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ミュンヘン・フィル

 あふれんばかりの才能に触れると、こちらまで心が高揚し、元気をもらえる。
 昨日はサントリーホールにミュンヘン・フィルの来日公演を聴きに行った。
 プログラムはモーツァルト:オペラ「後宮からの誘拐」序曲、ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番、マーラー:交響曲第1番「巨人」という構成だ。
 指揮は、今年9月に同オーケストラの首席指揮者のポストに就任予定の1989年テルアビブ生まれのラハフ・シャニ。ピアノのソリストはチョ・ソンジンである。
 オープニングの序曲からシャニの明快な指揮が全開。コンサートマスターは2022年からこのポジションについている青木尚佳で、すでに何度も共演しているからか、呼吸を呑み込んでいる感じだ。
 ベートーヴェンのピアノ協奏曲のソリストを務めたチョ・ソンジンは、聴くたびにその才能が大きく開花していくようで、たのもしい限り。今回も特有の美音が遺憾なく発揮され、とりわけ緩徐楽章が美しかった。
 チョ・ソンジンのピアノは、ショパン・コンクール優勝以前から聴いているが、からだのどこにも余分な力の入らない、完全に脱力ができている奏法で、その自然なからだの使い方が美音を生み出す。
 ピアニストとしても活動しているラハフ・シャニのサポートもすばらしく、チョ・ソンジンの弱音を際立たせるよう、オーケストラのコントロールがこまやかで、ピアニストはさぞ弾きやすいだろうなあと思わせるほど細部まで配慮された指揮だった。
 後半のマーラーは、ミュンヘン・フィルの各セクションの底力が発揮されるもので、弦は流麗、木管はのびやか、金管と打楽器はエネルギッシュ。シャニは2013年にマーラー・コンクールで優勝しているからか、この作品には自信がみなぎっていた。しかも、彼はすべて暗譜で、以前聴いたクラウス・マケラと同様に、両手とからだ全体を使ってオーケストラと一体化して指揮する。指揮棒は持たず、指揮台の上であたかも踊っているようだ。
 ラハフ・シャニ、チョ・ソンジン、青木尚佳と、いずれもいまや豊かな才能を思う存分に発揮しているアーティストの演奏に触れ、心が豊かになった。
 アンコールはチョ・ソンジンのベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」第2楽章、オーケストラはシューベルト(シャニ版):軍隊行進曲。
 すべての演奏が終わったときだけ、写真撮影が可能だったため、1枚パチリ。この日は、NHKの収録が入っていた。

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posted by 伊熊よし子 at 21:55 | クラシックを愛す
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