ブログ

ピョートル・アンデルシェフスキ

 今春は、実力と人気を兼ね備えたピアニストの来日が相次いでいる。
 今日は、ピョートル・アンデルシェフスキのインタビューのため、レコード会社に出かけた。
 アンデルシェフスキには何度かインタビューを行っているが、質問を吟味しないと、なかなかいい答えを引き出すことができない難しいアーティストである。だが、興味のある話題になると、一気に雄弁になる。
 今回は「intoxicate」と私のHPの「音楽を語ろうよ」と、新聞などに記事を書き分けするため、あらゆる方面からの質問を試みた。
 以前、彼は子ども時代のことを聞くと、練習嫌いだったことをおもしろおかしく語ってくれたため、それがとても印象に残っていた。今回も、子ども時代のこと、師事した先生の教え、リーズ国際コンクールを受けたときのこと、バッハとの邂逅、そして新譜のモーツァルトのピアノ協奏曲第25番、第27番(ワーナー)に関することまで、さまざまなことを語ってもらった。
 アンデルシェフスキは、このモーツァルトでヨーロッパ室内管弦楽団を弾き振りしている。その指揮も、彼らしく、完璧主義を目指すために行っていることがわかった。
 モーツァルトのピアノ協奏曲の録音は、もっと続けていきたいという。
「でも、昨今の録音事情はとてもきびしく、なかなか希望通りにはいかない。でも、あと1枚は作りたいんだよね」といっていた。
 アンデルシェフスキは、最近J.S.バッハの演奏を集中的に行っている。実は、以前のインタビューで、「イギリス組曲」を弾こうと思っていると話したため、私が「イギリス組曲は第3番がものすごく好きなんです。ぜひ、第3番を弾いてください」というと、ニヤッと笑って「じゃ、第3番はやめようっと」といった。
 ところが、来日公演でも、録音でも、第3番がしっかり入っていた。
「あのとき、第3番はやめようといっていたのに、演奏してくれましたよね」
「そんなこといったっけ。あれから第3番はいろんなところで弾いているよ。もうすぐヨーロッパ公演でも弾くよ。聴きにきたら」
 これだもんね。なんとも、シニカルというか、ブラックジョークが好きというか…。そういいながら、またニヤッと笑っていた。
 今日のインタビューで、また新たなアンデルシェフスキの側面がのぞいた。録音に関する姿勢である。ソロの場合は、完璧を目指して何度もテイクを録り直すことは可能だが、オーケストラとの共演では、限りがある。それとうまく折り合いを付けなければならないことを学んだそうだ。
 今日の写真は、ボソボソとシャイな表情で話すアンデルシェフスキ。
 でも、11歳から師事した2番目の先生に、あまりにも練習してこないため「きみはもうピアノをやめなさい!」といわれたという話のときは、自虐的な笑いを見せた。その話に反応して、私が「ギャーッ」と大笑いしたため、それに合わせて彼自身もケラケラ笑っていた。
 そのいきさつは、記事でじっくり紹介したいと思う。

y2102_R.JPG
 
posted by 伊熊よし子 at 23:01 | アーティスト・クローズアップ

吉野直子

 ハーピストの吉野直子とは、長年のおつきあいである。以前、彼女の実家のすぐ近くに住んでいたため、いわゆるご近所同士だった。
 今日は、久しぶりにインタビューを行い、旧交を温める形となった。
 吉野直子の新譜は、自主レーベル《grazioso》第3弾の「ハープ・リサイタル3」。ハープのオリジナル作品が少ないドイツとオーストリアの大作曲家たちによる、ピアノやヴァイオリンの作品を取り上げている。
 シューマン、シューベルト、モーツァルト、メンデルスゾーン、ブラームス、J.S.バッハで構成されているが、これまで聴き慣れた作品が新たな魅力を放っている。
 その選曲、各々の作品にまつわる思い出、作品の解釈や表現、ハープで演奏することの意義などを聞き、今後のスケジュールや豊富なども伺った。
 こうしてハープの話を聞いていると、私が独立した直後にインタビューをしたときのことが思い出される。彼女はハープの可能性を探求し、ハープにはさまざまな音色があり、いろんなことができるのだということを知ってほしい、ハープの魅力をより多くの人に広めたいと語っていた。
 その考えは、いまも変わらないという。
 ただし、現在はひとつひとつのことを深めていきたいと、穏やかな口調ながら、熱く真摯に語った。
 今日の写真はインタビュー中のワンショットと、ハープと一緒の1枚。このインタビューは、次号の「intoxicate」に掲載される予定である。

