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平野和

 8月3日、渋谷区文化総合センター大和田さくらホールで、「欧州デビュー15周年記念 平野和 バス・バリトン・リサイタル」が開かれた。
 プログラムは、前半がレーヴェ、シューベルト、シューマン、ベートーヴェンの歌曲で、平野和の綴っているプログラムには、「ドイツの自然や神話」と「死」というふたつのテーマに基づいた作品を集めたとのこと。
 後半は、ブラームスの「夏」を連想させる作品を集めたという。
 ピアニストの夫人、平野小百合との共演で、まさにお互いの呼吸を呑み込んだ、ピタリと息の合った共演である。
 先日、「音楽の友」の「マリアージュなこの1本」の取材で会ったときも、このリサイタルの話になり、意気込みを聞いていただけに、演奏を聴くのがとても楽しみだった。
 バス・バリトンでうたわれるドイツ・リートはけっして重すぎず暗すぎず、深みがありながらもときにかろやかで、抒情的でひとつひとつのことばや響きがまっすぐ聴き手の元へと届けられる。
 平野和はあまり大袈裟なジェスチャーをせず、淡々と自然体で、しかも語りかけるように親密的な歌唱法でうたい込んでいく。
 後半のブラームスの余韻に浸っていたところ、アンコールにうたわれたのは、ベートーヴェン「君を愛す」とシューマン「献呈」とシューベルト「楽に寄す」の3曲。これらは音大のときに副科で学んだ曲ゆえ、私の心は何十年も前の音大のレッスン室へと飛んでいった。
 なんというなつかしさ。声楽科の先生の顔まで浮かんできた。
 帰路に着く間、家に戻ってからも、この3曲の旋律が頭から離れず、ずっと口ずさんでいた。
 とても心に響く、印象深いドイツ・リートの夕べとなり、また平野和の歌声を聴きたいと思った。夫人との二人三脚は、インタビュー時でもいろんな話が出たが、ウィーンで活躍するお二人には、ぜひ今後も頑張ってほしいと願っている。
 今日の写真は、ファースト・アルバムのシューベルト「冬の旅」(日本アコースティックレコーズ)のジャケット。

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posted by 伊熊よし子 at 21:39 | クラシックを愛す
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