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東誠三

 16日(日)14時、東京文化会館小ホールに、以前「ぶらあぼ」でインタビューした東誠三のリサイタルを聴きに行った。
 プログラムは、インタビューでじっくり語ってくれたベートーヴェンのピアノ・ソナタ第30番、第31番、第32番という後期3大ソナタ。
 冒頭から、すさまじいまでの集中力に支配されたベートーヴェンが紡ぎ出される。ただし、からだのどこにも余分な力は入っていない。
 これが東誠三のベートーヴェンである。
 彼は2008年から12年にかけてベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲ライヴ録音を敢行しているが、それらの演奏も、緊迫感と集中力と作品の内奥に切り込んでいく一途な姿勢が色濃く映し出されているものの、けっして力で押す演奏ではなく、ごく自然体。
 それゆえ、作品の美しさと偉大さが前面に押し出される。
 この日の3大ソナタも、聴き込むほどにベートーヴェンの偉大さが心にひたひたと押し寄せ、ひとつひとつのフレーズ、リズム、主題、変奏、フーガなどが胸に深く刻み込まれる。
 3曲続けて聴くと、いかにベートーヴェンの作品が新しいかを思い知らされる。18世紀末から19世紀初頭に書き上げられた作品なのに、いまなお生き生きとした生命力をもって21世紀に生きる私たちにさまざまな語りかけをする。
 やはり、ベートーヴェンをライフワークとしている東誠三の真摯な姿勢が、音を通じて聴き手の心身に訴えかけているからだろう。終演後もずっと脳裏にベートーヴェンの音が居座り、いっこうに消えることはなかった。
 いい演奏を聴くと、日々の小さなストレスが吹き飛ぶ。「東さん、ありがとう!」

posted by 伊熊よし子 at 22:25 | クラシックを愛す

飯野明日香

 現代音楽から古楽器のフォルテピアノまで、幅広いレパートリーをもつ飯野明日香が、「エラールの旅」という全3回のシリーズをサントリーホールのブルーローズで開催している。
 その最終回が5月20日に行われることになり、その話を聞くためにインタビューに出かけた。
 彼女はパリとブリュッセルで学び、さまざまな音楽家との共演も経て、いま自分がもっとも演奏したい作品は何かと自身に問いかけ、その思いをプログラムに投影させているという。
 今回は「エラールという楽器」と題し、この楽器が歩んできた歴史と足跡をたどり、日本のサントリーホールに保存されるまでの道のりをたどりながら、ベートーヴェン、リスト、ラヴェルに日本の作品を加えて個性的な選曲を披露する。
 このインタビューは、次号の「音楽の友」に紹介される予定である。
 インタビューは各々の作品とエラールとの関連性から始まり、現代作品への熱き想い、それらの作曲家との交流まで広がり、最後は「世界一周旅行をしたい」という夢まで語ってくれた。
 当日、演奏されるのは1867年製のエラール。この歴史的名器がいかなる響きを生み出すか、興味は尽きない。
 今日の写真は、インタビュー後のワンショット。まだまだ時間が許せば、いろんな話が聞けそうだった。また、次回を楽しみにしたい。

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posted by 伊熊よし子 at 16:30 | 日々つづれ織り

東京・春・音楽祭

 3月18日から4月16日まで、「東京・春・音楽祭」が上野で開催されている。
 先日はキット・アームストロング、プリン・ターフェルのコンサートを聴きに行った。
 上野駅に着くや、公園入口からものすごい数の人があふれ、お花見のすごさを思い知った。
 見渡せば、公園の奥の方まで人がびっしり。みんな幸せそうな表情をしている。
 私は音楽を聴いて幸せになった。
 キット・アームストロングは「鍵盤音楽年代記」(1520〜2023)と題し、5回に分けてバロックから現代作品、自作までを披露。これがすこぶる上質な演奏で、キットの深い思考に根差した音楽が堪能できる。
 プリン・ターフェルはオペラナイトと題し、ワーグナーからバーンスタインまで多彩なプログラムで圧倒的な歌唱と表現力を示し、最後はエンターテイナーぶりを存分に発揮。会場をほとんど総立ちにした。
 共演は沼尻竜典指揮東京交響楽団。彼らとターフェルが並ぶと、そのあまりの大きさに会場から「えーっ」という声が漏れた。
 まだまだ春祭は続く。さくらの花は強風で散ってしまうだろうが、ホール、美樹館、博物館などの会場はまだはなやかだ。
posted by 伊熊よし子 at 16:15 | クラシックを愛す
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