y2087_R.JPG

y2086_R.JPG
posted by 伊熊よし子 at 23:08 | アーティスト・クローズアップ

カルテット・アロド

フランスからはモディリアーニ弦楽四重奏団、エベーヌ弦楽四重奏団をはじめ、若手カルテットが次々に国際舞台へと出現してくる。
 2013年に結成され、翌年から次々に国際コンクールで第1位を成し遂げ、2016年ミュンヘン国際音楽コンクールで優勝の栄冠に輝いたカルテット・アロドもそのひとつ。ミュンヘン・コンクールは、どの部門もなかなか第1位を出さないことで知られる難関のコンクールである。
 メンバーはジョルダン・ヴィクトリア(ヴァイオリン)、アレクサンドル・ヴ(ヴァイオリン)、コランタン・アパレイー(ヴィオラ)、サミー・ラシド(チェロ)。グループ名の「アロド」とは、「ロード・オブ・ザ・リング」に登場する馬の名前だそうだ。
 彼らが4年前に出会ったときに初めて一緒に演奏したのが、メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第2番イ短調作品13。それゆえ、デビュー録音ではメンデルスゾーンを収録するのは当然のことに思えたという。
 デビューCD「メンデルスゾーン」(ワーナー)は、弦楽四重奏曲第4番ホ短調作品44-2、弦楽四重奏の4つの小品作品81、メゾ・ソプラノのマリアンヌ・クレバッサをゲストに迎えた「12の歌」作品9-1「問い」が収録されている。
 弦楽四重奏曲が大好きな私は、カルテット・アロドの録音を初めて聴いたときから、強く惹かれるものを感じた。彼らの演奏は各々の主張が強く、4人とも自身の音楽を確固たる姿勢で貫いているが、そのなかで4つの弦楽器がときにお互いの音に寄り添い、融合し、あるときは断固として主張を貫いている。
 もちろん、聴こえてくるのは弦の音色だが、あたかもオペラの四重唱を聴いているような感覚を抱き、心が高揚していく。
 先日、初来日のカルテット・アロドにインタビューを行い、昨日は王子ホールに演奏を聴きにいった。インタビューのときは、ヴィオラのコランタンが体調を崩して参加できず3人だったが、音楽を始めたときの話、グルーブを結成したときのこと、メンデルスゾーンの作品とのかかわり、各々の子ども時代のことや家族のこと、ミュンヘン・コンクール後の活動に関してなど、幅広い話を聞くことができた。
 このインタビューは、「日経新聞」と私のHP「音楽を語ろうよ」に書く予定である。
 昨日のコンサートは、前半がモーツァルトの弦楽四重奏曲第15番ニ短調K.421から始まり、現代フランスの作曲家バンジャマン・アタイールの{弦楽四重奏のための《アスル》(午後の礼拝)」(カルテット・アロドのために2017年に書かれた作品)が演奏された。
 後半は、いよいよメンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第2番の登場。まさしく手の内に入った自家薬籠中の作品で、みずみずしいアンサンブル、4つの弦の見事な融合を聴かせ、圧倒的な存在感を放った。
 彼らはこの作品こそ自分たちのすべてを表現することができるもので、いずれのコンクールでも演奏してきたそうだ。その代名詞的な作品を演奏する4人は、他の作品とは異なり、大いなる自信がみなぎっていた。
 今日の写真は、インタビュー時の3人と、昨夜のコンサート後にサイン会の準備をしている4人。

y2004_R.JPG

y2006_R.JPG
 
posted by 伊熊よし子 at 22:51 | アーティスト・クローズアップ
CATEGORIES
ARCHIVES
LINKS
PROFILE
検索ボックス