2024年04月01日
アレクサンドル・メルニコフ
ロシア出身のピアニスト、アレクサンドル・メルニコフには、何年も前に「プラハの春」音楽祭の取材に行ったときに、現地でインタビューをしたことがある。
このときは、ワディム・レーピンとのデュオで音楽祭に参加していた。
しかし、インタビューに現れたメルニコフは終始うつむき加減で、ほとんど質問にも答えず、それもボソボソした小さな声ゆえ、ちっとも内容がわからず、苦労したものだ。
ところがその後メルニコフは徐々に実力を発揮し、イザベル・ファウストやジャン=ギアン・ケラスとの室内楽も高い評価を得るようになり、一気に才能を開花させた。
先日、久しぶりに会ったメルニコフにプラハの話をすると、「えーっ、そうだっけ。いつの話? そうか、そのころはあまりしゃべらなかったよね。でも、いまはもう大丈夫。何でも聞いて」といって、笑っていた。
彼は次々に録音をリリースしていて、ピアノ、チェンバロ、フォルテピアノを弾き分けたアルバムもリリース(キングインターナショナル)。リサイタルでも、これらの楽器を並べて行い、さまざまな時代の作品を演奏している。
「私は自宅にいろんな楽器を置いているため、奏法の違いなど、すべてを把握しているから大丈夫。でも、コレクターとは呼ばれたくないんだよね。実際に弾いてみたいから楽器を集めているだけで、コレクターではないんだよ」
と、ずいぶんこだわっていた。
インタビューには文字通り、目いっぱい話してくれ、その内容のおもしろいことといったら…。本当に、人は変わるものなのね。もっとも驚いたのは、趣味で飛行機の操縦のライセンスを取得したとのこと。ヨーロッパの資格だそうで、ただし、航空会社からはまだおふぁーがないそうだ。
「飛行機の操縦仲間はダニエル・ハーディング。彼はエールフランスに勤務してパイロットになり、実際に操縦しているんだよ」
この話は延々と続き、時間がきてもまだ話足りないようだった。
なんとも、ユニークな趣味である。このインタビューは、「音楽の友」に書く予定になっている。ただし、飛行機操縦ライセンスの件は、ほんの少ししか触れられないと思う。
今日の写真は、ホールの楽屋でのひとこま。「ふだん着できちゃったけど、ジャケット着た方がいいかな」といって、皮ジャンを羽織ってくれた。
posted by 伊熊よし子 at 23:19
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