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ジョフロワ・クトー

 2016年9月3日のブログに、フランスのピアニスト、ジョフロワ・クトーのブラームス:ピアノ独奏曲全集(キングインターナショナル)の記事を書いた。
 そのクトーが来日し、10月31日に武蔵野市民文化会館小ホールでリサイタルを行った。
 プログラムは、クトーならではのオール・ブラームス・プロ。「7つの幻想曲作品116」からスタートし、「3つの間奏曲作品117」へと続き、後半は「6つの小品作品118」「4つの小品作品119」が組まれた。
 録音で聴いていたときは北国特有の渋く深く暗く重いブラームスではなく、叙情的で繊細で、自然を愛したブラームスならではの明るさや喜びなどが随所に見られる、新たなブラームス像を打ちて建てた演奏だと思っていたが、ナマで聴く演奏はとても活力に満ち、強弱の幅が豊かで、ときに深遠な響きが顔をのぞかせていた。
 私は、ブラームスのこれら晩年の作品をこよなく愛している。詩情に富み、凛とした空気に満ちあふれ、えもいわれぬ滋味豊かな旋律が心に切々と響いてくるからである。
 それらをクトーは年代順に演奏し、ブラームスの晩年に到達した孤高の音楽の美しさをリアルに描き出した。
 彼は、ピアノ独奏曲全集の録音も、年代順に並べている。今日は、そのクトーを滞在先のホテルに訪ね、インタビューを行った。
 彼は子どものころ体操選手になることを目指していたそうで、その話がとても興味深かった。ひじのケガで体操を断念し、ピアノひと筋になったそうだが、10代のころからブラームスに魅せられていたという。
 2005年のブラームス国際コンクールで優勝し、以後この作曲家の演奏と研究に焦点を当て、現在は世界各地でブラームスをレパートリーの中心に据えて演奏活動を行っている。
 彼のブラームスに対する強い愛情と信念は、話の内容に存分に現れており、「ブラームスの映画を作りたい」と、熱く語っていた。
 このインタビューは「intoxicate」に書くことになっている。
 クトーは、ピアノに向かう姿勢がとても美しい。上半身は微動だにせず、ペダルを踏み込む足もごく自然で、完璧に脱力ができた手と指の動きだけで美しいブラームスを奏でていく。
 時折、強靭なタッチなども登場するが、体操で鍛えたからだろうか、大袈裟な素振りはまったく見せずに腕の力で深々とした響きを生み出す。
 こんなにもじっくりと、こんなにも内容の深いオール・ブラームス・プロを聴いたのは初めてのことである。クトーはいま、ブラームスの室内楽曲全集に向けて録音を開始したそうだが、その先にはピアノ協奏曲が見えているようだ。
 今日は、インタビュー後に京都に行くといっていた。秋の京都は、彼の鋭敏な感性に何をもたらすのだろうか。
 今日の写真はインタビュー後の1枚。また、すぐにでも来日してほしいピアニストである。

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posted by 伊熊よし子 at 23:02 | アーティスト・クローズアップ
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