2024年10月05日
ティモシー・リダウト
次世代を担うヴィオラ奏者、ティモシー・リダウトが来日している。
1995年年ロンドン生まれのヴィオラ奏者ティモシー・リダウトは、2016年年にライオネル・ターティス国際コンクールで優勝し、ここから世界の舞台へと一気に飛翔することになる。
ライオネル・ターティス(1876〜1975)はイギリスのヴィオラ奏者で、ヴィオラが独奏楽器として認められることに尽力し、イザイ、ティボー、クライスラー、ウォルトンをはじめ同時代の音楽家と幅広く交流した。
ティモシー・リダウトもターティスを尊敬し、子どものころから彼の名を冠したコンクールに参加したいと考えていたという。
3日はそのティモシーにインタビューし、4日は王子ホールに無伴奏のリサイタルを聴きに行った。
彼は人なつこい笑顔のナイスガイで、いまや欧米各地のオーケストラや音楽祭から引っ張りだこの人気で、「この夏はまったくオフの日がなかった」というくらいの忙しさ。
すでに録音も多数行っており、今回の「intoxicate」のインタビューでは、そのなかからライオネル・ターティスに捧げたアルバム、シューマンの「詩人の恋」をヴィオラで演奏したもの、エルガーのチェロ協奏曲をターティスがヴィオラ用に編曲し、作曲家から許諾を得たものの演奏などを中心に話を聞いた(キングインターナショナル)。
このエルガーのコンチェルトの話や、ターティスにまつわる話はとても興味深く、これは絶対に詩面で紹介したいと思った。
「ホント? 興味をもってくれてありがとう。実は、ターティスがエルガーのチェロ協奏曲の編曲のOKをもらったという証拠のサイン付きの写真があったんだけど、スマホの整理が悪くてすぐに見当たらない。ああ、残念、見てもらいたいんだけどなあ」といってしばらくスマホの写真を探していたけど、時間切れ。「あとで見つかったら、送るね」といっていたが、とうとう今回の来日中には見つからなかったようだ。
このほか、ヴィオラを始めたきっかけからコンクール優勝のこと、その後のラトルをはじめとするさまざまな共演者の話まで、実に楽しそうに雄弁に語ってくれた。
今夜のリサイタルは現代作品とテレマン、J.S.バッハを組んだプログラム。とりわけ最後に登場したバッハ「パルティータ第2番」が印象深く、「シャコンヌは、僕のもっとも大切な作品のひとつ」と熱く語っていたことが思い出された。
今日の写真はインタビュー中の1枚。みんなで「テディベアみたい」といっていたのだが、演奏はすこぶるストイックでドラマティックで緊迫感に富んだもの。ペレグリーノ・ディ・ザネット製作(1565〜75年頃)の渋く深く心にずしんと響いてくる低音の響きが、強烈な存在感を示していた。
posted by 伊熊よし子 at 00:05
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