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ユッセン兄弟

  2010年、ピリスの秘蔵っ子としてCDデビューしたオランダのユッセン兄弟(ルーカス&アルトゥール)が、9年を経てすっかり成長し、青年のピアニストとして来日を果たした。
  今日は、3年半ぶりに彼らにインタビューをするため、レコード会社に出かけた。
  若きピアニストたちは身長も伸び、表情もプロのピアニストとしての雰囲気をまとい、国際舞台で演奏している自信がみなぎっていた。
  つい先ごろリリースされたのは、「バッハ:2台のピアノのための協奏曲第1番・第2番」(ユニバーサル)。アムステルダム・シンフォニエッタとの共演で、コンチェルトのほかにバッハのカンタータなどの編曲版が収録されている。
  ふたりは、「いまだからこそバッハを録音したいと思った」とのことで、バッハに対する思い、作品の解釈、録音時の様子などを雄弁に語ってくれた。
  以前は両親と一緒に住んでいたが、現在はアムステルダムの同じアパート(マンション)の違う部屋に住み、各々の独立した生活を満喫しているそうだ。
「ピアニストは孤独だといわれるけど、僕たちは2台ピアノの演奏が多いため、いつも一緒に演奏旅行に出られる。だから、お互いの自由を尊重しながらも、常に行動を共にすることができるため、孤独になることはなくて幸せなんだよね」
  このふたり、性格も音楽性もかなり異なる。それが喧嘩にならず、仲がいいことにつながっているようだ。
「僕たちは演奏に対するアプローチも表現もすごく違っていると思う。もちろん、性格的にもすごく違っていると思う。だからこそ、バランスをとろうと心がけているんだ」
  ふたりとも、バッハへの思いを熱く語ってくれたが、その根底に流れる作品への深き想いは共通していた。
  このインタビューは、次号の「intoxicate」に書く予定になっている。
  実は、インタビュー前に再会を喜び合っていたら、ルーカスが私のピアスに目を止めて、「それ、いい色だねえ。えっ、ネックレスもそろいなの。ウーン、いいねえ、すごく素敵だよー」とほめてくれた。
  そこで私が「これ、ラピスラズリなの、フェルメール・ブルーの」というと、オランダ人の彼は、「あっ、そうなんだ。いやあ、いい色だなあと思って、すごく似合うよ」といってくれた。
  ヨーロッパの男性というのは、幼いころからずっと女性をほめるということを学んでいるのだろうか。それが礼儀だと思っているのかもしれない。
  以前も、ギターのミロシュにワンピースをほめられたことがあった。
  日本の男性は、女性に面と向かって洋服やアクセサリーをほめることはあまりない。ヨーロッパの男性は、ごく自然にそうしたことを口にする。これも文化や習慣やメンタルの違いなんだろうな。
  今日の写真は、笑いの絶えなかったインタビュー後のルーカス(右・兄)とアルトゥール(左・弟)の表情。
  もう1枚は、ラピスラズリのネックレスとピアス。フェルメールの時代は、アフガニスタンのほぼ限られた場所でしか採掘されなかったといわれている。

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posted by 伊熊よし子 at 22:59 | アーティスト・クローズアップ

アンドレス・オロスコ=エストラーダ

  一時期、若手指揮者が育たず、ベテランや巨匠と呼ばれる指揮者がクラシック界をリードしていたが、近年は各地から才能豊かな若手指揮者が次々に国際舞台に登場し、活況を呈している。
  いま、「ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン2019」で来日しているアンドレス・オロスコ=エストラーダもそのひとり。
  オロスコ=エストラーダは1977年コロンビア生まれ。ウィーン国立音楽大学で学び、その後ヨーロッパ、アメリカの名だたるオーケストラの首席指揮者を歴任。2020/2021シーズンからウィーン交響楽団の首席指揮者を務める。
  そんな若きマエストロにインタビューをすることができた。
  各地の異なる個性を備えたオーケストラを振ることの難しさ、コロンビアで過ごした子ども時代の音楽とのかかわり方、ウィーン留学時代からプロの指揮者として活躍する現代までのことなど、幅広く聞いた。
  オロスコ=エストラーダは、ものすごくエネルギッシュな話し方をする人。ずっと手を動かしながら早口でどんどん話を進めていく。
  ただし、その内容は非常に理路整然として、わかりやすい。しかも、ユーモアたっぷりである。
  話にぐんぐん相手を引き付けていくタイプで、オーケストラのメンバーにもこういう態度で接しているんだろうな、と思わせる。きっと、みんなに好かれるキャラクターなのだろうう。
  それがさまざまなオーケストラからオファーされる理由かもしれない。
「コロンビア人は、リスクを恐れないんだ。楽な人生は選ばない。ちょっとやそっとの困難にはめげず、果敢に挑戦していく気質なんだよ」
  このインタビューは、「音楽の友」他に書く予定になっている。
 インタビューが終わったとき、「僕の話、こんな内容で大丈夫? またいろいろ聞きたいことがあったら、いつでも話を聞きにきてね」といわれた。こんなことをいってくれる指揮者はなかなかいない。本当にナイスガイだ。
  もちろん、記事は音楽のことを中心に書くことになるが、それ以外の話もたくさん聞くことができた。
  たとえば、大好きなのはチョコレート。それもビターなチョコではなく、ミルクチョコの方がいいとか。
「一番好きなのは、マカデミアナッツの入ったチョコレートなんだ。もうこれに目がなくて…」
  そこで私が「マエストロがマカデミアナッツ入りのチョコが好きだと記事に書くと、きっと次は楽屋にそのチョコレートが山ほど届きますよ」というと、こんな答えが戻ってきた。
 「あっ、僕ね、そういうの断らない主義なんで。どうぞどうぞ、書いて書いて」  
  これには、居合わせた全員が大爆笑。最初から最後まで、とても正直で楽しい性格を示してくれた。
  まだまだ指揮者としては若手。でも、オペラでもシンフォニーでも引っ張りだこの人気指揮者である。とても前向きでリスクを恐れないこの精神は、きっとこれからガンガンスター街道を突っ走っていくに違いない。次回の来日情報も、情報解禁になったら、すぐに紹介したいと思う。
  11月13日には、ウィーン・フィルの演奏を聴きに行く予定である。
  今日の写真は、インタビュー後の2枚。黒一色で決め、スニーカーも黒だった。

