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ピエール=ロラン・エマール

 ピエール=ロラン・エマールは、来日のたびに新たな面を見せてくれる。
 プログラムの根底にあるのは、古典的な作品と現代作品。その両面でこだわりの選曲を行い、これまで何度も聴き手に大きな感動を与える演奏を披露してきた。
 今回も、大きな期待を胸に秘めて紀尾井ホールへと出向いた(3月21日)。
 プログラムは、2003年にエマールのピアノによって初演されたジョージ・ベンジャミン(英国・1960〜)の「シャドウラインズ」で幕開け。カノンがさまざまな手法で用いられた作品だ。次いで、バッハの美学と密接にかかわりながら創作を行った、新ウィーン楽派のアントン・ウェーベルン(1883〜1945)の「変奏曲 作品27」が演奏された。これに英国のオリヴァー・ナッセン(1952〜2018)の「変奏曲 作品24」が続き、エマールらしいプログラム構成となった。
 後半は、J.S.バッハの「ゴルトベルク変奏曲」。今回のリサイタルは「VARIATIONS!」と題され、すべて変奏曲という手法を取る作品で統一されている。
 エマールのバッハはこれまでも何曲か聴いてきたが、常に適切なテンポに深い感動を覚える。「ゴルトベルク変奏曲」も、静謐なアリアから変奏に移ると、すっ飛ばすような演奏が多いが、エマールはけっして急がない。ゆったりと、1音1音の響きを重視し、バッハの魂に寄り添っていく。
 長い旅路の最後に再びアリアが登場したときは、もうこの演奏が終わってしまうのかと、無性に寂しい思いに駆られた。それほどエマールのバッハの旅は、心の奥に浸透し、どこか別世界にいざなわれたような気分になり、夢を見させてくれたのである。
 この公演評は、次号の「モーストリー・クラシック」に書く予定である。
 今日の写真は、プログラムの表紙。まさに古典から現代の変奏曲を堪能する一夜となった。

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posted by 伊熊よし子 at 15:52 | マイ・フェイバリット・ピアニスト
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