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辻井伸行&ルシエンヌ

  ピアノとトランペットをソリストに迎え、オーケストラとの緊密な音の対話を繰り広げるショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番は、そうそう演奏されるコンチェルトではない。
  いま、パトリック・ハーン指揮オーケストラ・アンサンブル金沢とのツアーが行われている真っ最中だが、そのソリストとして参加している辻井伸行とルシエンヌが、7月19日にサントリーホールでこのコンチェルトを演奏した。
  ショスタコーヴィチが27歳のときに書いた作品で、冒頭から劇的で躍動感に満ち、快活な部分と悲劇的で瞑想的な面も織り交ぜ、美しいトランペットの独奏、ピアノのカデンツァなどが登場し、約21分間というもの一瞬たりとも弛緩することなく、高揚感をもって聴かせる。
  辻井伸行は、オーケストラの重厚な序奏に次いで第1主題を奏でるところから、集中力全開。フィナーレまで曲の内部に入り込み、ルシエンヌ、ハーン&オーケストラと一体となって突き進んだ。
  一方、フランスの若きトランぺッター、ルシエンヌはかろやかに情感豊かにうたうような音色を響かせ、天才性を示した。
  以前、ルシエンヌに話を聞いたとき、「私は倍音を感じるため、ステージでは裸足で演奏するの」といっていたが、ミニスカートでフワフワの巻き毛を揺らしながら裸足で登場したときは、会場中が「オーっ」という感じで驚きを隠せなかった。
  背中に羽をつければ、まさにエンジェルのよう。ヨーロッパの壁画に描かれているような天使を想像してしまった。
  このコンチェルトはアルゲリッチ&ナカリャコフで聴いたことがあるが、今回はまたひと味異なる、みずみずしさにあふれた演奏だった。
  昨日は、東京オペラシティで再びコンサートが行われ、このときはハイドンのトランペット協奏曲とモーツァルトのピアノ協奏曲第27番がプログラムに組まれた。
  終演後、辻井伸行に今回のツアーについて、ルシエンヌとの初共演について、ハーンとアンサンブル金沢についてなどの話を聞いた。このインタビューは「家庭画報」の連載記事に書く予定になっている。
  辻井伸行は、ショスタコーヴィチの作品は初挑戦。あんなに難しい曲で音符が多いのに、「すっごく楽しいんです。弾いていて、心がウキウキします」と明るく語った。さすがですねえ。

posted by 伊熊よし子 at 22:39 | クラシックを愛す

マリアム・バタシヴィリ

  ジョージア(旧グルジア)からは、すばらしい才能をもったアーティストが何人も国際舞台へと飛翔している。
  2014年、オランダ・ユトレヒトで開催されたリスト国際ピアノ・コンクールで優勝の栄冠に輝いたマリアム・バタシヴィリもそのひとり。
  彼女はコンクール後、「リストのスペシャリスト」として国内外で幅広く活躍、ワーナークラシックスと専属契約も結び、デビュー・アルバムがリリースされることになった(9月3日 輸入盤CD、デジタル同時配信)。
  バタシヴィリが選んだ作品は、リストとショパン。リストの「孤独の中の神の祝福」から幕を開け、リストとショパンの練習曲で幕を閉じるというこだわりのプログラムである。
  そんな彼女が、7月19日・20日には上岡敏之指揮新日本フィルのトパーズ(トリフォニー・シリーズ)のソリストとして出演。サン=サーンスのピアノ協奏曲第2番を演奏した。
  バタシヴィリの作り出す音楽は、真摯で深遠で内省的な抒情に包まれている。サン=サーンスのオルガンの手法を感じさせる作品をときに繊細に、またあるときは華麗に、そして超絶技巧をごく自然に奏で、作品の魅力を知らしめた。
  終演後、インタビューを行ったが、いずれの質問にも実に真面目に、誠心誠意ことばを尽くして語り、そのあまりにもひたむきでまっすぐな性格に、心を打たれるものがあった。
  バタシヴィリはとても小柄でスリム。いつもステージではドレスを着用せず、パンツスーツを好むそうだ。
  このインタビューは、ヤマハのWEB「音遊人」に書くことになっている。
  今日の写真は、艶やかな黒髪、まっすぐに相手を見つめる黒い瞳が印象的なマリアム。また、すぐにでも来日してほしいピアニストである。次は、ぜひリストをナマで聴きたい。

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posted by 伊熊よし子 at 22:28 | 情報・特急便

藤田真央

  先日、チャイコフスキー国際コンクールのピアノ部門で第2位入賞の快挙を成し遂げた藤田真央。この時期は、ライヴストリーミングでずっと演奏を視聴していたが、彼は大きなコンクールの舞台でもとてもリラックスし、いつものように実に楽しそうに演奏していた。
  その後、取材が殺到し、なかなかインタビューなどには応じられないと聞いていたが、ようやくインタビューか可能になった。
  場所は、藤田真央が通っている東京音楽大学の新しい校舎、中目黒・代官山キャンパス。初めて訪れたが、とてもシンプル且つスタイリッシュな建物で、レッスン室なども非常に美しく、母校の発展をうれしく思った。
  藤田真央は、インタビューでも自分のいいたいことはしっかり語り、しかも自然体で、とてもリラックスした様子。このインタビューは、「音楽の友」に掲載される予定である。
  話は、もちろんチャイコフスキー国際コンクールのことから始まり、各ラウンドの課題曲について、モスクワ音楽院のステージで演奏するという名誉について、演奏順のこと、他の参加者たちのこと、審査発表の瞬間に関して、審査員たちからかけられたことばなど、さまざまなことに広がった。
  私は、以前のクララ・ハスキル・コンクール優勝に関しても話を聞きたかったため、それにも触れ、さらにヴェルビエ音楽祭に招待されたときのことも話題にのぼった。
  今後の方向性や豊富なども聞くことができ、楽しい時間はあっというまに過ぎた。
  藤田真央のピアノは何度も聴いているが、いつも聴き手までも楽しくなり、幸せな気分にさせてくれる。モスクワでも、耳の肥えた聴衆から熱い支持を受けた。さらに審査員からも大いなる賞賛のことばをかけられ、勇気を与えられ、自信につながったという。
  彼の前には大海原が広がっている。前途洋々の若きピアニストは、来年からベルリンに留学し、さらなる研鑽を積む。そのピアニズムがどのように変貌を遂げるのか、心がわくわくする思いだ。
  今日の写真は、インタビュー中のワンショット。いつもおだやかな笑顔を見せている。

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posted by 伊熊よし子 at 22:20 | マイ・フェイバリット・ピアニスト
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