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伊藤悠貴

「音楽の友」の次号は、今年生誕150年を迎えるラフマニノフ特集である。
 ラフマニノフというと、ピアノ作品がクローズアップされるが、チェリストでラフマニノフ「命」と思っているのがロンドン在住の伊藤悠貴である。
 先日、彼にラフマニノフのチェロ・ソナタなどの魅力を思いっきり語ってもらうことになり、特集のなかに記事を掲載することになった。
 実は2019年、ピアノに藤田真央を迎え、伊藤悠貴がオール・ラフマニノフ・プロでリサイタルを行ったことがある。
 その公演評を「公明新聞」に書いた。下記に貼り付けます。
 あれからコロナ禍でなかなか演奏を聴く機会に恵まれなかったが、今回はインタビューでお会いすることができた。伊藤悠貴はラフマニノフのチェロ・ソナタに出会っていなかったら、チェリストになっていなかったかもしれないというほど、このソナタとは縁が深い。その魅力と聴きどころを存分に話してくれ、時間が足りないほどだった。
 今日の写真はインタビュー中のワンショット。彼の熱き想いを率直に原稿にしたいと思う。

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伊藤悠貴 チェロ・リサイタル

329日 紀尾井ホール


 チェロ界に新たな才能が出現した。15歳からロンドン在住で、2010年にブラームス国際コンクール第1位、11年英国の最高峰・ウィンザー祝祭国際弦楽コンクール第1位を獲得した伊藤悠貴である。

 彼はコンクール優勝後、国内外で活発な演奏活動を展開し、著名な指揮者、オーケストラとの共演を重ねてきた。ライフワークはラフマニノフの作品およびイギリス音楽の研究・演奏。28歳の昨夏には、憧れの地・ロンドンのクラシックの殿堂ウィグモア・ホールにて史上初の開催となるオール・ラフマニノフ・プログラムでリサイタルを行い、高い評価を得ている。329日には東京・紀尾井ホールで同じプログラムのリサイタルを行った。

 前半はチェロとピアノのための2つの小品 作品2(前奏曲、東洋の踊り)、幻想的小品集作品3から(エレジー、メロディー、セレナーデ)、前奏曲作品2310、ロマンス、6つの歌曲(朝、夜のしじま、リラの花、ここはすばらしい、夢、春の水)、後半はチェロ・ソナタ作品19という構成である。今回のプログラムはラフマニノフの「歌」がテーマとなっており、伊藤悠貴はチェロ作品以外では編曲も行っている。

彼は作曲家の豊かな歌心を表現するべくチェロを人間の声のように歌わせ、共演のピアニスト藤田真央とともに、ロシアの大地、深いロマン、抒情性などを生き生きと表現した。

伊藤悠貴のチェロは輝かしい未来を予感させ、チェロと一体化した歌心は聴き手の心に深く浸透する。力強さと繊細さ、壮大さと緻密さ、語りと歌など相反する表情が横溢し、いずれの曲も創意と工夫に満ちている。この選曲はふだん聴くことができない貴重なもの。ロンドンを拠点に今後も耳の肥えた聴衆の元で演奏を磨き、「世界のYUKI」になってほしい。





posted by 伊熊よし子 at 23:32 | クラシックを愛す
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