2019年11月02日
ラファウ・ブレハッチ
こんなに贅沢なショパンのピアノ協奏曲の演奏があるだろうか。
今日は東京芸術劇場で、アンドレイ・ボレイコ指揮ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団のコンサートが行われた。
オープニングは、「ポーランドの国民歌劇の父」と称されるスタニスワフ・モニューシュコの歌劇「パリア」序曲。抒情的で豊かにうたう旋律が、ワルシャワ・フィル特有の深々とした響きで朗々と奏でられる。
今日のメインプログラムは、ラファウ・ブレハッチをソリストに迎えた、ショパンのピアノ協奏曲第1番と第2番。この2曲をワルシャワ・フィル&ブレハッチのコンビで聴くことができるのは、本当に贅沢だ。
私は、2005年のショパン国際ピアノ・コンクールをワルシャワのフィルハーモニーで聴いたときのことを思い出していた。
何度も記事に書いたが、国の期待を一身に背負い、本選の最後に登場したブレハッチの緊張感あふれる表情はいまだ忘れることができない。
それを乗り越えて、ショパンの魂に寄り添う、完璧なる美に彩られたショパンを奏でたブレハッチの精神力の強さも忘れがたい。
ブレハッチの演奏はコンクール後もさまざまな地で聴き続けているが、本質はまったく変わらない。もちろん成熟度が増し、音の美しさは比類ないものに変容しているものの、音楽の根底に流れる作曲家への尊敬の念と作品への愛情は以前のままである。
その変わらぬ美しさは、本物であり、ゆるぎないものである。
それゆえ、ブレハッチのピアノを聴くと心がおだやかになり、安心感が宿り、精神が落ち着く。こういう感情が湧いてくるピアニストはそうそういない。
今日の写真は、終演後のブレハッチの表情。素顔の彼は、率直で純真で気取りや気負いがいっさいない。まさにこのキャラクターも以前のままである。
posted by 伊熊よし子 at 22:31
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