今年1月19日、辻井伸行がニューヨークのカーネギーホールでリサイタルを行った。
彼にとっては、すでに何度かこのステージに立っている、おなじみのホールとなった。
当初は歴史と伝統に彩られたカーネギーホールの重みに、極度の緊張感が襲ってきたそうだが、いまは演奏するのが楽しくてたまらないようだ。
今回もスタンディングオベーションとなり、大成功を博したが、その同じプログラムで現在日本ツアーを行っている。
3月7日、サントリーホールのリサイタルを聴きに行った。
ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第17番「テンペスト」からスタート。次いでリストの「巡礼の年第2年への追加 ヴェネツィアとナポリ」が登場。後半はラヴェルの「ハイドンの名によるメヌエット」「亡き王女のためのパヴァーヌ」「水の戯れ」、そして最後はカプースチンの「8つの演奏会用エチュード」が演奏された。
辻井伸行の演奏は彼が17歳のころから聴き続けているが、今回は改めてその弱音の美しさと絶妙のペダリング、リズムとハーモニーのバランスに心が震えた。
コロナ禍でコンサートがなくなった時期、辻井伸行は練習に没頭したという。レパートリーも増やし、以前弾いた作品も練り直し、さらに音の美しさに磨きをかけた。
その成果がいま、カーネギーホールで大輪の花を咲かせ、日本ツアーで聴衆の心をとらえている。
以前からカプースチンが大好きだと語っているが、まさにその作曲家と作品に対する熱き想いが結実し、サントリーホールを埋め尽くした聴衆の拍手喝采を呼び起こした。
今日の写真はプログラムの表紙。また、近いうちにインタビューで会うことができれば、カプースチンへの思いを聞いてみたいと思う。
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