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ナショナル・エディション

  昨年のショパン国際ピアノ・コンクールは、日本人の入賞もあり、大きな盛り上がりを見せた。
  同コンクールでは、しばらく前からヤン・エキエル校訂によるナショナル・エディションが使用されるようになり、参加者はこれまで使ってきた版とナショナル・エディションの両方を見比べ、こまかな点を分析・研究している人が多い。
  ナショナル・エディションは、ポーランドの国家事業として、ヤン・エキエル教授がその生涯を賭けて編纂した原典版楽譜全集である。
  その日本語版楽譜が、全音楽譜出版社から出版された。
  バラード、スケルツォ、ノクターン、ワルツが登場しているが、楽譜の冒頭に各々の作品についての注釈が含まれている。
  これがすこぶる興味深く、ショパンの手紙からの引用や他の作曲家のことばや研究内容、その時代の話などが綴られている。
  続く「演奏に関する解説」も、非常にこまやかで懇切丁寧、ひとつひとつの作品について新たな視点を見出すことができる。
  もちろん、ショパン・コンクールでは使用する楽譜の版は自由で、それぞれのピアニストがもっとも弾きやすく、適切だと考える版で演奏を行う。
  だが、ナショナル・エディションが出版されてから、多くのピアニストがこれまで自分で使用していた版とエキエル版との表記や表現の異なる点を見つけ、ショパンの作品への洞察力を深めている。
  今日の写真は、いま出版されている日本語版。ショパン・コンクールへの興味が大きくなった現在、この楽譜にも興味を抱く人が増えるに違いない。

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posted by 伊熊よし子 at 18:46 | クラシックを愛す
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