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エリーナ・ガランチャ

  コロナ禍で延期になっていたエリーナ・ガランチャ(メゾ・ソプラノ)のリサイタルが、ようやく実現の運びとなった。
  私がチケットを購入したのは2020年5月の公演。その後、何度か延期となり、6月29日にすみだトリフォニーホールでようやく聴くことができた。
  第1部は、ブラームスの歌曲7曲で幕開け。冒頭から、ガランチャ特有の自然で深々とした美しい歌声が全開。ホールの隅々までゆったりとブラームスの滋味豊かな旋律が浸透していく。
  次いでベルリオーズの「ファウストの劫罰」より「燃える恋の思いに」が登場。オペラのひと幕のような、表情豊かな歌いまわしと圧倒的な迫力で、すでに会場はオペラハウスと化す。
  ここでピアニストのマルコム・マルティノーのドビュッシー「月の光」の演奏が入る。
  そして私がこよなく愛する、サン=サーンスの「サムソンとデリラ」の「あなたの声で心は開く」が歌われた。ああ、なんと官能的で情感に富み、想像力を喚起する歌声なのだろうか。
  もう、この1曲を聴いただけで、今回は大満足。夢見心地になってしまった。
 前半の境後は、グノーの「サバの女王」より「身分がなくても偉大な方」。これもまた、オペラの舞台を連想させる視覚に訴える歌唱で、ほんの少しの演技が聴き手をグノーの世界へといざなった。
  後半は、チャイコフスキーの「オルレアンの少女」より「さようなら、故郷の丘」から開始。ロシアものが続き、ラフマニノフの歌曲4曲が馨しい香りを放って披露された。ガランチャはロシア語が得意なようだ。
  ここでまた、マルコム・マルティノーのピアノでアルベニスの「タンゴ ニ長調」が演奏され、ここからはサルスエラへと移っていく。
  バルビエリの「ラバピエスの小理髪師」より「パロマの歌」、ルペルト・チャピの「エル・バルキレロ」より「とても深いとき」、サルスエラ「セベデオの娘たち」より「とらわれし人の歌(私が愛を捧げたあの人のことを思うたび」と続く。
  前半と後半では衣裳も替え、ヘアスタイルも微妙に異なっていた。まさに、完璧主義者である。
  ガランチャの真骨頂はこれから。なんと、アンコールが30分以上も続いたのである。
  鳴りやまない拍手に応え、何度もステージに登場。「もう終わりっていったでしょう」とかなんとかいいながら、次々に多彩な曲を歌い込んでいく。
  声はどんどん出てきて、ひとりオペラの様相を呈し、いまは叫んではいけないといわれているが、たまりかねた聴衆が大騒ぎ。いっこうに終わる気配がない。
  最後に「これで、本当にフィニートよ」と笑いながらいって、手を振りながらステージをあとにした。
  まだ、この時点で2022年は半分のところだが、「今年のコンサート・ベストテン」のトップに挙げたいと思うほど、充実した一夜となった。今度はぜひオペラで来日してほしい!!
posted by 伊熊よし子 at 18:16 | クラシックを愛す
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