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デニス・マツーエフ

 12月1日からワレリー・ゲルギエフ指揮マリインスキー歌劇場管弦楽団が日本ツアーを行い、連日各地で演奏を行うというタフなスケジュールをこなしている(全10公演)。
 今日は最終日で、13時と18時にサントリーホールで2公演が組まれ、ピアノのデニス・マツーエフがソリストを務め、ラフマニノフのピアノ協奏曲を1日に4曲演奏するという快挙を成し遂げた。
 このプログラムの原稿のマツーエフの項を担当したため、事前に知っていたのだが、まさに彼しかできないハードスケジュールである。
 マツーエフは、「ラフマニノフのコンチェルトは、マエストロ・ゲルギエフとぼくとの代名詞的な存在」だと語る。とりわけ第3番は、13歳から弾き始め、自分の血となり肉となっている作品とか。
 今日の演奏も、まさしく自家薬籠中の作品を演奏する自信に満ちあふれたピアニズムだった。弱音から開始したが、次第にパワー全開、強音の部分ではピアノが壊れそうな(?)はげしい音楽がホール全体を包み込んだ。
 マツーエフはいま3つの重要な国際音楽祭の芸術監督を務めているが、新しい世代の若手音楽家たちにこうした音楽祭に出演する機会を与え、道を拓いてあげるのだという。
 192センチの堂々たる体躯の持ち主で、いまどき珍しく燕尾服を身に着け、演奏はパワフルそのもの。インタビューでも、大きな声でジョーク連発のエネルギッシュなタイプだが、後進に温かい目を向ける面を持ち合わせている。
「ぼくは男らしく堂々とした演奏で、作曲家の内なる意思を表現したい」
 なるほどね、その強さ、しっかり伝わってきました。
 
posted by 伊熊よし子 at 23:31 | クラシックを愛す

清水和音

 清水和音のピアノは気負いや気取りがまったくなく、まさに正統派。作曲家がいいたかったこと、伝えたかったことに肉薄し、楽譜に忠実な演奏である。
 しかし、けっして堅苦しい演奏ではなく、そこには楽譜の裏側まで読み込んだ洞察力の深さが顔をのぞかせている。
 今日は、東京オペラシティコンサートホールで、「ベートーヴェン 4大ピアノ・ソナタ」のリサイタルが行われた。前半がピアノ・ソナタ第8番「悲愴」と第21番「ワルトシュタイン」で、後半が第14番「月光」と第23番「熱情」という重量級のプログラムである。
 ベートーヴェンのピアノ・ソナタを4曲続けて聴くと、さすがにずっしりと胸に迫りくるものがあり、聴き手の集中力もハンパではない。
 ピアニストはさぞ大変だろうと思うが、終演後に楽屋で会った清水和音は、汗びっしょりながら、にこやかだった。
 これだけの作品を演奏したら、達成感はさぞかしと思いきや、いつもながらの自虐的なギャグを飛ばしていた。
 この公演評は、「公明新聞」に書くことにしている。
 今後も意欲的なコンサートが目白押し。2018年2月6日には「ピアノ四重奏曲は美しい!」(東京芸術劇場コンサートホール)、4月8日には「三大ピアノ協奏曲の饗宴」(サントリーホール)、4月21日には「清水和音ピアノ主義」(浜離宮朝日ホール)が予定されている。
 今日の写真は、楽屋でのひとこま。私服に着替えた直後で、まだリサイタルの高揚感をまとっている。

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posted by 伊熊よし子 at 22:41 | クラシックを愛す

エマニュエル・パユ

 いつもエマニュエル・パユにインタビューで会うと、その仕事ぶりに驚かされる。
 彼は頭のなかに向こう3年間から5年間くらいのコンサートと録音の企画がビッシリ詰まっていて、それをどんどん話してくれるからである。
 今回は、来年リリース予定の新譜の情報がまだヨーロッパのレコード会社から日本のレコード会社の方に届いていないとのことで、本人に直接聞いた方が早いだろうということになった。
 ライナーノーツを担当する身としては、新譜の内容の詳細を聞く必要がある。
 パユは次々に曲目を並べ、内容をガンガン話していくのだが、あまり演奏されない作品や聞き慣れない作曲家の名前が飛び出し、こちらは四苦八苦である。
 いやあ、これは大変なことになった。曲目解説に時間がかかるなあと思いつつ、話を進めていく。
 レコード会社の担当者もメモを取るのに必死で、私もインタビューではなく、情報収集に徹することになった。
 そうこうするうちに話は終わり、帰宅すると、パユは先ほど話した曲目のリストをすぐにメールで送ってくれた。
 本当にすごい人だよねえ。私が話を聞いたのは、彼のリサイタルの本番前なのに、すぐにこうやって情報を流してくれるなんて…。
 よく樫本大進が、「エマニュエルは本当の天才」といっているけど、確かにそうだと思う。なんでも簡単に吹けてしまうし、録音の話を聞いても、苦労話はいっさいない。
「なんで? 録音で苦労なんかしていないよ。準備はきちんとできているからさ。その前にちゃんと用意しておけば、録音は楽しんでできるよ」
 そうでしょうね。なんといっても、真の天才だから。
 それでも、何かないかなと考え、苦心したことや困難にぶつかったことを聞き出そうとすると、こんな答えが戻ってくる。
「私はねえ、ストレスがないんだよね。努力して自分がやるべきことをやれば、結果はついてくる。いつも楽しんで演奏しているよ」
 ハイハイ、よくわかりました。こういう人に野暮な質問をしてもダメなんだよね。もっと、音楽的な質問をした方がいいと思い、方向転換をすることになる。
 パユは毎年のように来日し、2018年も来日公演が組まれている。その前に新譜のライナーを仕上げなくてはならない。まず、いま手に入る情報から進めましょうか。
 今日の写真は、天才のパユさま。でも、けっして鼻高々にならず、いつも一生懸命ことばを尽くして話してくれる真摯な性格の持ち主。熱心なファンが多いのもうなずける。

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posted by 伊熊よし子 at 22:33 | 情報・特急便
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