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イェフィム・ブロンフマン

  昨夜は、先日インタビューしたアンドレス・オロスコ=エストラーダが指揮するウィーン・フィルの演奏を聴きに、サントリーホールに出かけた。
  プログラムは、前半がラフマニノフのピアノ協奏曲第3番、後半がストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」である。
  ウィーン・フィルの音はいつ聴いてもまろやかで、豊かな歌心にあふれ、瞬時にかの地へと運ばれていくような視覚的な魔力を備えている。
  オロスコ=エストラーダはインタビュー時に感じたのと同様、音楽と対峙する姿勢も非常にエネルギッシュ。指揮台であたかも踊っているような躍動感に満ちた指揮をする。「春の祭典」はそんな彼にピッタリの音楽である。
  しかし、この夜の出色はラフマニノフのピアノ協奏曲のソリスト、イェフィム・ブロンフマンだった。以前から何度も演奏を聴いているが、常に彼の演奏は心に深く響いてくる。
  ブロンフマンはとても体格がよく、そのからだを全部ピアノに預けるようにして演奏する。ペダルも思いっきり踏み込む。
  だが、出てくる音はすこぶる美しく知的で上品で、デリカシーに満ちている。この不思議な響きは、ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番という作品のもつ、奥深い魅力をあぶり出した。
  もちろんロシア作品特有の楽器を大きく鳴らすところは、目いっぱい鳴らす。オーケストラに負けずと大音響で頑張る。
  ただし、その音楽は作曲家が意図した深々とした抒情、哀感、ロシアの大地を思わせる壮大さ、鐘のような響き、民族色に富むエキゾチズムが内包されている。
  なんという豊かなラフマニノフだろうか。
  ブロンフマンは、以前インタビューの際に、ウィーン・フィルとはとても親しい関係を築いていると語っていた。その絆の深さ、お互いの信頼が全面にあふれていた。
  こういう演奏を聴くとラフマニノフの新たな魅力に気付き、作品をより深く知ることができる。
  次回、ブロンフマンに話を聞く機会があったら、ぜひラフマニノフ談義をしたいなと思った。
posted by 伊熊よし子 at 23:15 | クラシックを愛す

印象派からその先へ―

  有楽町駅と東京駅の中間に位置する三菱一号館美術館で、「印象派からその先へ―」と題した展覧会が行われている。
  これは「世界に誇る吉野石膏コレクション展」で、10月30日から2020年1月20日までの開催期間である。
  今回は、ルノワール、モネ、ピカソ、シャガール、ドガ、カンディンスキー、ピサロ、シスレー、カサットをはじめとする72点が展示されている。
  とりわけ印象に残ったのが、一番最後に飾られていたシャガールの「グランド・パレード」。1979年の制作で、92歳のシャガールが描いた絵だそうだ。
  しかし、高齢の画家が描いたとはとても思えないほど生命力にあふれ、色彩も豊かで、全体にみずみずしさと幸福感がただよっている。
  この絵を見るだけでも、この美術展にきてよかったと思わせてくれる、強烈な1枚だ。
  でも、写真を撮るのは禁止されている。1枚だけ、「ここは撮影可能」という絵のレプリカがあったため、そちらを写した。
  これは、ルノワールの「シュザンヌ・アダン嬢の肖像」。
  この展覧会は、「やさしくなれます。」というキャッチコピーが付いている。まさに、全部ゆっくり見終わったら、気持ちがほんのりやさしくなった。

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posted by 伊熊よし子 at 22:21 | 日々つづれ織り

ユッセン兄弟

  2010年、ピリスの秘蔵っ子としてCDデビューしたオランダのユッセン兄弟(ルーカス&アルトゥール)が、9年を経てすっかり成長し、青年のピアニストとして来日を果たした。
  今日は、3年半ぶりに彼らにインタビューをするため、レコード会社に出かけた。
  若きピアニストたちは身長も伸び、表情もプロのピアニストとしての雰囲気をまとい、国際舞台で演奏している自信がみなぎっていた。
  つい先ごろリリースされたのは、「バッハ:2台のピアノのための協奏曲第1番・第2番」(ユニバーサル)。アムステルダム・シンフォニエッタとの共演で、コンチェルトのほかにバッハのカンタータなどの編曲版が収録されている。
  ふたりは、「いまだからこそバッハを録音したいと思った」とのことで、バッハに対する思い、作品の解釈、録音時の様子などを雄弁に語ってくれた。
  以前は両親と一緒に住んでいたが、現在はアムステルダムの同じアパート(マンション)の違う部屋に住み、各々の独立した生活を満喫しているそうだ。
「ピアニストは孤独だといわれるけど、僕たちは2台ピアノの演奏が多いため、いつも一緒に演奏旅行に出られる。だから、お互いの自由を尊重しながらも、常に行動を共にすることができるため、孤独になることはなくて幸せなんだよね」
  このふたり、性格も音楽性もかなり異なる。それが喧嘩にならず、仲がいいことにつながっているようだ。
「僕たちは演奏に対するアプローチも表現もすごく違っていると思う。もちろん、性格的にもすごく違っていると思う。だからこそ、バランスをとろうと心がけているんだ」
  ふたりとも、バッハへの思いを熱く語ってくれたが、その根底に流れる作品への深き想いは共通していた。
  このインタビューは、次号の「intoxicate」に書く予定になっている。
  実は、インタビュー前に再会を喜び合っていたら、ルーカスが私のピアスに目を止めて、「それ、いい色だねえ。えっ、ネックレスもそろいなの。ウーン、いいねえ、すごく素敵だよー」とほめてくれた。
  そこで私が「これ、ラピスラズリなの、フェルメール・ブルーの」というと、オランダ人の彼は、「あっ、そうなんだ。いやあ、いい色だなあと思って、すごく似合うよ」といってくれた。
  ヨーロッパの男性というのは、幼いころからずっと女性をほめるということを学んでいるのだろうか。それが礼儀だと思っているのかもしれない。
  以前も、ギターのミロシュにワンピースをほめられたことがあった。
  日本の男性は、女性に面と向かって洋服やアクセサリーをほめることはあまりない。ヨーロッパの男性は、ごく自然にそうしたことを口にする。これも文化や習慣やメンタルの違いなんだろうな。
  今日の写真は、笑いの絶えなかったインタビュー後のルーカス(右・兄)とアルトゥール(左・弟)の表情。
  もう1枚は、ラピスラズリのネックレスとピアス。フェルメールの時代は、アフガニスタンのほぼ限られた場所でしか採掘されなかったといわれている。

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posted by 伊熊よし子 at 22:59 | アーティスト・クローズアップ
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