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前田妃奈

 国際コンクールの優勝者はその記念公演を行い、真価を世に問うが、7月27日には紀尾井ホールで前田妃奈のリサイタルが開かれた。「ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクール優勝記念リサイタル」である。
 2022年10月20日、20歳の彼女はコンクールのファイナルでヴィエニャフスキのヴァイオリン協奏曲第2番とブラームスのヴァイオリン協奏曲を演奏し、見事優勝の栄冠を手にした。
 その瞬間のことはよく覚えていないそうだが、コンクール後は数多くのコンサートが組まれ、欧米各地で演奏。この日本公演のあとも2023年は20カ国60地域での演奏会が予定されている。
 優勝記念リサイタルのプログラムは、モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ第21番からスタート。柔軟性に富んだおだやかな音色が、ピアノとともに美しく紡がれていく。
 当日の共演者は、ヴィエニャフスキコンクールをはじめ、数多くのコンクールで公認ピアニストを務めているグレッグ・スクロビンスキ。長身のがっしりタイプのピアニストだが、弱音の美しい奏法が印象的で、ヴァイオリニストにピタリと寄り添う。
 次いで、リヒャルト・シュトラウスのヴァイオリン・ソナタが登場。ここでは甘美で情熱的で官能的な響きが全編を覆っていた。使用楽器は、日本音楽財団より貸与された1715年製ストラディヴァリウス「ヨアヒム」。
 後半は、バッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番よりシャコンヌ」が演奏され、前田妃奈の果敢に作品の内奥に肉薄していく姿勢と、楽器を存分に鳴らす術が相まって、非常に聴きごたえのあるバッハとなった。
 最後は、ヴィエニャフスキの「グノーの《ファウスト》の主題による華麗なる幻想曲」が華々しくエネルギッシュに奏でられ、底力を発揮した。
 これからさまざまな土地で演奏し、より一層実力に磨きがかかっていくであろう新たな才能を耳にすることができ、とても温かな気持ちになった。また次回、演奏を聴くのがひたすら楽しみである。
 今日の写真は、プログラムの表紙。

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posted by 伊熊よし子 at 18:06 | 親しき友との語らい
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