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林喜代種さん

 音楽写真家の林喜代種さんが、9月7日に脳卒中で亡くなった。享年80。
 ついこの間まで一緒に仕事をしていたのに、突然の訃報にショックは隠せない。
 もう長年に渡って仕事の仲間という感じだったため、信じられない思いである。
 もうだいぶ前のことになるが、ジュネーヴにふたりで出張した。このときはスイス・ロマンド管弦楽団の取材や、さまざまな仕事が重なっていたが、ひとつスイスの楽譜を日本で発行する契約の仕事が含まれていた。
 その楽譜出版社の若い社長に会うことになり、彼が私のためにすばらしい景観のレストランでランチを用意してくれた。
 林さんに、「今日は社長さんに会うために、ランチに行ってくる」というと、「フーン、いいなあ」と、うらやましそうな表情をしていた。
 そして戻るなり、「社長さん、どうだった?」と聞くので、「すごくカッコいい人だった。趣味はアルプスのスキーと、スカイダイビングとヨットと馬術だって」というと、「ケーっ、なんだそれ。負けたあ。オレ、そのひとつもないよ」というので、大笑いになった。
 いまとなっては、なつかしい思い出である。
 林さんは、いつもにこやかで正直で自然体の人だった。音楽が大好きで、舞台写真も好きで、インタビューではアーティストのいい面を写し出そうとじっくり時間をかけて撮影した。
 いまはまだいなくなったことが信じられないため、いい思い出だけを反芻している。
 謹んでご冥福をお祈りいたします。

posted by 伊熊よし子 at 23:19 | クラシックを愛す
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