ブログ

ルノー・カプソン&児玉桃

 3月12日、トッパンホールにルノー・カプソン&児玉桃のデュオ・リサイタルを聴きに行った。実は、以前、同ホールが発行している「トッパンホールプレス」にふたりの演奏に対する原稿を寄せた。
 下記にその記事を掲載したいと思う。 

 フランスには国際舞台で活躍する器楽奏者が数多く存在するが、ヴァイオリンではルノー・カプソンが実力、人気ともにその代表格ではないだろうか。2015年1月には、パリに開館したフィルハーモニー・ド・パリのオープニングに招かれ、アンリ・デュティユーのヴァイオリン協奏曲を演奏するという栄誉に浴した。
 カプソンは1976年フランス生まれ。パリ高等音楽院卒業後、1997年から3年間はクラウディオ・アバドの招きにより、グスタフ・マーラー・ユーゲント・オーケストラのコンサートマスターを務めている。
「マエストロ・アバドは、この世でもっとも偉大な指揮者のひとりだと思います。彼は若い人たちといろんなことを分かち合う、共有することに意義を見出していました。若かった私もことばでは表現できないほど多くの影響を受けました。若い人と交流することで、彼自身も若々しさを保持し続けたのだと思います。いつも新鮮でみずみずしい演奏を心がけていましたから。若い才能が現れると、すぐに支援し、助言を与えていました。一番思い出に残っているのは、アバドがフレーズの果てしない広がりを伝授してくれたことです。長い息遣いをどのようにもっていくか、フレーズを形作る方法を教えてくれたことです。もうひとり、私が16歳のときに出会ったカルロ・マリア・ジュリーニからも大きな影響を受けています。マエストロ・ジュリーニからは、“ヴァイオリニストではなく、音楽家であれ”という姿勢を暗黙のうちに叩き込まれた気がします。彼は“人生の光は何か、それを音楽で表現せよ”といってくれました。アバドとジュリーニ、ふたりは私のあこがれの象徴です」
 カプソンは10代のころからオーギュスタン・デュメイ、トーマス・ブランディス、アイザック・スターンをはじめとする著名なヴァイオリニストに師事し、多くのことを得ている。モットーは「楽器を豊かにうたわせること」。いずれの作品でもその精神を存分に発揮する。音色はこよなく官能的で幻想的で多種多様な色彩が特徴。使用楽器は50年以上アイザック・スターンが愛用していた1737年製グァルネリ・デル・ジェス「パネット」。来日公演でも、この名器で情感あふれる歌を紡ぐ。
 児玉桃も偉大なピアニストから多くを学び、メシアンを中心に幅広いレパートリーを誇る実力派。メシアン・コンクールでは審査員も務め、創造性に富む録音も残している。
「メシアンは色彩が大切で、リズムも明確であり、ファンタジーあふれる演奏が要求されます。自分の考えをピアノを通してどれだけ聴衆に伝えることができるか。音が多いので、ついそれに気をとられがちですが、作曲家に対する思い、作品に対する思いを明快に表現することに集中し、その気持ちを聴いてくださるかたに伝える。それに尽きると思います」
 こう語る児玉桃はカプソンとは何度も共演を重ね、お互いの呼吸を呑み込んでいる。今回のオール・フランス・プロでは、粋で洒脱で薫り高いデュオが生まれるに違いない。

 ここに書いた通り、当日の演奏は、まさにフランスの薫りが匂い立つような馨しいデュオで、とりわけサン=サーンスのヴァイオリン・ソナタ第1番におけるカプソンの流麗で情感あふれる音色と作品の内奥に迫る解釈が際立ち、心奥に響いた。
 この公演評は、「公明新聞」に書く予定にしている。
posted by 伊熊よし子 at 22:24 | クラシックを愛す
CATEGORIES
ARCHIVES
LINKS
PROFILE
検索ボックス