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エフゲニー・キーシン

 12月2日、サントリーホールにキーシンのリサイタルを聴きに行った。
 初来日の1986年のときからずっと聴き続けてきたが、当時15歳だったキーシンもいまや堂々たる巨匠となり、風格すら漂うようになった。
 しかし、ステージへの登場の仕方からおじぎ、ピアノに向かってすぐに弾き始める様子など、まったく変わることがない。
 ただ、その演奏は進化と深化を遂げ、聴き手をキーシンの音の世界へと一気にいざなっていく。
 プログラムはベートーヴェンのピアノ・ソナタ第27番、ショパンのノクターン第14番と幻想曲、ブラームスの「4つのバラード」、プロコフィエフのピアノ・ソナタ第2番という構成。
 前半のベートーヴェンもショパンもゆったりしたテンポ設定で、1音1音ていねいに弾き込み、打鍵は深々とし、息の長いうたいまわしが特徴だ。
 後半のブラームスは壮大かつ幻想的な響きのなかに渋さがただよう。ここでは、キーシンの新たな一面を示唆した。
 最後のプロコフィエフが傑出し、ピアノの可能性を探求した作曲家の神髄に肉薄し、ロシアピアニズムの継承者たる奏法を遺憾なく発揮。そしてアンコールもショパン、プロコフィエフ、ブラームスが組まれ、すべてのプログラムをここで完結するというキーシンらしい形をとった。この公演評は、次号の「モーストリー・クラシック」に掲載される。



posted by 伊熊よし子 at 14:34 | マイ・フェイバリット・ピアニスト
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