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若き才能の演奏に曲の神髄を知る

 どんなに聴き慣れた作品でも、実力を備えた若き才能の演奏で聴くと、また新たな発見があり、胸が高鳴る。
 4月23日に東京オペラシティコンサートホールで、クシシュトフ・ウルバンスキ指揮による東京交響楽団と共演し、ショパンのピアノ協奏曲第2番のソリストを務めたヤン・リシエツキの演奏も、まさにそういう思いを強くした。
 リシエツキの演奏は弱音の美しさと自然なルバート、情感豊かな響きが大きな特質で、この日もポーランド出身のウルバンスキとの呼吸がピッタリ。ショパンの若き時代の初々しいコンチェルトを馨しい響きで奏でた。
 とりわけリシエツキの美質が生かされたのは、第2楽章のラルゲット。ショパンがコンスタンツィヤ・グワトコフスカに秘めた恋心を込めて書いたといわれる美しい旋律は、リシエツキのような抑制された弱音で奏でられると、旋律美が際立つ。

 5月9日には、同じく東京オペラシティコンサートホールで、クリストフ・エッシェンバッハ指揮ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団との共演で、佐藤晴真がドヴォルザークのチェロ協奏曲を演奏した。
 佐藤晴真は子どものころからエッシェンバッハに憧れていたそうで、2022年に演奏を聴いてもらい、今回共演のチャンスをつかんだという。
 佐藤晴真の演奏はこれまで何度も聴いているが、このドヴォルザークは、やはり憧れの指揮者と、現在彼が留学しているベルリンの名門オーケストラであるベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団との共演ということもあり、気合の入り方が違っていた。
 本当に耳慣れたこうした作品を若手奏者の熱演で聴くと、その作品がみずみずしく、いま生まれたような新鮮さをもって迫ってくる。ドヴォルザークのチェロ協奏曲は旋律が非常に印象深いため、終演後もずっとそのメロディが耳に残り、何日たってもふと旋律を口ずさんでしまうほどだった。
 最近は海外の指揮者もオーケストラも来日が可能になり、数多くの名演が生まれている。
 ようやく日常が戻った感じで、いずれの公演も聴衆の熱い喝采が胸に突き刺さるようだ。

posted by 伊熊よし子 at 22:22 | クラシックを愛す
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