ブログ

ホアキン・アチューカロのショパン

 昨夜のホアキン・アチューカロのリサイタルでは、冒頭のショパン「24の前奏曲」に関し、本人がステージでマイクを握り、「演奏に寄せて」というトークを披露した。
 その内容を紹介してみたい。

 ショパンの「24の前奏曲集」を24個の美しい小さな宝石たちと考える方がいらっしゃるかもしれませんが、私はこの作品を、それらが綿密に連関して崇高な価値を創り出している1つの大きな建造物だと思っております。
 ハ長調―イ短調―ト長調―ホ短調…と、平行短調を間に挟みながら5度ずつ上がっていく調構成で作られたこの美しい建造物において、私が、ショパンの唯一無二の天才性を感じるのは、愛、哀しみ、歓び、憤り、夢、恐怖、郷愁…といった、人間が感じ得るすべての感情が、ここに強烈に刻み込まれているという点であり、また、さらに驚くべきことに、各曲に投影された感情がそれぞれ、前後に連なる曲と大きく隔たりつつも連続していくという見事な構成なのです。
 この作品を、単に24曲の小品の連作集と捉えるのではなく、人間の感情のすべてが刻み付けられた、マーラーの交響曲にも匹敵する巨大な建造物として捉え、曲と曲の間にこそ描かれている感情の移ろいや隔たりにまでじっと耳を澄ませながら、日本のみなさまに、この壮大な旅をご一緒していただければと願っております。
 
 このことば通り、彼のショパンは24曲の全体を俯瞰し、それぞれの曲の個性を生かしながらも、ひとつひとつが有機的なつながりをもって演奏された。
 まさに大きな感情の流れが全編を支配し、最後のニ短調の曲が終わったときには、長い旅路が終わりを告げた感覚に陥った。それを味わうために、またCDを聴き直そうと思っている。
 
 
posted by 伊熊よし子 at 20:56 | クラシックを愛す
CATEGORIES
ARCHIVES
LINKS
PROFILE
検索ボックス