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メナヘム・プレスラー

 昨夜、メナヘム・プレスラーのインタビューが可能になるとの連絡がマネージメントから入り、今日の夕方、ピアノの練習後にプレスラーに会うため、楽器店のショールームに出かけた。
 前のインタビューを垣間見た限り、とても元気そうだ。いつものように、ゆったりとしたテンポで滔々と流れるように話している。
 私の番になったため、あいさつをすると、にこやかな笑顔で「おお、また会えたね」とあいさつを返してくれた。
 プレスラーは、つい先ごろ「メナヘム・プレスラーのピアノ・レッスン〜音楽界の至宝が語る、芸術的な演奏へのヒント〜」著:ウィリアム・ブラウン、訳:瀧川淳(音楽之友社)を出版したばかり。
 新譜も2枚リリースしており、モーツァルト:幻想曲ハ短調K.475、ピアノ・ソナタ第14番、第13番とモーツァルト:ピアノ協奏曲第23番、第27番 キンボー・イシイ指揮マグデブルク・フィル(キングインターナショナル)である。
 インタビューではこの書籍と新譜について、近況、今後の計画、ドビュッシーについて、モーツァルトについて、演奏のあるべき姿、教えるときの大切な事柄から大好きな日本食にいたるまで、短時間ながら雄弁に語ってくれた。
 私の脳裏には、先日のリサイタルで聴いた最後のアンコール曲、ドビュッシーの「月の光」の美しい音色がまだ焼き付いていて、ずっとある種の光を放っている。
 それを述べたときのプレスラーの表情が忘れられない。
 彼は「私の演奏を聴いた人が、家に帰ってから何時間も、あるいは何日間もその演奏を忘れることがないといってくれるのが理想です。あなたがそういってくれたのは、とてもうれしい。まさに、それが私の音楽に対する姿勢であり、演奏することの意義なのですから」といった。
 話はいろんな面におよび、プレスラーは、あくまでも真摯に純粋に率直に音楽に対して語った。
 そこには、彼のピアノと同様のひたむきさが宿っていた。私はそのことばひとつひとつが心に染み入り、感銘を受けた。
「また、来年も来日してくださいね」というと、「ああ、私もそうしたいと思っているよ」と答え、温かな笑顔を見せてくれた。
 この貴重なインタビューは、新聞や雑誌、WEBなどに書き分けをしたいと思っている。
 今日の写真は、インタビュー後のワンショット。いつも手を握ってくれるが、そのぬくもりも、いまだ忘れえぬ記憶として心の奥に刻み込まれている。 

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posted by 伊熊よし子 at 22:37 | 巨匠たちの素顔
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