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セミヨン・ビシュコフ

 いま、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団が2018年10月に首席指揮者・音楽監督に就任したセミヨン・ビシュコフとともに日本ツアーを行っている(10月19日〜29日 全国8公演)。
  今日はマエストロ・ビシュコフを新聞記者、音楽雑誌編集者、フリーのジャーナリスト8人が囲み、懇親会を行った。
  ビシュコフにはかなり前にインタビューをしたことがあるが、今日もチェコ・フィルに関して、自身の音楽観についてことばを尽くして雄弁に語り、時間はあっというまに過ぎた。
  ビシュコフは世界各地の著名なオーケストラと仕事をしているが、チェコ・フィルとは特別な関係にあり、「今回は私の新しい恋人とともに日本にやってきた」と明言。同オーケストラへの熱い愛を表現した。
  チェコ・フィルは、創設124年の長い歴史と伝統を備えたオーケストラ。独特の音色をもち、私もプラハの本拠地、ルドルフィヌムで演奏を聴いたことがあるが、深々とした響きと特有の弦楽器の音色が胸に強い印象をもたらす。
  2017年に首席指揮者のイルジー・ピエロフラーヴェクが亡くなった後、オーケストラは全員がそろってビシュコフに音楽監督を依頼したのだという。
「私はある時期、ひとつのオーケストラのポジションを得るのではなく、フリーな立場でいろんなオーケストラの客演指揮を楽しんでいたのです。7年間そうした仕事を行っていました。ところが、チェコ・フィルとのコンサートを行った後、楽屋にいると、オーケストラ全員がドアの外に立っていました。第1コンサートマスターのスパチェクさんが、”マエストロ、あなたは私たちから一番いいところを引き出してくれます。ぜひ、首席指揮者・音楽監督になってください。私たちのパパになってほしいのです ”  こういわれました。私は突如120名の孤児の父親になってしまったわけですよ(笑)」
  ピエロフラーヴェクが築き上げたものを継承し、チェコ・フィルをよりよい方向に導く。オーケストラの願いに沿うべく、ビシュコフは即座にこのオーケストラとともに歩むことを決意したそうだ。
  今回の日本ツアーは、チャイコフスキー・プロジェクトの一環で、チャイコフスキーの交響曲とヴァイオリン協奏曲、スメタナの「我が祖国」がプログラムに組まれているが、ビシュコフとチェコ・フィルはデッカとチャイコフスキー・プロジェクトの録音も進めている。
「私はロシア出身ですから、チャイコフスキーの録音の話をデッカからいただいたときは、30秒で即決しましたよ(笑)。チャイコフスキーの音楽は、どんな時代、どんな民族、どんな世代の人をも感動させ、人の精神に影響をおよぼす不思議な力を有しています。チャイコフスキーは謎の死を遂げたことで知られますが、彼が最後に残した交響曲第6番《悲愴》は、その死に抗議しているような意味合いを感じます。けっして彼は死を受け入れたわけではないと思います。コーダの部分を注意深く聴いてください。その気持ちが理解できるはずです」
  今回は、「チェコ・フィルと私との一体感」を聴き取ってほしいと熱く語った。
  写真は、マエストロ・ビシュコフとチェコ・フィルのCEOデイヴィッド・マレチャク氏。

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posted by 伊熊よし子 at 23:09 | アーティスト・クローズアップ