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posted by 伊熊よし子 at 23:35 | アーティスト・クローズアップ

セミヨン・ビシュコフ

 いま、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団が2018年10月に首席指揮者・音楽監督に就任したセミヨン・ビシュコフとともに日本ツアーを行っている(10月19日〜29日 全国8公演)。
  今日はマエストロ・ビシュコフを新聞記者、音楽雑誌編集者、フリーのジャーナリスト8人が囲み、懇親会を行った。
  ビシュコフにはかなり前にインタビューをしたことがあるが、今日もチェコ・フィルに関して、自身の音楽観についてことばを尽くして雄弁に語り、時間はあっというまに過ぎた。
  ビシュコフは世界各地の著名なオーケストラと仕事をしているが、チェコ・フィルとは特別な関係にあり、「今回は私の新しい恋人とともに日本にやってきた」と明言。同オーケストラへの熱い愛を表現した。
  チェコ・フィルは、創設124年の長い歴史と伝統を備えたオーケストラ。独特の音色をもち、私もプラハの本拠地、ルドルフィヌムで演奏を聴いたことがあるが、深々とした響きと特有の弦楽器の音色が胸に強い印象をもたらす。
  2017年に首席指揮者のイルジー・ピエロフラーヴェクが亡くなった後、オーケストラは全員がそろってビシュコフに音楽監督を依頼したのだという。
「私はある時期、ひとつのオーケストラのポジションを得るのではなく、フリーな立場でいろんなオーケストラの客演指揮を楽しんでいたのです。7年間そうした仕事を行っていました。ところが、チェコ・フィルとのコンサートを行った後、楽屋にいると、オーケストラ全員がドアの外に立っていました。第1コンサートマスターのスパチェクさんが、”マエストロ、あなたは私たちから一番いいところを引き出してくれます。ぜひ、首席指揮者・音楽監督になってください。私たちのパパになってほしいのです ”  こういわれました。私は突如120名の孤児の父親になってしまったわけですよ(笑)」
  ピエロフラーヴェクが築き上げたものを継承し、チェコ・フィルをよりよい方向に導く。オーケストラの願いに沿うべく、ビシュコフは即座にこのオーケストラとともに歩むことを決意したそうだ。
  今回の日本ツアーは、チャイコフスキー・プロジェクトの一環で、チャイコフスキーの交響曲とヴァイオリン協奏曲、スメタナの「我が祖国」がプログラムに組まれているが、ビシュコフとチェコ・フィルはデッカとチャイコフスキー・プロジェクトの録音も進めている。
「私はロシア出身ですから、チャイコフスキーの録音の話をデッカからいただいたときは、30秒で即決しましたよ(笑)。チャイコフスキーの音楽は、どんな時代、どんな民族、どんな世代の人をも感動させ、人の精神に影響をおよぼす不思議な力を有しています。チャイコフスキーは謎の死を遂げたことで知られますが、彼が最後に残した交響曲第6番《悲愴》は、その死に抗議しているような意味合いを感じます。けっして彼は死を受け入れたわけではないと思います。コーダの部分を注意深く聴いてください。その気持ちが理解できるはずです」
  今回は、「チェコ・フィルと私との一体感」を聴き取ってほしいと熱く語った。
  写真は、マエストロ・ビシュコフとチェコ・フィルのCEOデイヴィッド・マレチャク氏。

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posted by 伊熊よし子 at 23:09 | アーティスト・クローズアップ
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