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フランチェスコ・トリスターノ

 10月12日、王子ホールでフランチェスコ・トリスターノのリサイタルを聴いた。
 彼は来日のたびに新たな面を披露してくれるが、今回はJ.S.バッハの「イギリス組曲」全6曲という画期的なプログラム。
 私は、「イギリス組曲」第3番に辛い思い出があり、以前チェンバロを弾いていたときにはこの曲が大好きだったのだが、あるときから弾くことができなくなってしまった。
 いまでは、演奏を聴くのも心が痛むほどである。
 というわけで、トリスターノの第3番も胸が痛むなあと思っていたところ、あまりにもすばらしくアップテンポで、各曲の表情を見事に変容させて刺激的な演奏するため、聴くのが辛いどころか唖然としてしまい、作品のよさを再認識した。
 そうか、トリスターノの「イギリス組曲」はこういう演奏なのね、と改めて彼の才能に気づかされ、気がつけば全曲を楽しんで聴いている自分がいた。
 全6曲というのは、実に長大で集中力と緊迫感が必要とされるが、トリスターノの演奏はあたかもピアノと遊んでいるようで、しかもその遊びは天才的な技術に裏打ちされているから、生半可なものではない。
 リリースされたばかりの「イギリス組曲」(キングインターナショナル)は、彼の自主レーベルの第1弾。これからゆっくり聴きたいと思う。もちろん、第3番も。
 今日の写真は、リサイタルのプログラムの表紙。初来日のときから何度かインタビューをしているが、次に機会があったら、「イギリス組曲」についてじっくり話を聞きたいと思う。

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posted by 伊熊よし子 at 21:43 | クラシックを愛す
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