アンドレイ・ググニン

  ロシアは昔からピアニストの層が厚いことで知られるが、現在も次々に個性的な実力派が国際舞台に登場してくる。
  先日、1987年生まれのアンドレイ・ググニンにインタビューをしたが、彼もロシアの次世代のピアノ界を担うひとりとして、注目されている。
  彼はショスタコーヴィチの「前奏曲&ピアノ・ソナタ集」のアルバムをリリースしたばかり(東京エムプラス、輸入盤)。そのひとつひとつの作品について、ゆったりとした口調で、ことばを選びながら話してくれた。
  このインタビューは、「レコード芸術」に書くことになっている。
  ググニンは、人が選ばないような珍しい作品を演奏したり、埋もれた作品を発掘したり、個性的なプログラムを組むことが好きなようだ。
  過激なまでのプログラム構成と、熱く深く洞察力に富むピアニズムを聴かせるタイプだが、素顔のググニンはとても感じのいいおだやかなキャラクター。でも、内に秘めた音楽への情熱はふつふつと燃えたぎっているようだった。
  今回のアルバムは、ピアノ・ソナタ第1番、第2番、24の前奏曲、夜想曲(バレエ音楽《明るい川》より)という選曲。24の前奏曲が聴きどころ満載だが、ご本人は、あまり演奏される機会に恵まれないソナタ第2番をぜひ聴いてほしいと話していた。
「このソナタは、長大でとても難しい作品ですが、これを録音することは大きな意義があると思うのです」
  ロシア・ピアニズムに根差した伝統的な奏法は、モスクワ音楽院で磨き上げた賜物だ。
  今日の写真は、インタビュー中のワンショット。物静かに、ひとつずつの質問をじっくり考えながら、ていねいに答える。

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posted by 伊熊よし子 at 23:31 | アーティスト・クローズアップ

ベアトリーチェ・ヴェネツィ

  女性が指揮者になるのは、21世紀の現在でも、とても険しい道である。
  しかし、イタリア出身の若手指揮者、ベアトリーチエ・ヴェネツィはその高い壁をホップ・ステップ・ジャンプという形で見事に乗り越え、現在はイタリア・プッチーニ音楽祭首席客演指揮者、エレバン・アルメニア国立交響楽団副指揮者、ナポリ・オーケストラ・スカルラッティ・ヤング首席指揮者を務めている。
  そんなヴェネツィが、7月12日・13日新日本フィルハーモニー交響楽団のルビー〈アフタヌーン・コンサート・シリーズ〉の指揮台に立った。
  プログラムは、ニーノ・ロータの組曲「道」より抜粋、ヒナステラのハープ協奏曲(ソロは吉野直子)、ファリャのバレエ音楽「三角帽子」全曲(ソロはメゾ・ソプラノの池田香織)という構成。
  ヴェネツィはたいていの女性指揮者がパンツスーツで登場するのに対し、ロングドレスで現れ、情熱的で躍動感あふれるタクトさばきを披露した。
  終演後、楽屋でインタビューを行った。
  オフステージでも、おしゃれなコットンのワンピースを着用し、「私は男性指揮者に負けまいと、自分を押し殺すようなことはしないの。あるがままの姿で指揮をしたい。だからドレスを着てステージに立つのよ」といっていた。
  ヴェネツィはプッチーニの生家のあるルッカ出身。私もルッカを訪ねたことがあるため、しばしプッチーニ談義となった。10月にはプッチーニのアルバムでデビューすることが決まっている(ワーナー)。
  彼女にとって、プッチーニはあこがれであり、尊敬の対象であり、彼の音楽は血となり肉となっているようだ。プッチーニの作品について語るとき、ヴェネツィの表情は明るく輝き、目の光が増すからだ。
  もちろん、女性が指揮者になることの難しさも十分に熟知しており、だからこそ頑張らなくてはならないと力を込めて語った。
  このインタビューは、「intoxicate」に書く予定になっている。
  実は、いまイタリアは文化的な予算が大幅に削られていて、クラシック音楽に関しても、オペラもオーケストラも存続が危ぶまれている危機的な状態だという。
「だからこそ、私は自分にできることは何でもやるの。私たちの世代が何とか道を拓いていかないと、ひどい状態になると思うわ。イタリアの音楽の伝統が失われてしまうことになりかねない」
  ヴェネツィは1990年生まれ。まだまだ若い指揮者である。しかし、現状を打破しようという気持ちはだれにも負けない。こういう人は、陰ながら応援したくなる。
  また、新譜がリリースされたときに、改めてその音楽について紹介したい。
  今日の写真は、インタビュー中のワンショット。話すときに顔の表情が幾重にも変化し、まるでオペラ歌手のようだ。

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posted by 伊熊よし子 at 22:53 | アーティスト・クローズアップ
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