ブログ

エディクソン・ルイス

 今日はピアニストの伊藤恵のお誘いで、東京芸術劇場に「エル・システマ・フェスティバル2017」を聴きにいった。
 エル・システマとは、1975年に南米のベネズエラで設立された組織。子どもたちがオーケストラやコーラスに参加することで音楽を学び、集団としての協調性、社会性を育み、コミュニティとの関わりを作ることを目的としている。
 今回のフェスティバルは、エル・システマ出身で、ベルリン・フィルのオーディションに歴史上2番目の若さの17歳で合格し、いまや世界でもっとも成功しているコントラバス・ソリストのひとりといわれるエディクソン・ルイスを迎え、マスタークラス、室内楽コンサート、ガラコンサートが組まれている。
 今日の「エディクソン・ルイスと仲間たち 室内楽コンサート」のプログラムは、ボッテジーニの「ヴァイオリンとコントラバスのためのグラン・デュオ・コンチェルタンテ」、同じくボッテジーニの「チェロとコントラバスのためのデュオ・コンチェルタンテ」、そしてシューベルトのピアノ五重奏曲「ます」である。
 エディクソン・ルイスのコントラバスは、いずれの作品でも低く深々とうたい、超絶技巧をものともせず、楽器に覆いかぶさるようにして豊かな響きを紡ぎ出す。リズム感も抜群である。
 ボッテジーニの作品はなかなかナマで聴く機会がないため、とても新鮮で、弦とピアノのみずみずしいアンサンブルに心が高揚する思いだった。
 もちろん、「ます」は一糸乱れぬアンサンブルで、非常に濃密なシューベルトを堪能することができた。
 エディクソン・ルイスは、1985年カラカス生まれ。幼少のころ親に捨てられ、貧困のどん底から這い上がり、ベネズエラ政府の支援を受けて11歳からコントラバスを始めた。そして驚くべきスピードで才能を開花させ、15歳でアメリカ・インディアナポリスで開催されたソロコンクールで優勝。2001年にベルリン・フィル・オーケストラ・アカデミーの最年少スカラシップ生となり、2年後にベルリン・フィルに入団することになる。
 終演後、伊藤恵に会い、「こんなコントラバスは聴いたことがない!」というと、「そうでしょう。ずはらしいでしょ。ああ、聴いてもらってよかった。今回の〈ます〉ほどリハーサルを繰り返したことはなかったわ。すごいリハーサルをしたのよ」といっていた。
 今日の写真は、終演後の全員のワンショット。左から伊藤恵(ピアノ)、大御所の堤剛(チェロ)、エディクソン・ルイス(コントラバス)、辻彩奈(ヴァイオリン、1997年生まれ、2016年モントリオール国際音楽コンクール第1位)、田原綾子(ヴィオラ、1994年生まれ、第9回ルーマニア国際音楽コンクール弦楽器部門第1位)。

