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クリスチャン・ツィメルマン

 12月8日、サントリーホールにクリスチャン・ツィメルマンのピアノ・リサイタルを聴きに行った。
 近年、ツィメルマンは演奏プログラムを事前にすべて発表することは少なく、この日も前半のシューベルト:4つの即興曲Op.90は決まっていたものの、後半はプレリュード&Co(その仲間たち)となっていた。
 当日、「今日のプログラム」として発表されたのは、前半のシューベルトにドビュッシーの「アラベスク第1番」と「月の光」が加わり、後半はショパン、ラフマニノフ、スクリャービン、シューマンをはじめとする「前奏曲」が16曲記されていた。
 最近のツィメルマンは、このように企画もので演奏することが多い。そして以前のような集中力に富んだ圧巻のピアニズムを披露するというより、内省的で思索的で自己との対話を行っているような、一種の哲学的な演奏に変容してきている。
 ショパン・コンクール優勝直後から演奏を聴き続けていると、その変化は彼の人生の変化と連動しているのではないかと思えてくる。
 以前は、インタビューなどでもユーモアたっぷりの非常に楽しい取材が続いたが、あるときからインタビューにはあまり応じなくなり、最近はじかに話を聞く機会もなくなってしまった。非常に残念である。
 ひとりの音楽家をデビュー当初から聴き続けていると、その人生の変化が如実に演奏に現われる。それを聴く私も、聴き方が変わってくる。今回も、ツィメルマンの「前奏曲」を聴きながら、さまざまな思いが脳裏に浮かんできた。この公演評は、「モーストリー・クラシック」に書く予定である。
 
 
posted by 伊熊よし子 at 21:50 | 日々つづれ織り

河野智美

 11月22日、王子ホールで河野智美のギター・リサイタルが行われた。
 プログラムは、私の大好きなバリオスの「大聖堂」からスタート。何度聴いても、いつ聴いても、この作品は心の奥にしっとりと響いてくる。 
 次いでJ.S.バッハ(河野智美編)「リュート組曲(パルティータ)」、サンス「エスパニョレッタ」、サンス/J.ロドリーゴ「カナリオス」、レノン=マッカートニー(セルシェル編)「イン・マイ・ライフ」、佐藤弘和「青空の向こうに」、坂本龍一(佐藤弘和編)「戦場のメリークリスマス」と続き、前半は終了。
 いずれもこだわりのプログラム構成で、河野智美の情感豊かで静謐で、細部まで神経の研ぎ澄まされたギターの音色が親密的なホールの空間に響き、聴衆は集中力をもって聴き込んでいた。
 後半は、以前「ぶらあぼ」のインタビューで彼女が語っていたフレデリック・ハンドの「ファンタジー」が演奏された。これは委嘱献呈作品で、全編にバッハの精神を感じさせる作品。プログラムにはハンドのことばが掲載されていた。そしてハンドがバッハに捧げた「祈り」が演奏され、河野智美のこの作曲家に対する敬愛の念と親愛の情が色濃く映し出されていた。
 ここからは福田進一が参加し、ラモー(福田進一編)「ミューズたちの対話」、ソル(コスト編)「幻想曲」でデュオが披露された。
 まさに2曲ともギター・デュオの醍醐味で、2台のギターがときに雄弁な対話を繰り広げ、またあるときは感情をぶつけ合うような響きも醸し出し、さらにやわらかく優しくささやきあったりして、実に豊かな色合いを描き出した。
 これで終わりかと思った人が多いと思うが、ここにサプライズゲストの荘村清志が登場。ヴィヴァルディ「アンダンテ」、永島志基編「愛のロマンス」がギタートリオで演奏され、拍手喝采となった。
 久しぶりに聴いたギターの調べで、心のなかが浄化されたような感覚を抱いた。
 今日の写真は、絶妙のトークも披露してくれた巨匠ふたりに挟まれた河野智美。ムジカキアラ提供。

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posted by 伊熊よし子 at 23:44 | 日々つづれ織り

ウィーン・フィル

 今日は「ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン 2025」の最終日にあたり、サントリーホールでCプログラムが披露された。
 前半は、シューベルトの交響曲第7番「未完成」。これが心に響く印象的な演奏で、これまで何度もいろんなオーケストラで「未完成」を聴いてきたが、ウィーン・フィルが演奏するとすこぶる上質で繊細で詩的なシューベルトが生み出され、指揮のクリスティアン・ティーレマンのこまやかなタクトに見入ってしまった。
 とりわけチェロの弱音の響きがすばらしく、木管も音量を抑制し、すべてがシューベルトの歌心あふれる旋律を馨しく奏でていた。
 後半は、ウィーン・フィルといえばシュトラウスU世のワルツだといわんばかりのプログラムで、オペレッタ「ジプシー男爵」序曲からスタートし、ヘルメスベルガー、ツィーラーなどの曲も加え、ワルツ三昧。ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートを聴きに行ったときの思い出が蘇ってきた。
 最後のアンコールは「美しく青きドナウ」。これで聴衆は大満足し、ティーレマン&ウィーン・フィルも日本公演の最終日を輝かしい響きで終え、華やかな雰囲気で幕を閉じた。
 
posted by 伊熊よし子 at 21:39 | 日々つづれ織り
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