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スティーヴン・ハフ

 来日アーティストのコンサートが続くなか、実力派のピアニスト、スティーヴン・ハフが6月14日にトッパンホールでリサイタルを開いた。
 プログラムは前半が、モンポウ「魔法の歌」、ドビュッシー「版画」、ショパン「バラード第3番」「ノクターン第5番」。
後半がハフ「パルティータ」、リスト「巡礼の年第2年イタリアよりペトラルカのソネット、ダンテを読んで」。
 いずれも成熟した演奏で、あるべき音がそこにあるという説得力のあるピアニズム。こういうピアノを聴くと、何時間でも聴いていたくなり、さらに得意とするモンポウは、さまざまな作品を聴きたくなる。
 トッパンホールの親密的な空間に、ハフの円熟味あふれる音色は温かくヒューマンな響きとなってホール全体を満たし、磨き抜かれた音に全身が包まれる感覚を抱いた。
 この公演評は、いくつかの雑誌に書き分けすることになっている。
 今年は1月から何人かのピアニストのすばらしい演奏に触れているため、「音楽の友」の2023年コンサートベスト10のリスト出しに迷いそうだ。
 まだ半年あるから、もっとたくさんのいい演奏に出会いそう…。



posted by 伊熊よし子 at 21:56 | クラシックを愛す

ベフゾド・アブドゥライモフ

 来日アーティストが増え、連日さまざまなコンサートが行われている。
 昨日はトッパンホールにベフゾド・アブドゥライモフのピアノを聴きに行った。
 アブドゥライモフは、1990年ウズベキスタンのタシケント生まれ。2009年にロンドン国際ピアノコンクールで優勝し、欧米で幅広く過活動を展開している。
 今回のリサイタルはトッパンホールに初登場、東京でのリサイタルも初めてとなる。
 プログラムは前半がフランク(バウアー編)のフーガと変奏曲作品18、ウズベキスタンの作曲家ディロロム・サイダミノヴァの古代ブハラの壁、ラヴェルの夜のガスパール。後半がラフマニノフの13の前奏曲より第5番、10の前奏曲より第5番、プロコフィエフのロメオとジュリエットからの10の小品。
 アブドゥライモフのピアノの特質は、深い打鍵に支えられた強靭なタッチ。だが、その奥にえもいわれぬ叙情的な美音が潜む。今回はトッパンホールの会場の広さに合わせ、かなり音量を抑制し、繊細さと弱音を駆使している箇所が見られた。
 おそらく大ホールで演奏するときは、思いっきり自身のもてる最大限の音の響きを発揮するのだろう。
 さまざまな作品を聴いたが、やはり最後のプロコフィエフがもっとも手の内に入った雄弁な音楽で、いずれの曲からも内容的な描写が絵画のように表現され、大きな絵巻物を見る思いに駆られた。
 今年33歳。これからいかようにも伸びていく、将来性を感じさせるアブドゥライモフ。次回はコンチェルトを聴いてみたい。

posted by 伊熊よし子 at 15:10 | 日々つづれ織り

第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクール

 6月9日ムジカーザにおいて、第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクールの記者発表が行われた。
 期日は2023年10月5日から15日、場所はワルシャワ国立フィルハーモニー・ホールである。
 当日はポーランドからコンクールの担当者が来日し、コンクールの概要、前回の様子、今回の内容まで長時間に渡って詳細が発表された。

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 質疑応答が終わってからは、第1回の優勝者ポーランドのトマシュ・リッテルと第2位入賞者の川口成彦が演奏を披露、最初はひとりずつで、最後はふたりの連弾も披露された。

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 その後、ふたりにインタビューを行った。2024年3月9日から13日まで各地で18世紀オーケストラと共演することが決まったため、その先行取材である。このコンサートはソリストにユリアンナ・アヴデーエワが加わり、「The Real Chopin×18世紀オーケストラ」と題されている。
 使用ピアノは、ヒストリカル・ピアノ(ブレイエル1843)の予定である。
 ふたりにはピリオド・コンクールを受けた経緯からコンクール時の様子、優勝&入賞したときの気持ち、本選で18世紀オーケストラと共演したときのこと、コンクール以前の活動と以後の活動に関して、そしてコンクールから5年経過したことに続き今後5年の予定と抱負まで、多岐に渡ることを聞いた。
 このインタビューは、KAJIMOTOのHPと、各ホールの冊子やWEBに書くことになっている。
 写真はインタビュー後のツーショット。コンクールを通して、とても仲良くなったとのこと。来年のツアーが楽しみだ。

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 翌日の10日には、浜離宮朝日ホールでトマシュ・リッテルのリサイタルを聴いた。
 ショパンのノクターン第4番、第1番、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第30番、モーツァルトの幻想曲、ショパンの24の前奏曲という多彩なプログラム。非常に説得力があり、しかも洞察力に富んだピアニズムで、1843年製ブレイエルを使用して薫り高き響きを存分に聴かせた。
 来年の18世紀オーケストラは弾き振りである。また新たなる魅力が引き出されるに違いない。

posted by 伊熊よし子 at 23:05 | 情報・特急便
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