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アサド兄弟

 ブラジル出身のギター・デュオ、アサド兄弟が久しぶりに来日した。
 彼らにインタビューしたのは、もう20年以上前のことになる。
 4月25日、紀尾井ホールにおけるコンサートは、ピアソラ、ニャターリ、ヴィラ=ロボス、ジスモンチの作品にセルジオ・アサドの作品がもりだくさんに組まれた充実した構成だ。
 兄のセルジオと弟のオダイルは、派手なパフォーマンスをすることなく、淡々と作品に寄り添って美しい音色を編み出していく。
 そのギターは、豊かなレガートと内省的な響きと語りかけるような空気を孕み、聴き手の心の内奥へと音楽を届ける。
 なんという至福の時間だろうか。ナマのギターの調べが大好きな私は、目を閉じてじっと聴き入ってしまった。
 彼らの演奏は年月を経てもまったく変わることなく、より深遠で洞察力に富み、ギターという楽器の普遍性を知らしめた。
 終演後、久しぶりに会ったふたりに「20年以上前にインタビューしたんだけど」というと、「えーっ、そんなに昔だっけ」と驚かれてしまった。
 今日の写真はそのときのワンショット。シブくなったよねえ(笑)。

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posted by 伊熊よし子 at 15:14 | クラシックを愛す

舘野泉

 舘野泉が11月2日、サントリーホールで「卒寿記念コンサート」(数え年)を開く。
 プログラムはマグヌッソン、ノルドグレン、ティエンスー、エスカンデの作品。舘野さんが長年にわたって親しく交流してきた作曲家の作品ばかりである。
 その話と、「音楽の友」の次号の特集記事である北欧の音楽に関して、特にシベリウスとフィンランドについても話を聞くため、ご自宅に伺った。
 舘野さんと話していると、いつも私の3倍くらいゆったりしたテンポで話されるため、私がいかに早口かと思い知らされる。
 でも、この日も時間が制限されていたにも関わらず、「伊熊さんと話していると、おもしろいんだよねえ」といって、倍以上の時間を割いてくれた。
 いまはコンサートが目白押しで多忙ゆえ、マネジメントからは「非常にお疲れなので、短時間で」といわれていたのに、舘野さん自身がずっと話してくれるため、私がそれを止めるわけにもいかず、結局長居をしてしまった。
 今日の写真はブータンの民族衣裳との1枚。昨年9月にインド、ブータン、ネパールに演奏旅行に出かけた折、ブータンで購入したそうだ。しっかりした厚めの布で、女性用もあるという。初めて実際に目にする民族衣裳はとても興味深く、日本の着物にも似ていて帯も個性的。あれこれ聞いてしまった。
 もちろん、コンサートのこと、フィンランドのことなどがインタビューの中心だったが、話題はどんどん広がり、おしゃべりタイムのようになってしまった。舘野さん、長時間ありがとうございました。

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posted by 伊熊よし子 at 18:11 | マイ・フェイバリット・ピアニスト

ルーカス・ゲニューシャス

昨夜は、浜離宮朝日ホールにルーカス・ゲニューシャス ピアノ・リサイタルを聴きに行った。
 以前から綴っているように、今回のプログラムはシューベルトの即興曲集とラフマニノフのピアノ・ソナタ第1番のオリジナル版の日本初演。
 シューベルトの作品90の第2番、第3番、作品142の第第1番、第4番という構成で、主題を美しく響かせながらも、ときにエネルギッシュかつ奥深く、ゲニューシャスのピアノの特筆がよく表れていた。
 今回、珍しいのはメヌエット嬰ハ短調Ⅾ600が含まれていたこと。短いながらも和音やハーモニーが個性的で、ナマの演奏では初めて耳にする曲で、稀有な体験をすることができた。
 後半は、いよいよラフマニノフのピアノ・ソナタ第1番。通常は35分の改訂版で演奏されるが、オリジナル版は45分。ゲニューシャスが録音も行っている、すでに手の内に入った演奏で、長時間にわたり集中力が途切れることなく、ラフマニノフの神髄に近づこうとひたむきに作品の内奥に切り込んでいく精神が印象的だった。
 インタビューのときにも話していたことだが、ゲニューシャスはこのオリジナル版に関し、これまでだれも弾いてこなかったことが不思議で、自分が世に紹介することに大きな意義を抱いているという。
 アンコールがこれまた彼らしいこだわりの3曲。ゴドフスキーの「トリアコンタメロン、3拍子による30の雰囲気と光景より第11曲、懐かしいウィーン」、シューベルト(ゲニューシャス編)の「38のワルツ・レントラーとエコセーズ作品18より第6曲」、デシャトニコフの「ブコヴィナの歌より第22番」。
 2010年のショパン・コンクールのときに現地で聴いて以来ずっと演奏は聴き続けているが、自分の道を一途に探求していく、まっすぐな性格の人である。
 今日の写真は、終演後の楽屋でのワンショット。

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posted by 伊熊よし子 at 18:54 | クラシックを愛す
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