデビュー・アルバムや久しぶりの新譜のライナーノーツを書くことは、とても楽しい仕事である。
 最近書いた2枚のアルバムのライナーノーツは、事前にアーティストへのインタビューも行って彼女たちのレコーディングに対する思いも聞くことができたため、非常に意義深い内容となった。
 1枚は、2016年モントリオール国際音楽コンクールで第1位、併せて5つの特別賞を受賞したヴァイオリニストの辻彩奈のデビュー・アルバム「シベリウス:ヴァイオリン協奏曲」(ワーナー)。
 コンクールのライヴ収録で、サン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」、ストラヴィンスキーの「協奏的二重奏曲」というプログラムである。
 辻彩奈は1997年岐阜県生まれ。現在は、東京音楽大学に特別特待奨学生として在学中。凛とした涼やかな音色の持ち主で、性格も気風がいい。これからいかようにも伸びていく、将来性を感じさせるヴァイオリニストである。

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 もう1枚は、デビュー当時から交流のあるピアニストの小林愛実の「ニュー・ステージ〜リスト&ショパンを弾く」(ワーナー)。
 22歳になった彼女の心機一転のアルパムで、14歳のときから聴き続けている私は、アメリカに留学して精神的にも人間的にも大きく成長した姿を演奏から聴き取った。

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 いずれもインターナショナル契約の録音で、世界に飛翔するふたりの記念碑的なアルバムである。
 ライナーノーツを綴ると事前に音源が送られてくるため、何度も繰り返して演奏を聴くことになる。それゆえ、本盤が出来上がるころにはもう演奏がすっかり頭に入っていて、口ずさめるような感じになるから不思議だ。
 ふたりの目の前には大海原が広がっている。そこに果敢に漕ぎ出していく様子を見守りたい。
posted by 伊熊よし子 at 22:26 | クラシックを愛す

ルース・スレンチェンスカ

 今日はサントリーホールに、ルース・スレンチェンスカのピアノ・リサイタルを聴きに行った。
 彼女は1925年カリフォルニア生まれ。父親はポーランド出身のヴァイオリニストである。3歳のときにその父親からピアノを習う。やがてラフマニノフをはじめとする歴史に名を残す多くのピアニストに師事し、国際舞台で活躍。46歳からは教育の面でも活動を行った。
 93歳の現在も、現役ピアニストとしてステージに立ち、幅広いレパートリーを披露している。
 今夜のプログラムは、前半がショスタコーヴィチの24の前奏曲とフーガ 作品87-5 ニ長調、J.S.バッハの24の前奏曲とフーガ BWV850 ニ長調、ブラームスの3つの間奏曲 作品117、ブラームスの2つの狂詩曲 作品79。後半はベートーヴェンのピアノ・ソナタ第17番 作品31-2 ニ短調「テンペスト」、ラフマニノフの絵画的練習曲 作品33-7 変ホ長調、ショパンの練習曲 作品25-12 ハ短調。
 冒頭から、あたかも19世紀のピアニストが弾いているような馨しい香りを放ち、歴史的な奏法が横溢し、聴き手の心を一気に演奏に引き込んだ。
 各々の作品が長年弾き続けてきた練られたものだったが、とりわけショパンではえもいわれぬ気高さと情感が満ちあふれ、自然なルバートが際立っていた。
 終演後は、スタンディングオベーションとなり、拍手はいつまでも鳴りやまなかった。
 こんなピアニストがいるなんて、本当に驚きである。「幻のピアニスト」と称されているのもうなずける。
 明日はインタビューである。どんな話を聞くことができるだろうか、心が高揚する思いだ。
 今日の写真は、サイン会に臨むルース・スレンチェンスカ。長蛇の列だったから、大変だろうな。

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posted by 伊熊よし子 at 23:13 | クラシックを愛す
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