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藤田真央

 若きピアニスト藤田真央は、以前から注目しているアーティストである。
 今日はヤマハホールでリサイタルがあり、14時からの公演に出かけた。
 プログラムは、前半がモーツァルトの幻想曲ニ短調K.397、「デュポールのメヌエットの主題による9つの変奏曲」、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第31番。
 後半はシューベルトの3つのピアノ曲D.946、「さすらい人幻想曲」。
 まず、モーツァルトからゆったりとしたテンポの情感あふれる美しい音色が全開。近年、若手ピアニストはテクニックを前面に押し出し、スポーツカーのように疾走する演奏が多いが、藤田真央の演奏は実におだやかで、ひとつひとつの音が非常にクリアに聴き手のもとに届けられる。
 ヤマハホールは木造のやわらかい響きが特徴で、333席のぜいたくな空間で聴くと、ピアニストの息遣いまで聴こえくるようだ。
 藤田真央は、2017年のクララ・ハスキル国際ピアノ・コンクールで優勝の栄冠に輝いた。同コンクールの優勝者はみな柔軟性に富む美しい音色の持ち主で、音楽に対する熱き思いをけっして声高には表現せず、抒情的で内省的な演奏を特徴とする。
 クララ・ハスキルがモーツァルトを得意としたから、藤田真央もコンクールでモーツァルトを演奏したに違いない。今日のモーツァルトは、とても心に響き、幸せな気持ちにさせてくれた。
 ベートーヴェンは特に第3楽章のフーガが歌心に満ち、楽器を大きく豊かに鳴らす奏法が印象に残った。
 後半のシューベルトは、いまの藤田真央の心身の充実を示しているよう。彼はリートをうたうように旋律をたっぷりとうたい上げ、明るく晴朗な「3つのピアノ曲」で自身の歌を朗々と奏でた。
「さすらい人幻想曲」では、マレイ・ペライアが初来日したころの演奏を思い出した。作品に関してではなく、その奏法と解釈、聴き手に与える印象においてである。
 ペライアのような息の長いピアニストになってほしいと思う。
 今日の公演評は、「公明新聞」に書く予定である。 
posted by 伊熊よし子 at 23:25 | アーティスト・クローズアップ

マルティン・シュタットフェルト

 マルティン・シュタットフェルトに初めてインタビューをしたのは、2005年8月、シュトゥットガルトでのことだった。
 前年、ヨーロッパでリリースされたJ.S.バッハ「ゴルトベルク変奏曲」がセンセーションを巻き起こし、日本でも大きな話題となっていた。
 ドイツでのインタビューは、コンサート会場の近くで行われ、シュタットフェルトは演奏と同様にあるリズム感を伴って颯爽と現れた。
 あれから13年、彼は何度も来日し、そのつど新たな面を示してきた。
 シュタットフェルトはもちろんバッハ以外の作品も演奏しているが、新譜は「バッハへのオマージュ」と題した「シャコンヌ」のピアノ用編曲と、自作の「バッハへのオマージュ〜ピアノのための12の小品」(ソニー)。その話を聞きに、すみだトリフォニーホールに出かけた。
 今回のリサイタルでは(11月25日すみだトリフォニーホール)、バッハと自作とショパンの24の練習曲集(シュタットフェルトによる即興演奏挿む)がプログラムに組まれている。
 インタビューでは、新譜の編曲と自作の話題が中心となり、やはりバッハに始まり、バッハに終わった。
 このインタビューは次号の「intoxicate」に書く予定である。
 シュタットフェルトは、自身の進む道を迷わず、道草もせず、まっすぐに進んでいる。近年は作・編曲にも力を入れ、「自分の本当に弾きたいものを弾く」という姿勢を明快に打ち出している。
 彼はとても思慮深く、静かにおだやかに話す。ここがもっとも変貌した点で、最初に会ったころは、話も「ゴルトベルク変奏曲」の演奏の疾走するイメージと重なり合うようなスピード感にあふれ、エネルギッシュでリズミカルで、ある種のとんがった感じを抱いたものだ。
 しかし、現在はひとつの質問にじっくり考えを巡らし、ゆったりとことばを選びながら話す。
 ひとりのアーティストをデビュー当初から聴き続け、取材し続けると、その人間性と音楽性の変容が理解できて興味深いが、シュタットフェルトの場合もしかり。音楽の熟成と同様、人間性も成熟してきたことがわかる。ただし、バッハに対する一途な思いは変わらぬままだ。
 今日の写真は、静けさあふれる表情のマルティン・シュタットフェルト。

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posted by 伊熊よし子 at 23:59 | アーティスト・クローズアップ

ケニー・ブロバーグ

 アメリカのピアニスト、ケニー・ブロバーグは、第15回ヴァン・クライバーン国際コンクールにおいて第2位に輝いた新星だ。
 11月17日に横浜みなとみらいホール(小ホール)で開催された第37回横浜市招待国際ピアノ演奏会に出演するため、初来日を果たした。
 昨日はそのブロバーグにインタビューをするため、みなとみらいホールに出かけた。
 彼は今回のコンサートでは、J.S.バッハ:トッカータ ハ短調BWV911とバーバーのピアノ・ソナタ変ホ短調作品26を演奏している。
 インタビューでは、この選曲に関して、クライバーン・コンクールのときの様子、入賞について、子ども時代からのピアノとの拘わりなど、さまざまな質問を試みた。
 よく、兄弟姉妹が楽器を習う場合、上の子が始めた楽器を下の子がまねして弾いているうちに大好きになるというケースが多いが、ブロバーグの場合も、4歳上のお兄さんがピアノを始めたので自分も弾くようになったそうだ。
 もっとも興味深かったのは、バッハの話。バッハに関して質問したら、「その質問、ぼくにとってはすごく大切なこと。よく聞いてくれました。たくさん話すことがあるんですよ」と、一気に雄弁になった。
 このインタビューは、ヤマハWEB「ピアニスト・ラウンジ」に書く予定になっている。バッハの奏法に関して、彼が熱く語ってくれたことを綴りたいと思う。
 今日の写真は、みなとみらいホールのレセプションルームでピアノを弾くブロバーグ、サイトの読者のためにメッセージを書いているところ、そして私のブログ用に写した1枚。この部屋からは海が一望でき、とても開放感に満ちている。

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posted by 伊熊よし子 at 21:26 | アーティスト・クローズアップ
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