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アレクセイ・ヴォロディン

 ロシア出身のアレクセイ・ヴォロディンは、私がずっとその奏法と表現力に魅了されているピアニストである。
 ロシア・ピアニズムの継承者として、楽器を豊かに鳴らし、歌心を大切にし、レガートが美しい。
 もっとも特筆すべきはその弱音で、クリアな響きを保持しながら緻密で繊細な弱音はホールの隅々までしっとりと浸透していく。
 今日は、紀尾井ホールに「紀尾井ホール室内管弦楽団 第112回定期公演」を聴きに行った。指揮は2017年4月に同オーケストラの首席指揮者に就任したウィーン・フィルのコンサートマスター、ライナー・ホーネック。ソリストはヴォロディンである。
 プログラムは、まずハイドンの交響曲第49番「受難」が演奏され、次いでショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番が登場した。ピアノとともにソロを務めるトランペットは、古田俊博が担当。
 ヴォロディンはシニカルでクールな空気をまとう第1楽章、瞑想的なワルツの第2楽章、短く簡潔な第3楽章、アップテンポで疾走する第4楽章と、圧倒的な迫力と躍動感を示し、その奥に静謐な表現を潜ませ、オーケストラ、トランペットとの密度濃い音の対話を繰り広げた。
 後半は、ベートーヴェンの交響曲第6番「田園が演奏された。
 今日は、終演後にヴォロディンのインタビューが組まれた。これは9月7日に紀尾井ホールで行われるリサイタルに向けて話を聞くためである。
 今回のリサイタルは「DEDICATION」と題され、同時代に活躍したシューマン、ショパン、リストがそれぞれ献呈し合った作品が組まれている。
 前半はシューマン(リスト編)「献呈」、シューマン「クライスレリアーナ」、後半はショパン「バラード第2番」、リスト「ピアノ・ソナタ ロ短調」という、とても興味深い構成である。
 ヴォロディンは、ヴィルサラーゼに師事しているため、彼女の得意なシューマンはもちろんのこと、ショパンもリストも長年弾き続けてきた作品だそうで、それぞれの作品に対する深い思い入れを語ってくれた。
 もっとも印象的だったのは、「どんなに長く演奏している作品でも、常に新たな作品に向き合う気持ちで演奏している」と明言したことである。
 これは、恩師のヴィルサラーゼと同じ考えで、私が彼女から聞いた印象に残ることばである。
 ヴォロディンは、いまや世界各地から招聘があとを絶たない人気と実力を兼ね備えたピアニストとなった。今秋のリサイタルがひたすら楽しみである。
 今日の写真は、インタビュー後のワンショット。公演評は「公明新聞」に、インタビュー記事は「東京新聞」に書く予定にしている。

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posted by 伊熊よし子 at 22:33 | アーティスト・クローズアップ

クリムト「接吻」

 通常、海外出張の場合は、着いたその日の夜からとか、明朝からすぐに仕事が開始されるため、ほとんど観光する時間や自由時間はない。
 だが、今回のウィーンでは、ホテルがベルヴェデーレ宮殿のすぐそばだったこともあり、ほんの短時間だったが、宮殿のオーストリア絵画館に絵を見にいくことができた。
 お目当ては、グスタフ・クリムトが1907年から翌年にかけて描いた有名な「接吻」である。
 クリムトと恋人エミーリエ・フレーゲがモデルといわれるこの絵は、180センチ×180センチの油絵。数多く展示されている絵画のなかでもっとも人気のある絵で、各地から訪れた人々がじっと食い入るように見つめたり、写真を撮ったり、大人気となっていた。
 クリムトの「黄金の時代」といわれる時期に描かれたこの絵は、ふんだんに金箔が使用され、見る者にある種の狂気を感じさせるような不思議なオーラを発している。
 以前、セセッション館(分離派会館)のベートーヴェン・フリーズを見たときにも感じた、背中がぞくぞくしてくるような狂気。絵の前に立つと、しばらくじっと動けなくなるような存在感と緊迫感。
 クリムトの「接吻」は世紀末ウィーンの妖艶で退廃的で甘美で深遠な空気を放つと同時に、死の影ものぞかせ、私の時差ボケや疲れを一気に吹き飛ばしてくれた。
 今日の写真は、その「接吻」。実際に見ると、実に精緻で巧妙で官能的で迫力に満ち、魅入られてしまう。

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posted by 伊熊よし子 at 21:45 | 麗しき旅の記憶

イタリア出張

 先日、ウィーン&グラフェネックから帰国したばかりだというのに、来週からまたイタリアに出張することになった(19日〜24日)。
 今日は、雑誌の編集担当者、カメラマンの3人で打ち合わせを行い、具体的な内容とスケジュールを話し合った。
 最近は、ずっと時差ボケと疲労が続いているのか、なんとなくからだが重い。こりゃ、いかんなと思い、行きつけの整体院でマッサージを受けた。
「かなり無理していますねえ」「からだ全体がすごく堅いですよ」
 こういわれ、返すことばもない。
 なんとか体調を戻し、来週に備えなくてはならない。
 ロジャー・フェデラーがクレーコート・シーズンをスキップし、久しぶりにシュトゥットガルトの芝のシーズンに登場してきたが、第1回戦はなんとなく乗り切れず、苦戦しながらミッシャ・ズベレフに勝利した。
 ああ、ロジャー、あなたが頑張ってくれないと、私はもっと心身が重くなってしまうよ〜。
 
posted by 伊熊よし子 at 22:31 | 日々つづれ織り
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