ピアニストの外山啓介は、精悍な風貌の持ち主である。
先日、インタビューに現れたときは、かなり髪が短くなり、アスリートのよう。
「かなりさっぱりしていますねえ」
というと、
「ちょっと短くしたら、どんどん短くなってしまって…」
と、笑っていた。
彼は9月 28日にサントリーホールで、「バッハ ベートーヴェン ショパン」と題したピアノ・リサイタルを開く。
今回はそのリサイタルについてインタビューをしたが、その後は話題がさまざまな方面に広がり、笑いの絶えない楽しいひとときとなった。
このインタビューは、次号の「ぶらあぼ」に書く予定になっている。
外山啓介にはデビュー当時から話を聞いているが、ご本人が「ようやく、自分のピアニストとしての活動が仕事として考えられるようになりました」というだけあって、地に足の着いた話し方になってきた。
もちろん、キャリアを積み重ねてきたことが大きな要因だろうが、自身の内面をしっかり見つめ、それを演奏に反映させるべく日々努力をしている。そんなたのもしい話し方だった。
私はひとりのアーティストを長く取材し、演奏を聴き続けてくることがもっとも大切だと思っているが、こういう外山啓介のような人に会うと、そうした自分の仕事の在り方が改めて問われる感じがする。
彼は、レイフ・オヴェ・アンスネスを「神さま」のように思っているそうだ。音楽性も人間性も尊敬と憧憬の対象で、演奏を聴くたびに感動しているという。
「今度、アンスネスに会ったら、それを伝えるワ。きっとすごく喜ぶと思う」
というと、
「えーっ、恥ずかしいなあ。昔から本当に敬愛しているので。何もかも素敵ですよねえ」
こりゃ、本物だ(笑)。うーん、アンスネスに早く伝えなくっちゃ。…
今回のリサイタルは、J.S.バッハの教会音楽編曲版からスタートし、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第21番「ワルトシュタイン」が前半に演奏され、後半はショパンの「プレリュード 第25番」が置かれ、そしてショパンの「12のエチュード」に移る。
いま、満を持して登場するエチュードである。これまで数曲は演奏してきたが、全12曲を演奏するのは初の試みとなる。
写真は、熱くショパンを語ったインタビュー後の1枚。それにしても、髪、短かくなったよねえ。ピアニストはステージで汗びっしょりになるから、この方が楽かな。