y1968_R.JPG
posted by 伊熊よし子 at 22:11 | 日々つづれ織り

メナヘム・プレスラー

 昨夜、メナヘム・プレスラーのインタビューが可能になるとの連絡がマネージメントから入り、今日の夕方、ピアノの練習後にプレスラーに会うため、楽器店のショールームに出かけた。
 前のインタビューを垣間見た限り、とても元気そうだ。いつものように、ゆったりとしたテンポで滔々と流れるように話している。
 私の番になったため、あいさつをすると、にこやかな笑顔で「おお、また会えたね」とあいさつを返してくれた。
 プレスラーは、つい先ごろ「メナヘム・プレスラーのピアノ・レッスン〜音楽界の至宝が語る、芸術的な演奏へのヒント〜」著:ウィリアム・ブラウン、訳:瀧川淳(音楽之友社)を出版したばかり。
 新譜も2枚リリースしており、モーツァルト:幻想曲ハ短調K.475、ピアノ・ソナタ第14番、第13番とモーツァルト:ピアノ協奏曲第23番、第27番 キンボー・イシイ指揮マグデブルク・フィル(キングインターナショナル)である。
 インタビューではこの書籍と新譜について、近況、今後の計画、ドビュッシーについて、モーツァルトについて、演奏のあるべき姿、教えるときの大切な事柄から大好きな日本食にいたるまで、短時間ながら雄弁に語ってくれた。
 私の脳裏には、先日のリサイタルで聴いた最後のアンコール曲、ドビュッシーの「月の光」の美しい音色がまだ焼き付いていて、ずっとある種の光を放っている。
 それを述べたときのプレスラーの表情が忘れられない。
 彼は「私の演奏を聴いた人が、家に帰ってから何時間も、あるいは何日間もその演奏を忘れることがないといってくれるのが理想です。あなたがそういってくれたのは、とてもうれしい。まさに、それが私の音楽に対する姿勢であり、演奏することの意義なのですから」といった。
 話はいろんな面におよび、プレスラーは、あくまでも真摯に純粋に率直に音楽に対して語った。
 そこには、彼のピアノと同様のひたむきさが宿っていた。私はそのことばひとつひとつが心に染み入り、感銘を受けた。
「また、来年も来日してくださいね」というと、「ああ、私もそうしたいと思っているよ」と答え、温かな笑顔を見せてくれた。
 この貴重なインタビューは、新聞や雑誌、WEBなどに書き分けをしたいと思っている。
 今日の写真は、インタビュー後のワンショット。いつも手を握ってくれるが、そのぬくもりも、いまだ忘れえぬ記憶として心の奥に刻み込まれている。 

y1967_R.JPG
 
posted by 伊熊よし子 at 22:37 | 巨匠たちの素顔

アリーナ・ポゴストキーナ

 2018年の「東芝グランドコンサート」は、サカリ・オラモ指揮BBC交響楽団の演奏である。
 先日ソリストのひとり、小菅優のインタビューについて綴ったが、昨日はもうひとりのソリスト、ロシア出身のヴァイオリニスト、アリーナ・ポゴストキーナにインタビューを行った。
 彼女は、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を演奏する予定である。
 当然のことながら、ポゴストキーナにとってチャイコフスキーのコンチェルトは子どものころから聴き込んでおり、自身も数多く演奏している得意な作品。
「マエストロ・オラモとは何度も共演を重ねているため、日本でチャイコフスキーを一緒に演奏できるのは、この上ない喜び」と笑顔を見せた。
 彼女はスリムで、色白の美形。ほとんどメイクをしていないのに、とても印象的な美しさを備えている。
 ことばを選びながらじっくりと静かに話すタイプで、楚々とした感じがする人だ。
「子どものころから15年間に渡って父親からヴァイオリンの指導を受けたけど、練習ばかりで遊ぶ時間もなく、反抗もできず、結構つらかったわね」と、打ち明けた。
「でも、いまとなっては父に感謝しているわ。こんなにすばらしい音楽人生を送ることができるんですもの」と、微笑んだ。
 彼女はサンクトペテルブルクの生まれだが、1992年にドイツに移住している。
「東芝グランドコンサート」には、2007年にオラモの指揮で初出演し、そのときはシベリウスのヴァイオリン協奏曲を演奏した。実は、2005年にシベリウス国際ヴァイオリン・コンクールで優勝に輝いている。シベリウスのコンチェルトは、もっとも得意とするものである。
 今回はチャイコフスキーだ。日本音楽財団より貸与されている1717年製ストラディヴァリウス「サセルノ」を存分に鳴らし、本人いわく「ロシア流派の伝統的な奏法」をたっぷり披露してくれるに違いない。
 このインタビューは、来日プログラムに掲載されることになっている。
 今日の写真は、インタビュー後の1枚。 

y1964_R.JPG
posted by 伊熊よし子 at 22:59 | 情報・特急便
CATEGORIES
ARCHIVES
LINKS
PROFILE
検索ボックス