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樫本大進&キリル・ゲルシュタイン

  2021年の最初のコンサートは、樫本大進とキリル・ゲルシュタインのデュオ・リサイタル。
  今日はサントリーホールに聴きに出かけたが、やはり会場はかなり集客数を絞っており、徹底した感染対策が取られていた。
  プログラムは、プロコフィエフの「5つのメロディー」からスタート。いずれも幻想的でかろやかさと歌心が横溢し、プロコフィエフの新たな面を見せている。
  次いで人気の高いフランクのヴァイオリン・ソナタが登場。樫本大進の演奏は、年々音色が豊かになり、流麗でよくうたう。ベルリン・フィルでの日々の演奏が彼の才能をより豊かに開花させているのだろう。
  後半は、今年没後25周年を迎える武満徹の「妖精の距離」で始まった。詩人・美術評論家の瀧口修造の詩作「妖精の距離」から着想を得た作品で、ヴァイオリンとピアノの美しい対話が聴き手の心に染み込んでくる。
  ここで特筆すべきは、ゲルシュタインの存在感のある凛としたピアニズム。大進の柔和な弦の響きとは異なる硬質さとクリアな響きが印象的だが、ときおりえもいわれぬやわらかな音色が顔をのぞかせ、ハっとさせる。実に刺激的なピアノである。
  最後は、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」が演奏された。昨年のベートーヴェン・イヤーから、何度「クロイツェル」を耳にしてきただろうか。
  それぞれのデュオが自分たちの「クロイツェル」を生み出しているが、大進とゲルシュタインのデュオは、力でぐいぐい押していくスタイルではなく、ベートーヴェンのロマンと叙情性、ときに思索的で精神性の高い演奏だった。
  キリル・ゲルシュタインは、1月16日に紀尾井ホールでリサイタルを予定している。こちらも楽しみである。
  今日の写真は、プログラムの表紙。

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posted by 伊熊よし子 at 22:42 | クラシックを愛す

かごフェチ

  世の中には、かごの好きな人が多いと思う。
  私も無類のかごフェチ。家には各地で購入してきたかごが並ぶ。
  最初にかごに魅せられたのは、ジュネーブ国際ピアノ・コンクールの取材に出かけた際、オフの時間にフランスから飛んできてくれたカメラマンと一緒に、山奥の方に散策にでかけたときに見つけたもの。
  あけびのような堅い素材でていねいに作られたかごを見て、ひとめぼれ。ただし、日本にもって帰るには大きすぎて、たたむこともできず、機内持ち込みの手荷物にしなければならない。
  ずっと眺めながら悩んでいた私に、カメラマンがひとこと。「ここにはもう一生来ないと思うよ。いま買わなかったら、きっと後悔する。買っちゃいな」。
  そのことばを受けて、手に入れたかごはもう何年も大切に使っている。
  それ以来かごが大好きになり、京都、エストニア、松本、タイ、スペインなどのかごが我が家に集結した。
  いろんなところに散らばっていたかごだが、コロナ禍で部屋を片付ける時間があり、一箇所にまとめることになった。
  いまはリビングルームの壁面に並ばせ、食材、保存食などを分類して入れている。
  これらのかごは、見るたびに私を幸せな気分にさせてくれる。最初にジュネーブで買って、本当によかった。
  今日の写真は、リビングに並ぶかごたち。真ん中のこげ茶色のかごがスイス製。

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posted by 伊熊よし子 at 22:36 | 日々つづれ織り

ダニエル・バレンボイム

  先日に続き、バレンボイムの新情報第2弾は、ピアニストとしての彼の活動を紹介したい。

  指揮活動で多忙を極めるバレンボイムが、コロナ禍で3カ月間というものピアノを弾くことだけに集中することができ、5度目のベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲録音を完成させたのである(ユニバーサル)。 

  類まれなるタフな音楽家として知られるバレンボイムは、2020年のベートーヴェン生誕250年の4月から6月にかけて、ベルリンのピエール・ブーレーズザールでピアノ・ソナタ全32曲と、「ディアベッリ変奏曲」をレコーディング。このベートーヴェンの集中力がハンパではなく、来日公演における彼の緊迫感あふれる演奏を思い出させた。

  私はピアノ・ソナタ第2番の第4楽章の上昇していく旋律が大好きなのだが、ここでバレンボイムはクリアかつ情感あふれる表現で音の粒を天空へと運ぶ。実は、このソナタ第2番の第4楽章のすばらしさに目覚めたのは、ラファウ・ブレハッチの録音だった。聴き慣れた音楽が、新たな魅力と斬新な響きをもって耳に飛び込んできたからだ。

  以来、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲録音を聴くときには、真っ先にこの楽章を聴くようにしている。

  今回のバレンボイムの13枚組のCDには、ボーナストラックとして1958年3月にニューヨークで録音したウエストミンスター録音(モノラル)が加わり、ここにはソナタ第8番、第14番、第21番、第23番、第29番、第32番が収録されている。

  毎日1枚ずつじっくり聴きたい、そんなピアノ好きの心をとらえる新譜である。


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posted by 伊熊よし子 at 21:59 | 情報・特急便
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