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河村尚子

  ドイツ在住の河村尚子がリサイタルのために帰国し、新譜のためのインタビューも行った。
  ベートーヴェン生誕250年のメモリアルイヤーにリリースされるのは、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ集の第3作。「ハンマークラヴィーア&告別」である(ソニー 12月16日発売)。
  彼女にはデビュー以来何度も話を聞いているが、いつも前向きでおだやかで、録音に関しても率直に話してくれる。
  このインタビューは「CDジャーナル」に書く予定になっている。
  もちろん、ベートーヴェンに関して、選曲について、各曲の解釈や自身の取り組み方なども存分に聞いたが、コロナ禍のいま、どのように過ごしているかも聞くことができた。
  ドイツの状況、家族との過ごし方、そして音楽とのつきあい方など、多岐に渡る話を聞くことができ、記事は幅広い視点で綴りたいと思っている。
  いまは都会ではなく、静かな町に住んでいて庭が広く、果樹園のようにたくさんの果物が実っているそうだ。
  菜園にはじゃがいもやズッキーニなどが植えてあり、演奏会が少ないため、そうした畑仕事にも時間を割けるといっていた。
  河村尚子は昔から国際コンクールの参加者たちに「お母さん」と呼ばれて頼られるほど、堂々としていて、いわゆる面倒見のいいタイプだった。
  いまはすっかり母親としても貫禄がつき、何があっても動じないような懐の広さと自信を感じさせる。
  演奏もまた、「あるべきところに音がある」という確信に満ちたもの。「ハンマークラヴィーア」はかなり難しい作品だと語っていたが、その努力の痕跡は微塵も感じさせず、説得力のある演奏を披露している。
  今日の写真は、にこやかにいろんな話をしてくれた河村尚子。このワンピース、変わった色合いだと思ったら、ドイツ製だそうだ。日本ではなかなかこういう色の組み合わせはないよね。

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posted by 伊熊よし子 at 22:17 | アーティスト・クローズアップ

三浦謙司

  コロナ禍で延期になっていたロン・ティボー・クレスパン国際音楽コンクールのガラ・コンサートが9月7日に開催された(Bunkamura オーチャードホール)。
  2019年度は、ピアノ部門で日本人の三浦謙司が優勝の栄冠に輝き、務川慧悟が第2位入賞を獲得。コンクール史上初の日本人による第1位、第2位独占という快挙を成し遂げた。
  当日のコンサートは、コンクールで演奏した2曲のコンチェルト、サン=サーンスのピアノ協奏曲第5番(務川)、ショパンのピアノ協奏曲第2番(三浦)が奏され、次いでふたりによるモーツァルトの2台によるピアノのための協奏曲K.365が演奏された(広上淳一指揮、新日本フィル)
  務川慧悟の演奏は生き生きとした躍動感に満ち、前進するエネルギーに満ちている。緩急の表情にも創意工夫が感じられ、オーケストラとのコミュニケーションも密度が濃い。初めてナマの演奏に触れたが、聴き手を惹きつける魅力にあふれているため、ぜひリサイタルをじっくり聴いてみたいという気持ちに駆られた。
  三浦謙司のショパンは非常に端正で落ち着いた、自然体の演奏だった。気負いや気取りがいっさいなく、作品の内奥にひたすら迫っていく奏法で、ひとつひとつの音がていねいに紡ぎ出されていく。
  ふたりによるモーツァルトは、ソリストの個性の違いが立体的なデュオを作り出し、モーツァルトが意図した2台のピアノがオーケストラとともに一体となるという面を披露した。
  この公演評は、「公明新聞」に書く予定にしている。
  若きふたりのピアニストは、今後さらなる研鑽を積んで大きくはばたいていくのだろうが、ピアノ界に新風を巻き起こす存在になってほしいと願う。
  その翌日、三浦謙司にインタビューする機会に恵まれた。演奏の落ち着きと安定感とは裏腹に、かなりハードな人生を送ってきた人で、13歳で単身ロンドンに渡り、いまはベルリンで勉強を続けている。
「海外で演奏する場をもっと広げたい。ずっとヨーロッパで暮らして行きたい。将来は音楽大学の教授になって、欧米人の生徒に教える日本人となりたい」と、骨っぽい発言が印象的だった。
  人生に対して非常に真摯に考え、現実と向き合い、自分の存在を常に問いただし、音楽家としての道を模索している彼は、若手ピアニストとしては珍しいタイプ。一時期、音楽を離れて日本に帰国し、一般的な仕事や肉体的にきついアルバイトをこなし、自身を見つめ直したそうだ。
  2021年度にはワーナーからデビューCDがリリースされる予定で、いま選曲を練っている最中だという。このインタビューは、録音のリリースが決まった時点で「intoxicate」に書くことになっている。
  今日の写真は、インタビュー後の三浦謙司のワンショット。

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posted by 伊熊よし子 at 14:57 | アーティスト・クローズアップ

笹沼樹

 「音楽の友」で連載している「マリアージュなこの1本」には、毎月さまざまな個性的なアーティストが登場している。
  次号は若きチェリスト、笹沼樹である。
  彼はソロ、室内楽、オーケストラの活動を3本柱と考え、いずれも大切な演奏としてとらえている。
  室内楽に関しては、クァルテット・アマービレという弦楽四重奏団を組み、2016年に難関のミュンヘン国際音楽コンクールで第3位入賞を果たしている。
  今回は、行きつけのホテルの鉄板焼きのお店で、ホテル側が用意してくれたすばらしいワインとともにお肉料理を楽しむところを撮影することができた。
  アーティストは食通が多い。
  この連載ページでは、みなさんがいろんな食べ物とのつながりや、お酒を巡る話をしてくれるが、やはり音楽家は体力が基本ゆえ、たくさん召し上がるようだ。
  笹沼樹は190センチを超す長身。チェロが小さく見えるほどで、「よく、小ぶりのチェロですかと聞かれるんですが、通常の大きさの楽器です」と笑っていた。
  今日の写真は、鉄板焼きが供されるところと、チェロを抱えたところの2枚。

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posted by 伊熊よし子 at 23:14 | アーティスト・クローズアップ
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