2025年03月20日
クリスティアン・ゲルハーヘル&ゲロルト・フーバー
今年も「東京・春・音楽祭」が華々しくスタートし、連日さまざまなコンサートが開かれている。
昨日は、バリトンのクリスティアン・ゲルハーヘルとピアノのゲロルト・フーバーの「シューマン・ツィクルス」のリサイタルを聴きに行った(東京文化会館小ホール)。
もう10年前になるだろうか、王子ホールでこのふたりのシューマンの連続演奏会を聴き、シューマンのリートの奥深さに触れ、ふたりの呼吸のピタリと合った美しいリートの世界に酔いしれたものだ。
昨日は「5つのリート」作品40、「リーダークライス」、「3つの歌」作品83、「ロマンスとバラード集」作品53、「レーナウによる6つの詩とレクイエム」作品90というプログラム構成。
ゲルハーヘルのシューマンは、詩と音楽の見事な融合を適切な発音と発声、自然な息遣い、語りかけるような表現力、ときにオペラのような劇的なうたいまわしで進め、一瞬たりとも聴き手の心と耳を離さない。
以前、インタビューしたときに「私はバリトンが大好きなんです」というと、彼はニヤリとして「ああ、ウチの奥さんと同じだねえ。彼女は私がテノールだったら、結婚しなかったというんですよ」といって笑っていたのを思い出す。
東京文化会館小ホールは非常に親密的な響きで、歌手がすぐそばでうたっている様子を見ることができる。シューマンのリートをずっと聴き続けると、ピアノパートのすばらしさも体感でき、フーバーの弱音の美しさと表現力の深さもじっくり味わえる。
久しぶりに聴くシューマンのリートの世界に、至福の時間を過ごすことができた。まだ東京春祭は始まったばかり。これから何回か、心身が豊かになる日が訪れそうだ。
posted by 伊熊よし子 at 20:23
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