2020年01月16日
エリソ・ヴィルサラーゼ
ジョージア出身の名ピアニスト、エリソ・ヴィルサラーゼは、私が大好きな音楽家である。
彼女には何度もインタビューをし、ずっと演奏を聴き続けてきた。
昨年出版した「35人の演奏家が語るクラシックの極意」(学研)にも登場してもらい、これまで聞いてきた話を綴ったが、今日のインタビューではまた新たな話をいろいろ聞くことができた。
このインタビューは、4月に来日するユーリ・テミルカーノフ指揮サンクトペテルブルグ・フィルの件に関するマスターインタビューと、「音楽の友」の特集に掲載されるインタビューの両方を兼ねている。
もちろん内容が異なるため、ふたつのインタビューの時間をずらし、1時間半以上もじっくり話を聞くことができた。
ヴィルサラーゼは、モスクワ音楽院で歴史に名を残すネイガウスとザークに師事している。その当時の話は、あたかも歴史を紐解くようなリアリティを醸し出し、ひとつひとつのことばが貴重な実体験となって伝わってくる。
ヴィルサラーゼは、権威や名誉や名声にまったく興味を示さず、音楽に生涯を捧げている。
話を聞いていると、その奥に時代や場所が見え、会ったこともないのに歴史的な人物がリアリティをもって迫ってくる。あたかも、私自身がその時代のソ連に居合わせたような感覚に陥るのである。
ヴィルサラーゼのことばは、いつも心に深く響く。単行本にも綴ったが、その一途な音楽に対する気持ちは、ピアノを通して聴き手の心にひたひたと押し寄せてくる。
私は話を聞くうちに、こうした話はやがて消えてしまうから、ぜひ何かの形で残したいという気持ちになった。長く書ける媒体があればそれでもいいし、単行本のような形でもいい。
「私は書けないから、あなたが書いてくれればいいわ」
ヴィルサラーゼはこういって笑った。
明日は、浜離宮朝日ホールでリサイタルがある。ずっと心待ちにしていた演奏会である。
今日の写真は、インタビュー後の1枚。彼女は京都をこよなく愛しているため、インタビュー後はほんの少しだけ京都談義になった。
posted by 伊熊よし子 at 22:51
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