2017年09月20日
クラウス・フロリアン・フォークト
明日からいよいよ「タンホイザー」が始まる。
そこで、「インタビュー・アーカイヴ」第74回は、クラウス・フロリアン・フォークトの登場。「タンホイザー」のタイトルロールをうたう。
[日経新聞 2012年6月28日 夕刊]
聴き手を別世界へといざなうテノール、
クラウス・フロリアン・フォークト
この6月、新国立劇場でワーグナーのオペラ「ローエングリン」が全6回上演された。主役をうたったのは、いまヨーロッパで大ブレイクしているヘルデン・テノール(華麗さと量感をもってオペラの英雄的役割をうたうテノール)、クラウス・フロリアン・フォークト。ドイツ出身の彼はハンブルク・フィルの第1ホルン奏者としてキャリアをスタートさせたが、声のすばらしさを見出され、やがて歌手に転向した。
10年かけて役を磨く
オペラ歌手として活動を開始したのは1997/98年シーズン。フレンスブルク歌劇場で腕を磨き、やがて国際舞台へと飛翔していく。「ローエングリン」をうたったのは10年前。エアフルトの歌劇場が初めてだった。
「最初はオーケストラとのやりとり、指揮者や演出家の指示など、さまざまな面での対処が難しかった。この役は長時間にわたり声のコントロール、体力、精神面など多くのものを要求されます。ワーグナーは声の色彩、歌詞の発音、ダイナミズムなどすべてにおいて幅広いものを求めて作品を書いています。それを10年かけて一歩一歩経験のなかから会得してきました」
チームプレイを好む
今回の「ローエングリン」では、声の響き、歌詞の表現、演技などあらゆる面で傑出し、聴き手を異次元の世界へと運ぶ幻想的な舞台を作り上げた。10年の成果がそこには宿っていた。
「私のモットーは毎回異なる歌を披露すること。いつも新鮮な気持ちで舞台に臨み、2度と同じ演奏はしません。それがオペラの醍醐味ではないでしょうか。うたっている間は日常生活から切り離され、別世界へと旅に出ているような気分。聴いてくださるかたと一緒に旅に出るわけです。オペラは始まってみないとどんな演奏になるかわからない。その日の調子が物をいうからです。共演者とみんなでひとつの物を作り上げていく、そこに一番の魅力を感じます。私はチームプレイが大好きで、オーケストラで演奏しているときも楽しかったのですが、いまも毎回演奏を心から楽しんでいます」
フォークトはこれまでモーツァルト「魔笛」のタミーノからコルンゴルト「死の都」のパウルまでさまざまな役をうたってきたが、それらの得意とする役を1枚のCDに収めた。題して「ヘルデン」(ソニー)。ここには本人が何度も口にする、「声と表現の幅広さ」を要求される役が詰まっている。
「私は楽譜に書かれた音符をこまかく見ていくようにしています。付点音符から休符まで、作曲家が意図したことは何かと探求していく。そして呼吸法も大切です。ホルンを吹いていましたから歌手になったときは呼吸法の訓練がずいぶん役に立ちました」
来春の「東京・春・音楽祭」では、「ニュルンベルクのマイスタージンガー」のヴァルターをうたう予定。これもフォークトの当たり役である。
「ワーグナーは声のために作られた作品が多い。楽譜に忠実にうたうと、なんと歌手にとって自然な曲なのだろうと感動を覚えます。来年、よりうたい込んだヴァルターを聴いてください」
このインタビューから、はや5年。そのフォークトが、テノールの難役といわれるタンホイザーに挑む。ワクワクする思いだ。
今日の写真は、新聞の一部。いつもふわりとした長髪だが、今回の来日記者会見でも、素適なヘアスタイルだった。
そこで、「インタビュー・アーカイヴ」第74回は、クラウス・フロリアン・フォークトの登場。「タンホイザー」のタイトルロールをうたう。
[日経新聞 2012年6月28日 夕刊]
聴き手を別世界へといざなうテノール、
クラウス・フロリアン・フォークト
この6月、新国立劇場でワーグナーのオペラ「ローエングリン」が全6回上演された。主役をうたったのは、いまヨーロッパで大ブレイクしているヘルデン・テノール(華麗さと量感をもってオペラの英雄的役割をうたうテノール)、クラウス・フロリアン・フォークト。ドイツ出身の彼はハンブルク・フィルの第1ホルン奏者としてキャリアをスタートさせたが、声のすばらしさを見出され、やがて歌手に転向した。
10年かけて役を磨く
オペラ歌手として活動を開始したのは1997/98年シーズン。フレンスブルク歌劇場で腕を磨き、やがて国際舞台へと飛翔していく。「ローエングリン」をうたったのは10年前。エアフルトの歌劇場が初めてだった。
「最初はオーケストラとのやりとり、指揮者や演出家の指示など、さまざまな面での対処が難しかった。この役は長時間にわたり声のコントロール、体力、精神面など多くのものを要求されます。ワーグナーは声の色彩、歌詞の発音、ダイナミズムなどすべてにおいて幅広いものを求めて作品を書いています。それを10年かけて一歩一歩経験のなかから会得してきました」
チームプレイを好む
今回の「ローエングリン」では、声の響き、歌詞の表現、演技などあらゆる面で傑出し、聴き手を異次元の世界へと運ぶ幻想的な舞台を作り上げた。10年の成果がそこには宿っていた。
「私のモットーは毎回異なる歌を披露すること。いつも新鮮な気持ちで舞台に臨み、2度と同じ演奏はしません。それがオペラの醍醐味ではないでしょうか。うたっている間は日常生活から切り離され、別世界へと旅に出ているような気分。聴いてくださるかたと一緒に旅に出るわけです。オペラは始まってみないとどんな演奏になるかわからない。その日の調子が物をいうからです。共演者とみんなでひとつの物を作り上げていく、そこに一番の魅力を感じます。私はチームプレイが大好きで、オーケストラで演奏しているときも楽しかったのですが、いまも毎回演奏を心から楽しんでいます」
フォークトはこれまでモーツァルト「魔笛」のタミーノからコルンゴルト「死の都」のパウルまでさまざまな役をうたってきたが、それらの得意とする役を1枚のCDに収めた。題して「ヘルデン」(ソニー)。ここには本人が何度も口にする、「声と表現の幅広さ」を要求される役が詰まっている。
「私は楽譜に書かれた音符をこまかく見ていくようにしています。付点音符から休符まで、作曲家が意図したことは何かと探求していく。そして呼吸法も大切です。ホルンを吹いていましたから歌手になったときは呼吸法の訓練がずいぶん役に立ちました」
来春の「東京・春・音楽祭」では、「ニュルンベルクのマイスタージンガー」のヴァルターをうたう予定。これもフォークトの当たり役である。
「ワーグナーは声のために作られた作品が多い。楽譜に忠実にうたうと、なんと歌手にとって自然な曲なのだろうと感動を覚えます。来年、よりうたい込んだヴァルターを聴いてください」
このインタビューから、はや5年。そのフォークトが、テノールの難役といわれるタンホイザーに挑む。ワクワクする思いだ。
今日の写真は、新聞の一部。いつもふわりとした長髪だが、今回の来日記者会見でも、素適なヘアスタイルだった。