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テオドール・クルレンツィス

 衝撃の演奏とは、まさにこういうことをいうのだろう。
 2月13日、サントリーホールで行われたテオドール・クルレンツィス指揮ムジカエテルナのコンサートは、近年まれにみるインパクトの強い演奏だった。
 プログラムはオール・チャイコフスキー。前半は「組曲第3番」、後半は幻想序曲「ロメオとジュリエット」、幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」。
 クルレンツィスは、黒のゆったりしたブラウスに黒のスパッツという、指揮者としては珍しいスタイル。とても動きやすそうだ。
 まさに冒頭からからだ全体をしなやかに動かし、ときにはげしく、またあるときは踊っているような様相で、タクトを持たずに指揮をする。
 その音楽は衝撃を通り越して、これまで聴いたことのないような新たなチャイコフスキーがあふれ出る。オーケストラは、チェロやチューバ以外は全員が立ったまま演奏するスタイル。
 1曲終わると、クルレンツィスは両手をグルーッと回し、上でバシッと止める。それに合わせてムジカエテルナも、弓や管楽器を真上に立てる。その見事なまでの美しい終わり方は、拍手喝采を招く。
 チャイコフスキーは稀代のメロディメーカーだが、彼らの演奏にかかると、躍動感と深い情熱と豊かな歌心が混然一体となって聴き手の心を揺さぶる。
 もっとも驚いたのは、前半が終わった途端にアンコールが始まったこと。コンサートマスターのアイレン・プリッチンがチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲ニ長調の第3楽章を弾き始め、さらにイザイのヴァイオリン・ソナタ第2番から第1楽章を演奏したのである。
 通常は前半が終わると、オーケストラがステージ上から去るのを見て、会場は休憩に入る。ところが、前半でアンコールが始まったため、聴衆はみな動けず、「ウワッ、何が始まったの」という感じ。
 そして後半は、クルレンツィスの独壇場。細部まで神経が張り巡らされたチャイコフスキーだが、けっして堅苦しくなく、新たな音楽体験をさせてくれる斬新さに満ちている。
 本当にすごい指揮者が登場したものだ。グスターボ・ドゥダメルの初来日のときも、新たな才能の出現に心の高揚を抑えきれなかったが、クルレンツィスの演奏も、だれかれかまわず「ねえねえ、聞いて。クルレンツィスがすごくて〜」と伝えたくなるインパクトの強さ。いやあ、まいりました、すさまじい才能。
 今後は、一瞬たりともその動向に目が離せない。新譜のマーラーの交響曲第6番「悲劇的」(ソニー)をもう一度聴きたくなった。
 今日の写真は、先日のトークイヴェントのときのワンショット。190センチあるそうな。

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posted by 伊熊よし子 at 23:02 | クラシックを愛す
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